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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年9月号

私の車紹介

プライベートでも楽しみたいカーライフを実現
―イタリア製「グイドシンプレックス」手動装置―

大塩崇博

私は生まれつき関節が弱く、肩や肘などほとんどの関節に障害をもっているのですが、特に膝関節への負担が大きいため、次第に両膝関節ともに変形拘縮が進み、7歳で自立及び自立歩行ができなくなり、以来30数年間の車いすユーザーです。

幼いころから車いすユーザーだった私にとって、車は衣食住と同様、プライベートやビジネスには無くてはならない存在です。

「車が無くては移動が不便で生活そのものが成り立たない」という現実に加え、多くの男子がそうであるように、幼いころから自動車が好きだったので、車は移動の手段というよりも友のように感じています。

だからこそ、車で移動する時間はたとえ仕事の時でも楽しい一時でありたい、プライベートの時ならばなおさらのことです。

そこで私は自身の残存機能を考慮し、国産の手動装置よりさらに楽しく、そしてより安全だと判断し、イタリア製「グイドシンプレックス」の手動装置を選択しました。

このメーカーの装置は、身体の残存機能や車に適している装置を数種類のバリエーションの中から選ぶことができ、フロアタイプと同様にアクセルとブレーキを1本のレバーで操作するタイプと、それぞれ独立して操作するタイプの2種類があります。

そのいずれもがハンドル周辺部分に取り付けられるため、両手でのハンドル操作が可能となり、フロアタイプのように運転姿勢がレバー側に倒れることが少なくなり、背筋をまっすぐに保ちやすいので疲れにくいという利点があります。

その中で私が選択したものは、アクセルとブレーキの操作が独立しているタイプです(写真1)。

写真1
写真1

このタイプにした理由は健常者が運転する感覚に近く、1本のレバーで操作する場合に感じられるブレーキをかける際のほんの少しのタイムラグが無いので心に余裕ができ、楽しく安全に運転することができるのではないかと考えたからです。この選択は私には正解でした。しかし、フロアタイプの操作に慣れている方には若干の違和感があるかもしれません。

また、ブレーキレバーの取り付けも左か右かを身体の残存機能や好みで選ぶことができるのもこのメーカーの特徴です。車を運転する場合に一番重要となるブレーキを、力がかけやすい腕でかけることが可能になり、これも安全運転という観点から見ると適していると感じました(写真2)。

写真2
写真2

また、足元床面への部品装着や張り出しがないので、運転席の前後移動の支障にならず、ハンドルと身体の距離を適切に調整することができ、健常者との共用時にもレバーが邪魔にならず、運転者の好みの位置に座席を調整することができるので、健常者の友人にも好評です。

フロアタイプの手動装置と比較して、ウインカー、ホーン、ライト等のスイッチ類がレバーにはなく、車に既存のスイッチを使用するので、接触不良等のトラブルがなく安心ではあるのですが、フロアタイプのレバーに装着されているスイッチ類に慣れ、便利だと感じておられる方や、上肢の保持を座席だけではなく、レバーにも依存しておられる方は、多少の不安を感じられるかもしれません。

ですが、車の既存の機能をできるだけ使用するシンプルな構造は好感が持て、長年にわたり使用できる信頼性は、さすが自動車先進国で40年以上の歴史と70%以上の普及率で培われた、技術と経験によるものだと感じました。

取り付けに際して気になる価格も若干高いように感じましたが、車を買い換える際に装置を次の車に移設することができ、買い換える必要がないので、長い目でみると経済的でもありまた、同じグイドシンプレックス社の違う装置に替える場合は、装置の下取りも可能等、ユーザーの立場を重要視した装置造りにはとても好感が持てるものです。

従来のフロアタイプになじめない方やシンプルな装置をお望みの方には「グイドシンプレックス」をお薦めしたいと思います。

(おおしおたかひろ 福岡市在住)