入所に代わる三点セットの暮らしへ
福岡寿
「親亡き後の安心」が最大の、知的障害福祉のエンジンであったために、地域福祉のかけ声と、入所施設の建設が共存する、不思議な光景が続いてきました。
しかし、このエンジンに異議を唱え始めた人たちの声が確実に大きくなってきています。一つは、障害のある本人たちの声であり、入所施設からグループホームなどに生活の場を移した人たちの声。
一つは、地域のリアリティーある場で、生活に即直結した支援を、その仕事の生きがいにしていきたいと考え始めた人たち、たとえば、レスパイトケアや地域生活支援に取り組む人たちの声。
そして、その実践に触発されながら、予算のあり方に疑問を持ち始めた行政……。
確実に認識は変わってきているという実感があります。
あとは、障害の重い・軽いにかかわらず、だれもが、地域で暮らしていけるリアリティーを他所(よそ)の話ではなく、この地域に実現していく取り組みが求められています。
当面の生活の基本形としては、生活の場としての「グループホーム」、日中の場としての「通所やデイサービス」、個別支援としての「ホームヘルプサービス」、そして、その暮らしをケアマネジメントしていく「支援センター」の三点セットの暮らしを、入所施設のパッケージサービスに代わる新たな生活形態として提案していくことが大切だと思います。
もうすでに、「施設か地域か」の議論は終わり、宮城県や長野県などのコロニーの「脱施設宣言」に見られるように、課題は新たな段階に入っています。
次の十年は、三点セットを基本とした地域生活の実態づくりで外堀を埋めつつ、入所施設そのものが徐々にその役割を限定し、縮小していける方向に向けて精力的に取り組む十年になるのではないでしょうか。
その時の足場は「身近な市町村」、支援の手法は「ケアマネジメント」そして、取り組みの感度としての「スピード感」だと思います。
(ふくおかひさし 北信圏域障害者生活支援センター)