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みんなのスポーツ

ショートテニスについて

沖健治

1 はじめに

 私は、障害者スポーツの指導員として仕事をさせていただくようになって8年目になりますが、まだまだ力不足を痛感する毎日です。このような中で私は、障害者スポーツが「障害をもった人たちの特別のスポーツ」ではなく、障害のある人もない人も一緒に楽しめるものでなくてはならないと感じています。今回紹介する「ショートテニス」は、このような意味からも、だれでも気軽に行えるスポーツではないかと思います。

2 ショートテニスについて

 「テニス」と言われて皆さんが想像するのは、いわゆる「硬式テニス」や「ソフトテニス」ではないでしょうか。硬式テニスとはイギリスが発祥の地で、世界中で行われているテニスです。ソフトテニスとは硬式テニスをベースに日本で考案され、以前は軟式テニスと呼ばれていたもので、中学校の部活などで盛んに行われています。
 それではショートテニスとはどのようなスポーツなのでしょう。基本的には、前記のテニスと同じように、コートの中央にネットを張り、ラケットを使いボールを打ち合う競技です。詳しく説明すると、コートはバドミントンコート(縦13.4メートル、幅6.1メートル)を主に使用し、真ん中に高さ約80センチのネットを張って、22インチ(約56センチ)以内のラケットで、スポンジでできたボールを打ち合う競技です。
 ショートテニスは、硬式テニス等に比べて使用するコートも用具も小さい(短い)もので、体育館等の屋内で行います。通常の体育館であればバドミントンのラインは入っていますし、ネットについてもバドミントンネットを80センチの高さで張れば、コートはすぐに作れます。
 ボールについては、直径約7センチのものや約10センチのものが主流かと思います。柔らかなスポンジボールを使用することにより、スピードがある程度おさえられ、ラリーを続けることが容易にできるようになっています。
 このようにショートテニスは、主に屋外で行われる硬式テニス等に比べると、障害をもった方でも気軽にできるスポーツです。また、硬式テニス等をはじめて行う方のための導入としても利用できるもので、現に日本を代表する元テニスプレーヤーで車いすテニスにも造詣が深い伊達公子氏も、ジュニアレッスンの際にスポンジボールを使用しています。
 ルールについては、おおむね硬式テニスと同様ですが、よりラリーを楽しめるようにボレー(相手の返球をバウンドさせずに直接相手コートに返す)を禁止したり、障害程度によって有効バウンド数を多くするなどすれば、多くの方が一緒に楽しめるようになります。

3 視覚障害者のテニスについて

 次に、視覚障害の方が行っているテニスについて説明したいと思います。正式名称は「視覚ハンディキャップテニス」と言い、埼玉県所沢市にある国立身体障害者リハビリテーションセンター内に日本視覚ハンディキャップテニス協会の事務局があります。
 使用するコートとネットについては、ショートテニスの場合とほぼ同じですが、使用するボールは真ん中にサウンドテーブルテニス(旧盲人卓球)で使用するものを入れた(音源)スポンジボールを使用します。正式には、B1クラス(視力0~明暗弁、アイマスク装着)、B2クラス(視力手動弁~0.03未満、視野5度未満)、B3クラス(視力0.03以上、視野5度以上)、B4クラス(視覚に障害がある者、視機能は不問)まで、障害程度に応じて4つにクラス分けされています。それぞれのクラスによって有効バウンド数が異なっていて、B1クラスが3バウンド以内、B2・B3クラスが2バウンド以内、B4クラスが1バウンド以内となっています。
 また、B1クラスが使用するコートについては、選手が位置確認できるように、コートのベースライン等に凧糸等で突起させる等のルールがあります。毎年秋に行われる「日本視覚ハンディキャップテニス大会」で、B2~B4クラス(弱視)で使用するボールは、赤(一部ベージュ)、黒、黒(一部ベージュ)の3種類のボールが用意されます。これは人によって見え方が異なる弱視者のことを配慮し、サーブをする選手が視認しやすい色のボールを選んで試合を行うなど、視覚障害者スポーツならではの工夫もされています。
 公式競技はシングルスで、交流を目的とした競技として、ミックスダブルス(晴眼者と視覚障害者のペア)があります。
 私の勉強不足かもしれませんが、視覚障害者の、なかでもアイマスクを使用して行う競技は、サウンドテーブルテニス、盲人バレー、ゴールボール等2次元でのものが主流ですが、3次元の空間を使っての競技はグランドソフトボールとこのテニスしかなく、なおかつ、団体ではなく個人で行うものは視覚ハンディキャップテニスだけだと思います。

4 最後に

 今回、ショートテニスと視覚ハンディキャップテニスを紹介しましたが、実際に体験したり、もっと詳しい内容を知りたい場合は、お近くの障害者スポーツセンターや障害者福祉センター等に問い合わせをすればよいかと思います。東京都国立市にある「東京都多摩障害者スポーツセンター」や横浜市にある「障害者スポーツ文化センター 横浜ラポール」のように、毎年、ショートテニスの大会を開催したり教室を行っている施設もあります。
 また、視覚ハンディキャップテニスの問い合わせについては、国立身体障害者リハビリテーションセンター(TEL 042―995―3100)でも対応しています。
 最後に、障害者のための種目ではないのですが、ほぼショートテニスと同じような内容で行っている競技として、「ミニソフトテニス」、「バウンドテニス」、「パドルテニス」、「ミニテニス」等、テニスをベースとして、より簡単に多くの方が楽しめるさまざまな競技が各地で行われているようです。

(おきけんじ 埼玉県障害者交流センタースポーツ指導課)

●日本視覚ハンディキャップテニス協会事務局
〒174―0004 東京都豊島区北大塚1―20―20―101 武井方