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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年1月号

新春メッセージ 障害者権利条約採択に向けて~NGOの仲間たち

行動への呼びかけ

キキ・ノードストローム
世界盲人連合会長、国際障害同盟議長

世界盲人連合(WBU)に対して行動を起こすように呼びかけるのは今回で2度目ですが、内容は1年前と同じです。障害者の権利と尊厳を普及・保護するために、国連条約の策定をめざそうという呼びかけです。

国連総会のもとで、特別委員会が設置され、新条約の本文が起草されることになりました。この特別委員会には、どの政府も参加することができます。

非政府組織(NGO)にもオブザーバーとしての参加が認められていますが、条約の起草過程に加わることはできません。

個々の団体の場合、特別委員会への出席が認められるためには、特別な手続きを踏む必要があります。しかしWBUの場合は、国連経済社会理事会(ECOSOC)の特別枠があるため、20までなら、WBUの加盟組織が特別委員会に参加することができます。

次回の特別委員会はニューヨークで、2004年5月24日から6月4日まで開催されます。

2004年の1月5日から14日にかけては、指名を受けたワーキンググループが召集され、条約の本文について話し合います。ワーキンググループは27か国の政府、1つの地域、1つの人権団体、12のNGOの代表によって構成されています。WBUからは、私もしくはウィリアム・ローランド博士のいずれかが交代で出席します。

これまでに地域の会合ならびに組織や政府から、障害者権利条約に関する多くの草稿が提出されています。その中には、WBUやメキシコからのものも含まれています。これらの草案の多くは、障害者の社会的開発に関する合意を特徴としており、人権的なアプローチはほとんど見られません。

国際障害同盟(IDA)を構成する7つの国際的当事者団体は、過去において同条約に関連した活発な活動を展開してきており、今後も共同で取り組んでゆく予定です。IDAとしては、人権に根ざした条約の締結を望むという点で意見が一致しており、また起草の最初の段階から、当事者団体の代表が直接関与することを希望しています。

2002年の12月に国連総会で採択された決議案では、各地域が地域会合の開催を通じて特別委員会の活動に貢献することと、障害当事者団体の代表ならびにその他の専門家が、条約の策定に積極的にかかわることが奨励されています。これまでにESCAP地域(アジア・太平洋)とGLURAC地域(ラテンアメリカ)、さらには一部のアフリカ地域も、地域協議会を開催しました。しかしWEOG地域(西ヨーロッパ等)では、いまだに何の行動も起こされていません!

同じ決議案の中では、政府は特別委員会の会合に参加する各国代表の専門家の中に、当事者団体も含めるべきだという合意を見ました。このチャンスを活かせば、WBUにも条約の起草過程に影響を与える可能性が出てきたのです。

障害者権利条約策定にあたっては、二つの方法のいずれかを取ることが考えられます。一つは人権条約で、もう一つは社会的開発に関する条約です。

人権条約とは、すでに存在している国連の6つの人権条約を基にしたアプローチです。しかしこれらの既存の人権条約には、障害者を対象とするものはありませんでした。これこそが、児童と女性と人種差別に関する条約の起草を新たに開始した理由でもあります。

人権を重視したアプローチには、いくつかの利点があります。つまりすでに承認された規範や基準に関連づけて考えることができるのです。これらの権利を侵害する行為があった場合、すでに批准している政府を相手に訴訟を起こすにしても、非常に有利になります。今後私たちが策定する障害者のための人権条約は、既存の基準を下回るものであってはなりません。これは大変重要なポイントです。

しばしば障害者が物事から除外される理由として、偏見や無知、障害者の権利の軽視などが挙げられます。生活や教育に関する権利、文化・政治・社会・経済・市民的権利、自己決定権、自己代表権、非差別権、民主的権利の行使、インクルージョンや開発に対する権利などです。投票権、財産の均等な所有権および相続権、文書に署名する権利、結婚する権利、法の前の平等のような基本的な領域における差別は、財政上の問題というより、むしろ人々の中にある差別意識や障害者に対する態度に根ざしたものです。

人権条約の策定が反対されるのは、政府の多くが莫大な費用がかかると信じているせいもあります。

新しい条約は、社会的開発の原則に基づいたものを起草することも可能です。焦点を当てて取り組む分野としては、リハビリテーション、ヘルス・ケアへのアクセス、障害の予防、定義、支援機器、アクセシビリティを満たす建築基準、食料や水に対するアクセスなどが挙げられます。国連の基準規則は、これらの社会的側面にガイドラインを提供します。ただ唯一の欠点は、基準規則はあくまで勧告に過ぎないため、法的拘束力を伴わないという点です。

社会的開発を重視したモデルの利点は、より多くのテーマや手段を選ぶ余地が出てくることです。しかし同時に、明確な国際基準が存在しないため、その実施も任意にならざるを得ないという問題もあります。このアプローチの究極の形としては、行動計画に関する国際協定として起草するという方法も可能です。

新たな条約を起草する際には、人権に基づいたものにするか、あるいは特定の手段に関する協定にするかを決めねばなりません。そこでWBUとしても、この条約にいったい何を望んでいるかを明確に示す必要があります。したがってすべての加盟組織に対して、障害者の人権条約の策定のために行動を起こすこと、そしてこの条約を、障害者のための社会的な規範や基準を定めるだけの国際協定に終わらせないよう努力するよう呼びかけたいと思います。

今後の数か月間は、私たちにとってまたとないチャンス到来です。ぐずぐずしてはいられません。

共になすべきことに取り組みましょう。この仕事には皆さん全員の力が必要とされているのです。