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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年10月号

行政・学校・地域に要望し期待すること

特別支援教育への期待と要望

全国ことばを育む親の会

はじめに

中教審特別委員会の中間報告が間もなく発表される直前のため、中間報告と噛み合わない意見となる可能性もありますが、「今後の特別支援教育の在り方について(最終報告)」を基に、学級・教室での教育対象の障害のため、特別支援教室に限定した意見を述べます。

本会の基本的態度

ノーマライゼーションの具現をめざす特別支援教育に関しては、昭和39年の本会設立以来求め続けてきた内容であり、高く評価するとともに、これの実現には、全国的に支援することを申し合わせてはおりますが、そのためには、『教育水準の低下をさせない』という大前提が保証される必要があります。

つまりこれまで、特殊教育諸学校・特殊学級・通級教室での研究や教育実践によって到達した現在の教育水準や、蓄積されたノウハウを保持するにとどまらず、さらに充実・向上が約束されるべきということであり、そのためには、担当者の専門性の向上とそれを推進する行政システム、その行政を動かす力を持つ住民(親)の意識改革も必要と考えています。

親の意識改革と地域住民との協働

これまでの親や親の会は、要求することばかりで、極端な言い方をすると、子どもの教育は、学校・教師まかせの感がありました。

しかし特別支援教育では、親も重要な支援者の一員と位置付けられ、今後は、教育計画策定等には、子どもとその親の意志確認を義務付ける、欧米並みの当事者主権の考え方が徐々に主流となると考えます。

従って「わが子をこう育てたい」という明確な意志を持ち、それの実現に向けて自らも努力する親でありたいという思いから、今年6月、「言語障害児をもつ親の会」から「ことばを育む親の会」に改称したところです。

そして各単位親の会は、地域と密着し、その地域のあらゆる問題に住民とともに取り組み、相互の要求等を理解し合い、協働する関係を構築しようとしているところです。

望ましい行政の在り方

(1)専門教師の配置と機会均等の保障

教育上特別な支援を要する子どもの教育を担当する教員には、専門的な知識・技能等が要求されるのは、当然のことと考えます。

教育基本法十条二項で、行政には、教育条件の整備を義務づけており、専門教師の配置についても、各自治体の裁量にまかせるのではなく、一定の基準を設け、教育水準を維持する国の施策が必要であり、専門教師の確保には、特別支援教室に対応する障害種別の教員免許状の制度が必要と考えています。

また地方・過疎地では、都市部で計画されている、各障害ごとの専門教師の連携などは不可能で、一人の教員があらゆる障害に対応しなければならず、地域格差の拡大が心配され、これへの対策も、国の責務と考えます。

(2)地方自治体の主体性強化

現時点でも、「明確な指示がない」と言い、学校関係者の関心も薄く、何の計画案も示していない地方自治体があります。

これでは、地方教育行政に対する住民の関心を高め、特別支援教育への移行を円滑に行うことができるのかと心配になります。

国の指示通り、県の指示通りにしていれば無難という地方行政を変革するためにも、住民パワーが有効で、各地区親の会も、このような住民運動に参画する必要があります。

学校全体の理解促進が成否の鍵

現在、特殊学級在籍児の親の中には、学籍を通常の学級に移した場合、担任の理解が得られるのか。固定的な学級で生活できたからこそ通学できたのに、今後はどうなるのか等々の不安を払拭できない親が大勢います。

一方、小中学校においては、「学力テストの結果が思わしくない。そこへ平均点をさらに引き下げる障害児の受け入れなどは考えられない」という学校長の発言や、「現在の学級指導で手一杯。障害児受け入れの余地はまったくない」という通常学級担任も大勢います。

現状認識すら不確実で、新たに障害児が入り込むのではなく、今まで自分の手許に預かりながら放置していた子どもに、教育的支援をしようとしているということも理解できていない、低レベルの発言と受け止めます。

このような現状からは、特別支援教育成否の鍵は、小中学校の教職員全員の意識改革の進行によるものであり、特殊教育関係者間の議論だけでは解決できない学校教育全体の大改革であり、小中学校教職員への啓発を早急に実施しなければと、痛感しています。

(野木孝(のぎたかし) 全国ことばを育む親の会事務局長)