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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年5月号

見えてきた課題

社会就労センターの立場から

桑原隆俊

支援費制度が施行され1年が経過しました。社会就労センター(身体障害者授産施設)を運営する立場からこの支援費制度の下での1年を検証してみたいと思います。

支援費制度に変わり、利用者個人との直接契約になりましたが、知的障害や、コミュニケーションの困難がある聴覚や視覚障害者、これらの重複障害をもつ利用者との契約に対し、成年後見制度や地域福祉権利擁護事業などの整備が不十分であり、当第2わかふじ寮においても9名の利用者はやむなく保護者との代理契約を行っています。親、兄弟などの肉親といえども、やはり家族と利用者とのニーズに違いがある場合も考えらます。特に一般就労や地域生活への移行に対する意向については、利用者と家族の考えに隔たりが大きいことが多く、支援費制度導入にあたっての基本的な柱である、利用者自らが選べるサービスや自己決定の実現のためにも早急な体制の整備と地域格差の解消が必要です。

次に、サービスを提供する側として大きく考え方を変えなければならなかったことに個別支援計画があります。措置制度の下では、どちらかと言うと施設側が一方的に立てていた処遇計画から、アセスメントにより導かれた利用者のニーズに基づく個別支援計画の実践が求められるようになりました。しかし、介護保険におけるケアマネジャーによるケアマネジメントとは違い、障害者施設の場合は支援計画の作成者は明確になっておらず、本人をよく知る人等となっているため、担当する職員の力量によってニーズの引き出し方や実際の支援計画の作成等にバラツキが出ているのが現状です。なかでも、地域生活や一般就労への移行等のニーズに対する支援については、障害者は高齢者に比べて地域生活のための基盤整備が遅れています。特に郡部では、社会資源の整備が遅れており、施設の所在地によっては、利用者自らが自由に選べる状態にあるとは言えません。市町村で具体的に数値目標を掲げて障害者計画を策定しているのは30数%に過ぎず、地域サービスの中で一番なじみのあるホームヘルプについても、北海道では身体障害者で40%、知的障害者で60%の市町村でサービスそのものが行われていない現状があります。

就労後や地域生活移行後のフォローアップについても、退所後30日以内に1回を限度とした退所時特別加算の制度がありますが、地域での相談体制や支援体制が十分でない現状を見ると、ある一定期間は送り出した施設がフォローしていかなければなりません。必要な期間、退所後の支援が継続してできる制度が必要と思われます。

この他にも、「定員による運営費の逆転現象(40人定員の運営費のほうが50人定員の運営費より高い)」「働くための支援が十分に反映されない障害程度区分の判定項目の問題」「判定機関と給付機関が同一」等、課題が挙げられます。介護保険との統合問題が全面に出てきていますが、少なくともまだ数年は支援費制度の下で運営していかなければなりません。各方面で十分な検証を行って頂き、当初の理念に少しでも近づけるよう早急に改善を望みます。

(くわはらたかとし 第2わかふじ寮施設長)