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APWD総会・国際セミナーを開催
―アジア太平洋地域で障害のある人々の働く場づくりをすすめよう―

多田薫

多彩な企画を滋賀で

 国連アジア太平洋経済社会委員会(ESCAP)「アジア太平洋障害者の十年」最終年ハイレベル政府間会合が開催された滋賀県大津市で、時も同じ10月25日から28日の4日間、アジア太平洋障害者ワークセンターネットワーク(以下、APWD)総会・国際セミナーが開催されました。海外からはアジア14か国・地域・38人(JICA海外研修生含む)の参加を得て、国内とあわせて約300人の参加がありました。本企画は、同実行委員会とともに、ナイス・ハート・バザールin滋賀実行委員会、滋賀県社会就労センター協議会の共催で準備され、とりわけ滋賀県の社会就労センター・作業所関係者の奮闘には特筆すべきものがありました。
 APWDは、1997年に障害者就労支援の世界組織Workability International(旧、IPWH)の総会が京都で開かれた際に、日本の全国社会就労センター協議会、ゼンコロ、きょうされんの3団体の呼びかけによって、障害のある人々の就労と職業生活の改善や働く場づくりの推進を目的に結成されました。その後は、毎年開催されるRNNキャンペーン会議の折に交流会を行ったり、アジア太平洋地域の障害者ワークセンターの調査やニュース発行等、細々とした活動にとどまっていました。

アジアのワークセンターの熱心な意見交換

 25日午前の海外参加者の作業所・施設への視察を経て、午後の総会は、日本を含む10か国・地域の代表が会場前方の円卓状に並べたテーブル席に、他にオブザーバー100人が会場後方に座って始まりました。インド、インドネシア、スリランカ、マレーシア、台湾、ラオス、フィリピン、香港、韓国の代表から、障害者の就労事情やワークセンターの活動状況について報告がありました。10年間で各国・地域における障害者施策の進展はあったものの、障害者雇用状況は依然として低水準にあること、障害のある人々の実態把握についても不十分な状況にあること、NGOにおける努力が広がってきていること等の発言が特徴的でした。今後の行動計画案についても熱心に協議され、起業家の育成、人材交流や技術協力、資金融資等への意見や要望が出されました。当面はこうした活動を通じて、APWDの活動基盤を強化することが確認されました。

先駆的な経験と現状から課題を捉えて

 国際セミナー(26日午前)では、イギリスの最新就労支援策であるワークステップ計画について、雇用支援・非営利団体ショウ・トラスト代表のティム・パペ氏の講演と、続く「過去からの脱却、働く場の10年後」と題する全国社会就労センター協議会副会長・ゼンコロ会長の勝又和夫氏の講演が行われ、内外の先駆的な経験と鋭い問題提起に大いに学ばされたとの感想が多く寄せられました。
 ほかにも、「就労の実現をめざす起業と国際協力」をテーマにフィリピン、インド、韓国、香港の代表による国際シンポジウム1(26日午後)、「BIWAKOから、アジア太平洋・日本・滋賀の新しい雇用・就労の発信」をテーマとしたILO障害者雇用促進アジア太平洋担当官のデボラ・ペリー氏、前厚生労働省大臣官房総務課企画官の依田晶男氏、滋賀県知事の國松善次氏による国際シンポジウム2(27日午前)が行われ、アジアの雇用実態や課題を通じて日本や各地域における雇用・就労課題について多様な角度から考え合う機会となりました。
 さらに4日間通じたナイス・ハート・バザールでは、滋賀をはじめ国内各地の社会就労センターや作業所の多彩な製品とともに、アジア9地域の製品や展示物も所狭しと並べられ、アジアのワークセンターと働く障害のある人々を紹介したパネル展示もあり、市民の参加も得て大いに賑わいました。バッグや財布等の革製品、籐製品、木工品、紙製品等々があり、人気商品はいち早く売り切れていました。

就労機会の拡大と発展への礎に

 今企画が、アジア、日本、各々の地域における障害者雇用や就労の実態と課題、国際交流や協力の大切さを深く学び考え合う機会となったこと、そして障害のある人々の就労機会の拡大と相互の発展への礎となるであろうことを確信させる有意義な4日間となりました。この成果を新しい十年のなかで、障害のある人々の雇用・就労機会の拡大と、国際協力の発展へ、着実に結びつけていきたいと思います。

(ただかおる APWD総会・国際セミナー実行委員会事務局長)