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ケアについての一考察

学齢期の子どもに必要なケア

長居由子

 わが子を含めた重症心身しょうがい児の学齢期の暮らしからお話してみたいと思います。
 重症心身しょうがい児、介護する側から言えば、乳児をそのまま大きくしたような物理的にはとても手の掛かる重たい子どもです。
 息子は首も座らない、座位を保つこともできない一般に言う「寝たきり(寝かせきり)」で、日常生活ではすべてに介助が必要です。一緒に活動をしている子どもたちの中には、経管で栄養を摂取している子ども、吸引等の医療的ケアを必要としている子どももいます。

 ある調査によると、ハンディのある学齢期の子どもたちが、学校で過ごす割合の年間平均は1日のうちのわずか16パーセントに過ぎず、それ以外は主に家族(施設)が介護に当たるとありました。
 現在、息子は母親による送迎で毎日学校に通っていますが、なかには高速道路を使って登校する子どもや、片道50キロ近い距離を通ってくる子どもたちがいます。医療的ケアが必要なため、毎日の通学が許可されず、3年生にして初めて通学が可能になった子どももいます。けれども、これはお母さんが隣の部屋で待機するという条件の下、許可されたことです。
 その学校も早い子どもは午後1時、息子は2時15分に下校します。そして、土、日、長期休暇における過ごし方も家族に委ねられるという学齢期でしょうか。

 ここまで、いくつかの課題を踏まえながら、現状をお話しいたしましたが、実際こういった暮らしの中では、主に介護に当たる母親が体調を崩せば子どもたちは学校にも通えなくなってしまいます。いくつになっても母親とワンセットではない暮らしを視野に入れながらサービス提供を考える必要があるのではないでしょうか。
 まずは日々の送迎サービスは、最もニーズのあるところでしょう。また、医療的ケアの必要な子どもたちには訪問看護等々の派遣が急務であると思います。学校までも保護者の付き添いを強いることは、365日片時も子どもと離れる時間がないことになります。

 さて、県の単独事業の中にしょうがいのある子どもたちの放課後活動が制度としてあります。息子は週3日、そこで放課後を過ごします。仕組みとしては、地域の子育てが一段落した主婦の方々が指導員として低賃金ですが、マンツーマンでかかわってくださるというものです。おおむね5人以上の子どもたちが集り、活動実績があれば市町村から委託を受けることができます。子どもたちにとって学校、家族以外の人たちと接する機会はとても貴重な時間。経験、体験の乏しい子どもたちにとってここでの時間は、とても有意義な時間であると思っています。地域の方々の理解を得ながら、子どもたちも少しずついろいろな人たちに慣れていく様子は、家族だけではできないことです。そして特に母親の、ある意味偏った見方だけではない第三者の眼差しもとても大切なことだと感じます。

 それからもう一つ、県の事業の中に「サポート事業」というものがあります。いわゆるレスパイトと言われるものです。ここでは詳細については割愛いたしますが、ニーズに応じて子どもをサポート登録者個人、またはサポートステーションに預けるというもの。
 ショートステイが施設内での安全、見守りとするならば、これは個々のニーズに応じてどんなサービスも提供してくれるというものです。たとえば映画に行きたい、コンサートに出かけたい、というような、余暇支援の部分だったり、母親がリフレッシュしたいということでの利用も可能です。「あったらいいなぁ」というものから、実際制度として利用しているものまで並べてみました。
 肢体不自由の子どもが通う養護学校は県内に2か所。当然居住地域を離れて通学しています。ですから、卒業と同時に「地域に帰りなさい」と背中を押されても実際、なかなか地域でのつながりが持てていないのが現状です。できれば乳幼児期から学齢期、卒後の青年期…と、トータルで子どもたちのことを支援できる仕組みがあるといいと思います。いくつかサービスの材料はそろっていても、なかなかおいしい料理になって提供されていないという感じがします。利用者が満足できないとすれば、それを料理する仕組み作りが必要なのではないでしょうか。

(ながいゆうこ 群馬県前橋市在住、夢(む)すばる代表)