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みんなのスポーツ

ウィルチェアーラグビー
(Wheelchair Rugby)

井田智之

1.ウィルチェアーラグビーの歴史

 この競技は、チームスポーツに参加するチャンスのなかった頚髄損傷者(四肢マヒ者)のためのチームスポーツとして、頚髄損傷者自身により、1977年にカナダで考案されました。このスポーツは、バレーボールを使用し、ボールを投げられない者は手で打ちます。そして車いす同士がぶつかり合うことからラグビーの要素も含まれています。
 1988年にはクアドラグビーの世界へ向けての普及活動と国際的なルールの統制を目的として組織が作られました。ウィルチェアーラグビーは、四肢マヒ者に対して初めてとなる世界的なチームスポーツであり、トップレベルの選手はパラリンピックをめざし、また一方では、チームスポーツとして仲間と楽しんでプレーもしています。オーストラリア、ニュージーランド、ヨーロッパのイギリス、フランス、スウェーデンから南アフリカまで20以上の実施国があります。2000年のパラリンピックシドニー大会では正式種目として実施され、アメリカが優勝しました。2004年パラリンピックアテネ大会でも実施を予定し、日本の参加も期待されます。
 ウィルチェアーラグビーは、日本では1997年に日本ウィルチェアーラグビー連盟が設立され、アメリカのチームを招き普及の講習会を行い、国内の普及と国際大会の参加を行いました。1999年より日本選手権大会を開催し、昨年も11月に千葉ポートアリーナで行われました。

2.ウィルチェアーラグビーの競技について

1.チーム構成

 この競技は1チーム4人、2チームの対戦で行われます。すべての選手は車いす(四肢マヒであること)を使用します。参加する選手はすべて、障害のレベルにより、0.5~3.5ポイントの持ち点をもっています。この持ち点、高い点数は、高い機能レベルを示し、逆に0.5ポイントの持ち点の選手は障害の程度が重い選手です。1チーム4人の選手の持ち点合計が8ポイントを越えない範囲で試合に臨まなくてはなりません。

2.コート・用具

 ボールはバレーボール(5号球)を用い、試合はバスケットボールコートを用います。ゴールはコート両端に二つのコーンの間に位置し、得点はボールを保持した攻撃の選手がゴールラインを通過(車いすの4輪のうち2輪がラインを通り越す)するときに、1得点が加算されます。
 また、ゴールの前にあるキーエリアは、バスケットの制限区域のような役目があります。攻撃が相手のキーエリアに入れる時間は10秒以内です。反対に防御側は、キーエリアに3人しか入れません。もし4人入った場合は、4人目のプレーヤーがペナルティーとなります。

図 コート

3.競技用車いす

 車いすはこの競技に合わせて作られた競技用の車いすを使います。防御用は長く相手を止めやすく作られています。逆に、攻撃用は全長が短く、相手からつかまりにくくなっています。必ず転倒防止バーを後ろにつけなくてはいけません。

4.基本的なルール

 ラグビー特有の反則である、ボールを前に投げてはいけないルールがなく、バスケットボールのようにドリブル、パスをどの方向にでも行うことができます。続けて何回も車いすを動かすことはできますが、10秒以内に1回ドリブルかパスをしなければいけません。この競技の一番の特色は、自分の車いすを相手の車いすにぶつけて防御や攻撃を行う点にあります。相手にぶつかったり止めたりして、ボールを保持したプレーヤーをうまくゴールへ進めていくことが大切になってきます。

5.反則(ペナルティー)

 攻撃側(ボールを保持しているチーム)がファウルをおかした場合は、ボールの所有を失います。スローインは相手側に授与されます。防御側がファウルをおかした場合、相手に与えるものがないため、反則をおかした者がペナルティーボックスに行かなくてはいけません。アイスホッケーのペナルティーボックスと同じようなものです。ペナルティーボックスに入った選手は1分経過するかまたは、相手が得点しなければゲームに戻ることはできません。
 主な反則は次のようなものです。

  • 手か腕で相手の車いすや体を押さえること
  • 相手の手や体をたたく、肘うちをするなど非合法な接触(コンタクト)をした場合
  • 車いす後輪の後部にあたり、急激な回転を与え体勢を崩した場合(スピニー)

3.チームの活動とこの競技を始めるには

 現在全国には、ウィルチェアーラグビーのチームはまだ10チームほどしかありません。わたしたちのチームも月に1回程度の活動で、東芝の体育館を借りる等の活動を行っています。昨年の11月に国際協力事業団(JICA)の研修生にウィルチェアーラグビーの講習を行い、チームのメンバーにも協力してもらいながら講習を行いました。講習内容は、最初に競技用の車いすにのり、車いす同士をぶつけることを体験します。これに慣れてくるとみなかなりはしゃぎながら相手にぶつかっていきます。
 それともうひとつ理解することは、バスケットで行うスクリーンプレーを覚えていただければよりゲームを楽しめる条件がそろいます。海外の研修生はすべて健常者ですが、四肢マヒの選手にかなわず、よく止められていました。ルールがシンプルであるため、車いすがそろえば簡単に体験でき、試合を楽しむことができます。

4.主な情報

 この競技の情報源としては、ウィルチェアーラグビー連盟のホームページ(http://www.tr3.net/jwrf/index.html)や、インターネットの検索に車いすラグビーと入れれば国内のチームがいくつかでてきます。お近くのチームに問い合わせてみるとよいでしょう。また、東京都多摩障害者スポーツセンター(TEL042―573―3811、FAX042―574―8579)にも競技用の車いすはありますので、問い合わせていただいても結構です。

(いだともゆき 東京都多摩障害者スポーツセンター)