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障害特性を踏まえたサービスを!

田所裕二

はじめに

 精神障害者には、病気や障害の状況が個々人によっても異なるばかりか、同一人においてもその波(変化)があり、なかなか一定のスケールによる特定がしずらいという特性がある。そのため、社会的な偏見・差別・誤解などとともに、一般就労や社会参加を困難にする大きな阻害要因となっている。
 精神障害者は法定雇用率の対象になっていないこともあって、働くことから所得を得ることは、現在大変厳しい状況にある。精神障害者がより健康で普通の地域生活を送れるためには、福祉や医療の制度充実とともに、公的な所得補償制度の拡充が必要不可欠である。

障害認定基準の公明正大な議論を

 障害認定基準の考え方は、現在でも随時変更がされているのか、ケースによっては突然支給対象から外されたうえに、拠出金だけを求められる場合がある。前述のように、精神障害者は障害の状態に変化が発生することがあるため、認定基準の再考などが生じているようである。障害者にとって、障害年金の支給が打ち切られることは、生活の糧を失うことにもつながる重大事である。認定基準の見直しには細心の注意とともに、オープンな議論と説明が必要である。
 また、精神障害者には「障害者手帳」の制度もあり、定期的な判定の更新が行われている。この「手帳」制度とリンクをすることで、申請の軽減や認定基準の公明性、そして「手帳」制度の充実にもつながると考える。

扶養問題の整理と無年金者の救済を

 障害者の地域生活を考える場合、親や兄弟などの家族による扶養の考え方を整理すべきである。成人に達した障害者の生活を考えるのに、いつまでも家族の所得合算を前提にしたり、免除基準にいたっては生活保護基準よりも低いものがまかり通っている。
 また、ある種社会問題にもなっている無年金障害者の救済についても、積極的に制度の穴埋めに取り組むべきである。

おわりに

 先にも述べたように、障害者が安心して地域生活を送られるための重要な制度の一つがこの年金制度である。さまざまな事情が複雑に絡み合っているとはいえ、ますます障害者が生きにくくなるような制度改革だけは、「断固反対」の声を上げていきたい。

(たどころゆうじ 財団法人全国精神障害者家族会連合会 事務局長補佐)