「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年9月号
1000字提言
Let’s Play Basketball
会田孝行
漫画の「スラムダンク」、NBAの「マイケルジョーダン」。これに魅せられてバスケットボールを好きになった人は多い。かくいう私もその一人。ボールがネットに入った瞬間や、パスがうまく通った時の快感が忘れられず、下手の横好きながらも、聴覚障害をもつ仲間とのバスケのプレイを楽しんでいる。
しかし、聴覚障害者のバスケ人口は残念ながらまだ少ない。また、全国ろうあ者体育大会やミミリーグ〈聴覚障害者のバスケ大会〉での試合の様子を見ると、各チームに秀でたプレイヤーは存在するが、聴者のバスケと比較して、全般的に未熟なレベルであることは否めない。聴覚障害者のバスケチームは全国各地に点在しているが、共に汗を流すプレイヤーが増えてほしいと思う。
聴覚障害者のバスケは審判の笛が聞こえないため、旗を振るなど視覚面での工夫があるが、通常のルールと全く同じである。だから、聴覚障害者、聴者共に楽しめるスポーツでもある。現に私が所属しているチームでも地域のチームと交流を図っている。こうした交流を通じて、聴覚障害者に対する理解が広がるとうれしい。
今年はアテネオリンピックの年。どんな感動があるだろうかと楽しみだ(この原稿はオリンピック前に書いています)。オリンピックの後は、同じくアテネでパラリンピックが開催される。パラリンピックは、障害をもつ方のオリンピックとして、最近世に知られるようになった。このパラリンピックに聴覚障害者は出場していないことは皆さんご存知だろうか?聴覚障害者のためのオリンピックには「デフリンピック」があり、来年オーストラリアで開催される。バスケ部門で、日本は男女とも出場予定であり、選出された代表のメンバーは、デフリンピックに向けて、定期的に合宿を実施している。しかし、合宿やデフリンピック参加のための費用の多くは個人で負担しており、代表プレイヤーの経済的負担が大きい。そうした選手たちを支えるために、日本デフバスケットボール協会では寄付を受け付けている。また、せっかく代表に選ばれても、デフリンピックの知名度が低いため、勤務している会社の理解を得ることができずに断念する例もある。同じ日の丸を背負う立場でも、地域・企業を挙げてのサポートがあるオリンピックと違い、デフリンピックの場合、経済的にも社会的にも越えなければならないハードルが多い。
そんな環境の中で、メダル獲得をめざして日々汗を流している日本代表のバスケプレイヤーを、皆で一緒に応援しましょう。
●日本デフバスケットボール協会HP(http://jdba.jp/)
(あいだたかゆき 国立身体障害者リハビリテーションセンター)