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WBUAP中期総会を終えて

指田忠司

中期総会の概要

 去る11月17・18日の両日、シンガポール市内のホテルを会場にWBUAP(世界盲人連合アジア太平洋地域協議会)中期総会が開かれた。日本からは、社会福祉法人日本盲人福祉委員会(笹川吉彦理事長)の代表8名を含め約30名が総会と前後に開かれた会議に参加した。筆者は日本盲人会連合国際委員として今回の代表団に加わり、初めて総会に出席した。以下、総会を中心に会議の模様を報告する。

 WBUAPは、2000年のWBU第5回総会(メルボルン)の決定で、従来の東アジア太平洋地域諸国に東南アジア諸国が加わった組織である。したがって、組織運営の基本となる定款も2001年のバンコク総会で新たに採択され、事務局や財源など、まだまだ不十分な体制で今回の中期総会を迎えた。
 総会1日目は開会式の後、米国ベネテック社のフラクターマン氏による基調報告に続き、岩橋武夫賞の贈呈式が行われた。今年度の受賞者は、視覚障害者の職業的自立に向けて活動しているカンボジア視覚障害者協会のマオ会長で、席上岩橋明子氏(社会福祉法人日本ライトハウス会長)は「今回は従来とは異なり、今後の活躍を期待して若い方に贈ることにしました」と述べて、同賞を贈呈した。そして午後には、WBUAP地域を構成する3つの地域(東アジア、東南アジア、太平洋オセアニア)の概要が報告されたほか、女性委員会、青年委員会、マッサージ委員会など、各専門委員会の報告とともに、昨年10月に大阪で開かれたブラインド・サミット会議に関する報告も行われた。
 また最後に、WBUAP事務局が昨年度実施した「アジア太平洋地域における視覚障害者サービスの現状」に関する調査の結果が報告され、調査に基づく課題も指摘された。
 2日目には、定款の一部改正など、実務的な事項が審議された。また現在進んでいる各種取り組みとして、JICA(国際協力機構)が2004年1月から開始する「アジア太平洋視覚障害者マッサージ業支援事業」について、日本でこのプロジェクトを支援している団体を代表して笹田三郎氏がその概要について紹介し、各国からの意見や要望を聞いた。
 総会の終了にあたっては、「WBUAP中期総会声明」が採択され、国連障害者権利条約制定の推進、びわこミレニアム・フレームワークの達成、世界情報社会サミットにおけるアクセシビリティ関連条項採択の支持、ICT(情報通信技術)へのアクセシビリティの確保、自助団体の育成、青年及び女性の組織化と参加の促進、点字の普及、国際視覚障害者スポーツ協会の組織見直しと視覚障害当事者の参加促進など、14項目に及ぶ活動目標が掲げられた。

関連行事の概要

 中期総会に先立つ11月15日には、女性フォーラム、翌16日には、青年フォーラムが開かれ、それぞれ約50名近くが参加し、各国における組織化や経験と情報交換のためのネットワークづくりについて討議された。女性フォーラムでは、これまでの活動を反省し、新たな役員体制で今後取り組むこととなり、日本の田畑美智子氏が、東アジア地域担当役員として選出された。また、青年フォーラムでも日本の視覚障害者が8名参加し、議論をリードしていたという。
 総会終了後の19・20日の両日は、「バリアフリーとアクセシビリティ」をテーマとする会議が開かれた。日本からは各種共用品(障害者も健常者もともに使いやすくデザインされた製品)開発の取り組みや、点字ブロック、最近の交通バリアフリー法の制定などについて報告があった。
 この会議の終了にあたっても「勧告」が決議され、情報へのアクセス、著作権問題に関する世界知的所有権機構との調整、視覚障害者用機器の非課税・免除など10項目に及ぶ目標が示された。
 今回の総会で目立ったのは、参加者の約3分の1を占めた日本人の参加であった。これに対して、フィリピン、フィジー、サモア、パプア・ニューギニアの代表が出席できなかったこと、その理由の多くが資金不足にあることなど、今後取り組むべき課題の大きさを痛感させられた会議であった。

(さしだちゅうじ 日本盲人会連合国際委員)

(財)日本障害者リハビリテーション協会発行
「ノーマライゼーション 障害者の福祉」
2003年12月号(第23巻 通巻269号)