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障害者差別禁止法の制定を

田門浩

 現在、日本は長期にわたる不況に見舞われている。障害者の雇用状況も同様に思わしくない状況である。障害者に対する解雇も増えてきており、私自身も解雇に関する相談を数多く受けている。
 さらに、障害者を採用しているとしても障害者に対して適切な配慮をしない会社がほとんどである。たとえば、聴覚障害者でいうと企業内研修における通訳保障もない会社が数多くある。さらに、昇進や賃金額についても健常者に差を付けられている。
 ここで、世界的状況についていうと、1990年に米国でADA法が制定されたことを嚆矢(こうし)として、現在、全世界において43か国において障害者に対する差別を禁止する法律が制定されているとのことである。
 ところが、日本では障害者に対する差別を禁止する法律がない。たとえば、職業分野においては、日本では身体障害者雇用促進法が制定され、昭和51年に雇用義務が強化された。それ以来25年が経過している。その後、同法は「障害者の雇用の促進等に関する法律」に改められ、法定雇用率が上昇する等の改善が図られてきている。それにもかかわらず、障害者雇用促進法所定の法定雇用率を下回る企業が数多くあり、また、前記のようにほとんどの企業が同社で働く障害者に対して適切な配慮をしていない。
 障害者に対する差別を禁止する障害者差別禁止法の制定がないと、障害者に対する雇用状況は改善できないことは明らかである。日本において障害者差別禁止法の制定の必要性が高まってきている。しかも、2001年8月に、国連の経済的、社会的および文化的権利に関する委員会が日本に対して障害者差別禁止法を制定するよう勧告したところでもある。
 近い将来、障害者差別禁止法が制定されるよう強く望んでいる。
 また、同法が制定された後は、その運用が問題となることが容易に予想される。身体障害者雇用促進法の例から明らかなように、運用次第では法律の内容が空洞化してしまうおそれもある。米国等で障害者差別禁止法の運用実態を学び、これを日本に持ち帰って障害者差別禁止法について障害者の立場に立った運用がなされるよう力を尽くしたいと考えている。

(たもんひろし 弁護士)