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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年9月号

私の車紹介

車いすのまま乗れる普通車の改造
―ジョイスティックから自分仕様の車の改造へ

相川宏光

私は頸椎損傷による四肢マヒの障害者です。障害レベルはC6―a、クルマの運転に対してどのくらいのレベルかと言うと、車いすから運転席に乗り移り車いすをたたんで積み込みに15分、降りるのに10分かかります。ハンドルは何とか回せるが9時から12時の間で1度止まる。ブレーキに関しては全然ダメでノーマル仕様のクルマは運転できません。でも障害者になったとき最初に思ったのが、クルマを運転できるようになりたいでした。そんな時テレビで見たジョイバンを見て、これならもしかしたら運転できるかなと。車いすのまま運転できることで、無駄な時間や体力を消耗しないし、雨の日だって出掛けられるし、あとは運転装置だけが気になっていました。ジョイスティックでの運転はちょっと怖いなと、しかしそれはアメリカに行き、アナフィールドの社長さんにいろいろな運転装置を見せていただいたことで安心しました。アナフィールドのノーマル仕様のハンドルを限界まで軽くしてバックアップの安全装置を付けた物は私の筋力でも十分軽く回せ、アクセル・ブレーキは電気制御式のレバーの重さだけでフルブレーキまでかけられる物でした。

私が購入したクルマは、日本でも販売されているクライスラーのグランドボイジャーをベースに床を25cm下げ平らにし、サイドのスライドドアとスロープクルマの車高が下がるニールダウンを全部スイッチ一つ押すだけで自動制御で動きます。この改造はアナフィールド社ではなく、ブラウン社で行い、運転装置はアナフィールド社で取り付けてもらいました。

このクルマを日本で運転し始めて、いくつかの問題点や失敗を繰り返しました。アメリカの道路と違って日本はカーブや上り下りが多く、信号待ちや渋滞が多い道路にはハンドルが軽いがために出るバランスの重要性が求められました。電気制御式のアクセル・ブレーキは夏の暑さに弱く、気候の違いによる熱対策が必要でした。また、一番感じたのは車いすのまま運転することによる上体バランスの安定、それとクルマがミニバンと言っても大きくサイドスロープするので、広い駐車スペースが必要なことでした。

運転しやすいように改造したボイジャー(筆者)
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そこで私は考えました。これから日本にも同じようなクルマが増え始めるなら、私が使用した数年間で得られたノウハウやもっといろいろな海外の情報を広く知ってもらおうと、そのために作ったのが「ランプ・バン」という小さな会社です。まず最初に、日本人向きに小型の車いすのまま運転できるクルマをと考えていました。アメリカだけではなくヨーロッパにも目を向け、ドイツのRIHACAREという大きな福祉機器の展示会にも行きました。そして2001年のRIHACAREを見に行った時、PTクルーザーの車いすのまま運転できるクルマを見つけました。それは日本の普通車ほどの大きさで、日本でも販売されている(右ハンドル仕様)のでメンテナンスも安くできると考え、デモ兼テスト車として購入しました。

実際にPTの障害者仕様を作っていたのはアメリカでした。ヨーロッパで販売されている複雑な運転装置などもアメリカ製が多く、クルマに関してはアメリカが一番進んでいると思います。PTは最初に買ったボイジャーを踏まえて多くを日本でセットしました。ハンドルはボイジャーと同じ仕様ですが、バランサーを最初から付け、熱に弱い電気制御式のアクセル・ブレーキはノーマル仕様のブレーキを75%レスに軽減をアメリカで改造してもらい、日本のニッシン自動車にハンドコントロールとギアチェンジのブランケットを作っていただき、ランプ・バンの最初のオリジナル製品、バックサポートを作り運転中の上体の安定を図りました。

PTは車が小さくサイドからのアクセスですが、スロープも短く駐車スペースも随分楽になりました。しかし、どんなに使いやすいクルマができても値段はそれなりに高いです。問題は福祉先進国のように、クルマの改造費の助成金が必要な人には全額出していただけるようになることが、重度の障害者がクルマを持ち社会参加させる道ではないかと思います。

改造後のPTクルーザー。サイドから車いすで乗り込めるようにした
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(あいかわひろみつ ランプ・バン代表)

◆ランプ・バン
 http://www.geocities.jp/ramp_van/
 TEL・FAX 0426―68―9166