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いまSOHO、夢は社保労務士

小林礼

 今はホームページ作成や文書編集を請け負うSOHO。暇なときは新宿などにでかけ、週に1回は友達と飲み、騒いで午前様の帰宅。一人暮らしを楽しむ30代、ここまでは珍しくない。しかし「言語障害あり、食事介助が必要な電動車椅子の人間」と加えると驚かれる。別に特別なことはしていないのに。
 母は浜木綿子の『おふくろ』シリーズの「おふくろ」の厳しさ。でも私がやりたいことは常に応援してくれた。バリアだらけの大学に2年間浪人して入った。普通の社会で生きていくぞという気持ちだった。通りすがりの人に声をかけ段差の上に車椅子を上げてもらったりドアを開けてもらったり、期末試験間近には普通の学生のように「ノートコピーさせてくれー」と騒いだり(爆笑)。今思えば、この経験が今の私をつくった。多くの友達に囲まれ普通の学生生活を謳歌した。
 パソコンとの本格的な出会いは学部4年で、同級のバイク乗り2人と付き合い始めた時。彼らは自助具選びから付き合ってくれ、お互いの生き方まで話し合う悪友になった。パソコンと出会い就労の可能性を見いだした。修士課程最後の年、東京のベンチャー会社への就職にもつながった。
 就職を機に茨城から上京、自立生活センターからの介助者などに支えられ、一人暮らしを始めた。しかし規則正しい生活と仕事の自己管理の難しさから、会社は半年でやめることになった。10か月後の2002年8月、個人事業主として開業、仕事はまだ少ない。仕事量に波があり、朝の3時までパソコンの前にいることもある。ただ一人暮らしにも慣れ、仕事を終えれば自分の時間なので、気が楽になった。SOHOとして働きながら、いろいろな人達と出会い、いろいろな考え方を知る。今が楽しくてしかたがない。
 私にはまだ夢がある。それは社会保険労務士の資格獲得。就職時に補助金申請を調べて興味を持った。辞めた後、重度だが就職活動の経験も人一倍多いし、会社勤めもした20代の経験を無駄にしたくないと思い始めた。障害者就労の専門家を目指し、一般的な制度・法律から勉強したくなった。でも勉強嫌いの私が、仕事をやりながらいつ資格がとれるか不明(笑)。
 今まで私は社会の現実を受け入れ、悲観的にならず、自分ができることを考えて行動してきた。周りからは無謀と思われたかもしれない(笑)。でもそれで理解者も増えたと思う。これからもスタンスを変えないだろう。自分にしかできないことを探して。

(こばやしれい オフィス・ソフィオーネ)