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ホットでほっとなミニ旅行

奥泉浩美

 小旅行が好きな私。特に、海は、大きな流れる力で心が洗われるから、いつ見ても飽きない。聴覚障害の私にとっては、耳で聴く代わりに目で聴くので、ヒーリング音楽を聴くような感覚で目の保養になるのだ。
 近場では、江ノ島・鎌倉がお気に入りの一つ。昔ながらの雰囲気が漂う江ノ電と「ようこそ!」と言っているような海の大らかなところが、大変気に入っている。その大らかさ・街並み・風情が来る者の心を十分納得させてくれるのだろう。さらに行く先のお店の人の笑顔やさりげない心遣いが旅する者の心を和ませてくれる。「来てよかった!また来たい!」とだれもが思うであろう。聴覚障害者は、相手の口を読み取るほかに「表情」も含めて、話を理解するので喜怒哀楽の表情に敏感でもある。険しい表情・無表情だと悪い意味で「冷たい・怖い」といったイメージに固執されがちになってしまう。
 温泉も好きだが、旅館はちょっと苦手なことが一つある。仲居さんの細やかな心配りはとてもうれしいが、コミュニケーション面で落ち着かず、気を遣ってしまう。自分の経験だが、健聴者と一緒の場合、どうしても健聴者に合わせてしまうのは仕方のないところだが、できたら、私の目を見て話してくださるか大切なことを紙に書いておいたものを渡してくださるなど、オーバーでなくてもよいが、ちょっとした心配りが大変うれしいものである。
 また、旅館には襖の部屋があるが、叩いてもトントンと音がしないので「失礼します」と言いながら突然部屋に入って来た感じで、聴こえない者にとっては、ギョッとして心臓が踊ってしまう…。最近は携帯電話に振動バイブレータが付いているので、そんな時に、振動で知らせてくれるような気配りがあったら大変有り難いと切に思うのですが。このことが行き届いているということは、一般のお客様も居心地のよい旅館という好印象につながる。
 いずれにしても、気持ちが伝われば方法は何でもよい。それだけでも十分にうれしい。自然な気持ちといい笑顔が増えれば、世の中、ずいぶんと穏やかな社会になるだろう! なんて思いながら、よい出会いを思い出しては一人喜んでいる。
 7月には、WFD世界ろう者会議があります。会議参加とカナダ観光を組み合わせた旅行を企画しました。参加者を募集しています!
 のどかな空気と大らかな大自然から勇気を分けてもらいに行きませんか?

(おくいずみひろみ、JTB営業部バリアフリープラザ)