音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

1000字提言

「とにかく契約」を検証しよう

藤村和靜

 支援費制度の滑り出しは順調なのだろうか? 今、制度利用者は措置費制度との違いは何なのかを、一生懸命探ろうとしている。まさか、書面によるサービス利用契約を締結したことで、支援費制度を実感しているのではないだろうか?
 障害福祉サービスの利用契約では、関係団体等から契約書、重要事項説明書やサービス利用説明書の書式などが示され、事業者として形式的な整備は十分に整っていたと思う。でも、それが仇(あだ)になろうとは…?
 利用者や事業者等から伺ったところによると、多くの場合「支援費制度開始までにとにかく契約」が先行した様子。確かに、利用契約制度では書面による契約行為も大事な要素ではあるが、その前にもっと大事な手続きがあるのでは。それは「説明と合意」いわゆるインフォームドコンセントである。
 社会福祉法は、ただ単に契約書の取り交わしを義務づけているのではなく、利用契約にあたって契約やサービスの内容を十分に説明し、契約成立時には重要事項を記載した書面を交付することと規定している。いわば、契約書という形式を重視しているのではなく、実質的な「説明と合意」を求めているのである。だが果たして、この法が求めている実質的な「説明と合意」をだれが検証するのであろうか?
 神奈川県内には、障害当事者が中心になって組織し、障害当事者だけが第三者委員として活動するオンブズパーソン組織「K―フレンズ」がある。この組織の活動は、身体障害者療護施設利用者を対象に、苦情解決にとどまらず、広く障害者の権利擁護のための相談活動を行っている。そして、4月からは施設利用者が契約書を取り交わしたかではなく、支援費外サービスの自己負担等の内容や支援費サービスの内容などが利用者にどう説明され、どのように合意されたかを検証する活動を開始している。
 形式的な審査ならば、行政をはじめとしてだれでもができよう。だが、今大切なのは支援費制度利用者等がサービス内容を十分に理解し、真に合意したかを検証し、特に「とにかく契約」されているために不足するところがあれば、早急に補足することではないだろうか。契約に関する苦情が発生してからでは遅い。全国的な規模で、K―フレンズのような検証活動が展開されることを期待したい。すべてのサービス利用者の権利が保障されるために…。

(ふじむらかずよし 丹沢自律生活サンター)