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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年10月号

フォーラム2004

障害者の就労支援に関する
今後の施策の方向性(省内検討会議まとめ)

関口彰

厚生労働省においては、本年2月に厚生労働審議官の下、高齢・障害者雇用対策部、職業能力開発局、障害保健福祉部の三つの部局が中心になって、部局横断的に検討を行う「障害者の就労支援に関する省内検討会議」を設置し、本年7月には『障害者の就労支援に関する今後の方向性』として取りまとめたところです(資料1)。

資料1

障害者の就労支援に関する今後の施策の方向性

障害者の就労支援に関する省内検討会議
平成16年7月9日

基本的考え方
  • 障害者基本計画(平成14年12月24日閣議決定)に基づき、障害者が地域で自立した生活を支援していくことは、厚生労働省として極めて重要な政策課題であり、この障害者の地域生活を支える重要な柱の一つが「就労支援」である。
  • 経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004(骨太方針2004)においても「障害者の雇用・就労、自立を支援するため、在宅就労や地域における就労の支援、精神障害者の雇用促進、地域生活支援のためのハード・ソフトを含めた基盤整備等の施策について法的整備を含め充実強化を図る」とされたところである。
  • 今後、これらの方針に基づき、福祉施設の体系の見直しや就労支援施策の充実強化を図ることにより、障害者が働く意欲と能力を高められるように支援するとともに、その意欲と能力に応じて働けるようにしていくことが重要である。
  • このため、福祉部門と雇用部門の連続性を確保し、福祉部門から一般就労への移行を円滑に行えるようにするとともに、障害者が自らの職業生活を設計・選択し、キャリア形成を図ることを支援する。
  • このように、障害者が意欲と能力に応じて働けるという観点に立って、授産施設等の福祉施設の体系を、その果たしている機能に着目して見直し、1.一般就労に向けた支援を行う類型、2.就労が困難な者が日中活動を行う類型、3.企業での雇用が困難な者が一定の支援のもとで就労する類型の3類型とする。
  • また、精神障害者に対する雇用率適用、在宅就業の支援、地域における就労の支援など、多様な働く場を確保するための施策の充実・強化を図るとともに、労働市場におけるミスマッチ解消、就職後のフォローアップ等による就労の安定・継続等の施策を強化するほか、離職した場合の再挑戦を可能とする施策の充実を図る。
  • 以上について、法的整備を含めその充実強化を図る。

この施策の方向性では、障害者の就労を進めていくため、福祉部門、雇用部門、さらには福祉と雇用の連携や連続性の確保も含め、広く施策の充実・強化等を図ることを掲げていますが、このうち授産施設等の施設体系の見直しを中心に説明します。

1 授産施設等の体系の見直し

現在の障害者の就労に関する福祉施設を、その機能に着目して、三つの類型に再編し、障害者自身のニーズや就労能力に応じて、それにふさわしい機能の施設を利用できる仕組みとすることとしています(資料2、3)。

資料2
図 新たな障害者の就労支援策の流れ

資料3
図 福祉部門から一般就労への移行支援施策の確立

なお、施設体系の見直しについては、準備期間等を考慮し、見直し着手後、おおむね5年程度を掛けて段階的に行うこととしています。

三つの類型の基本的な考え方は以下のとおりです。

(1)就労移行支援タイプの施設

三つの類型の一つは、障害者本人の意欲や能力に応じて、一般就労への移行を支援する形です(訓練の場)。

一般就労に向けて必要な知識、能力を育むための支援を行うとともに、就職に結びつけるための支援を行い、一般就労に送り出した後も送り出した施設が継続して支援(就労した障害者はもちろんのこと、職場の同僚や雇用主などに対しても)し、また、就労面の支援のみでなく、生活面の支援についても併せて行うことを考えています。

また、一般就労に踏み出せない理由の一つとして、いったん就職すると、もし離職した場合に支援を受ける場や機会がないため不安であるという話があります。離職した場合は戻って、再度訓練をして一般就労に行く、もしくは、後述する継続的な就労の場に行くこともあるかもしれません。このような、離職した障害者が「就労移行支援タイプ」の施設に戻り、一般就労に向けて再挑戦ができる仕掛け、循環できるシステムをつくることとしています。

以上のような仕組みにより、障害者が安心して働くことができ、また、企業側も安心して雇用できるようにするとともに、離職した場合に再挑戦を可能とする仕組みを考えています。

(2)日中活動の場(デイアクティビティタイプ)

二つ目としては、障害者の状態や職業能力からみて、就労がどうしても困難な重度の障害者が日中活動を行う場という形です(日中活動の場)。

複数の標準的なプログラムを作成して日中活動を行うことにより、障害者自身をエンパワメントする仕組みとすることとしています。

(3)継続的就労タイプの施設

三つ目としては、継続的な就労の場という形です(働く場)。

就労能力を有していても、一般企業での就労は、どうしても難しいという方はいらっしゃいます。そういう方が継続的に就労できるよう、現行の福祉工場より人員基準等の規制を緩和し、継続的就労タイプの施設の新規設立を促進することや、授産施設・小規模作業所等から移行しやすくすることにより、障害のある人の働く場の拡大を図ることとしています。利用者は、公共職業安定所の職業紹介によるなど、公共職業安定所との連携を図ることを基本に検討することとしています。

この施設体系の見直しについては、平成15、16年度の2か年にわたり、厚生労働科学研究においても、その在り方について検討をお願いしているところです。

2 自由民主党障害者福祉施策勉強会

自由民主党においても、本年4月に八代英太衆議院議員を中心に勉強会が設置され、就労の問題について7回開催し、6月に「障害者の自立と共生の地域社会を目指して~障害者の就労元年宣言~」が提言としてまとめられました。

この提言では、「福祉部門と一般就労の間の流動性を高め、離職した者が何度でも一般就労に再チャレンジできるようにするとともに、高齢化した場合等は、福祉部門で受け入れられるようにする」などが当面の具体策として盛り込まれています。

3 有識者懇話会の設置

本年8月には、福祉側と企業側の相互理解を深めるとともに、両者が協調して進めることのできる就労支援のための福祉施策の在り方について意見交換を行うため、谷畑厚生労働副大臣の下に、「障害者の就労支援に関する有識者懇話会」を設けたところです。

堀田力氏(さわやか福祉財団理事長)を座長として、意見交換をすすめ、9月中に取りまとめを行うことにしています。

4 今後について

社会保障審議会障害者部会へ諮り、意見を伺ったうえで、関係法の改正につなげるとともに、所要の見直しや施策の充実・強化を図ることとしています。

(せきぐちあきら 厚生労働省社会・援護局障害保健福祉部障害福祉課)