音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年10月号

列島縦断ネットワーキング

千葉 千葉県地域福祉支援計画
「新たな地域福祉像」の実現のために

渡辺明子

千葉県では、一昨年から「健康福祉千葉方式」を推進し、本年4月、「千葉県地域福祉支援計画(福祉力!計画)」を策定しました。

「福祉力」と書いて「ちから」と読みます。なぜかというと、人はだれでも自分以外の家族や近所の人々、地域の人々、そしてみんなのために何かしたいという気持ちと行動力を潜在的に持っているからです。このような気持ち、つながり、力を総称して、「福祉力(ちから)」と呼び、計画の名称に加えました。

「健康福祉千葉方式」には、二つの特徴があります。まず第一に、子ども、障害者、高齢者等の対象者を横断的に捉えた施策展開を図ることです。福祉サービスを必要とする人の中には、児童や介護保険制度の対象となる高齢者、支援費制度の対象となる障害者がいる一方で、それらの公的制度の対象とならない人々もいます。だれもが地域で生活を続けることを可能にするためには、自分が本来の利用者として対象となっている制度のみならず、地域に存在するあらゆるサービスを利用できるようにし、一人ひとりの状況に応じた「オーダーメイド福祉」を実現する必要があります。そのためには、対象者を横断的に捉えた施策体系の構築が必要だからです。

第二の特徴は、当事者を含めた民間と行政の協働による施策展開を図ることです。行政が案をつくり、民間の意見を聞いたうえで、行政が決定するという従来型ではなく、民間と行政の役割を逆転し、白紙の状態から、県民一人ひとりが地域における実情と経験を踏まえ、自らの生活をより良く変えていくための具体的提案と議論を行うというものです。

この「健康福祉千葉方式」の手法を用いて策定した「千葉県地域福祉支援計画」には、各地域でのタウンミーティングの開催等を通じて参加した約1万人の県民のさまざまな発言が盛り込まれました。計画内容の検討を行ったタウンミーティングは、各地域の方々がその企画運営を自ら行い、開催されました。その開催を通して県民の機運が盛り上がり、「千葉が変わること」への期待が高まっています。

「千葉県地域福祉支援計画」の中では、「新たな地域福祉像」が示されました。これは1.だれもが、2.ありのままに・その人らしく、3.地域で暮らすことができる、という内容です。しかし、理想を計画にしたものの、よく「絵に描いた餅」とか「計画倒れ」といった話を聞きます。地域福祉と地域社会の変革に向けて、県民が具体的実感を得られる取り組みを行うことがこれからは重要です。

そこで、今年度は、「新たな地域福祉像」の実現のために優先度の高い具体的な10の実践(優先課題)を定め、民間の方々と協働して進めていくこととしました。これらの優先課題を総合して、プロジェクト・ブレーメンと呼んでいます。

プロジェクト・ブレーメンでは、まず最初に生活の場の確保、次に生活に必要なサービスの創出と地域再生、そして困ったときの地域生活支援・相談・権利擁護等の課題について、民間の方々と協働して進めていくため、計六つの作業部会等を組織しました。すでに7月に委員を公募・決定し、8月下旬には第1回合同会議を開催し、障害者計画関係の三つの部会と合わせて約2百人の委員が一堂に会しました。今後は部会ごとに半年から1年程度検討を行い、方針施策決定を行っていく予定です。

第2回作業部会・研究会の検討事項は、次のとおりです。

○様々な方がつどう住まいの場(ブレーメンのお家)研究会(10月8日)

○「あなたに合わせた支援」を星の数ほど研究会(9月22日)

パーソナル・アシスタンス事業の実例報告を行うとともに、1.サービスを必要とするすべての人が365日、24時間利用できるサービス提供事業所を創出すること、2.事業所の普及を支援する組織体を作ること、という方向性が示されました。

○「明日の地域福祉を創る」人材育成作業部会(9月22日)

1.中核地域生活支援センターの地域総合コーディネーター集中特訓プログラムの開発、2.人材育成の総点検、3.メリット付与研修事業を議論の中心とし、当面はコーディネーター集中特訓プログラムの開発を最優先課題として検討することになりました。

○「誰でもわかる」福祉サービス評価システム作業部会(9月15日)

国は各サービスごとに評価システムを示していますが、県では全サービス共通の評価システム(制度ごとのオプションはありえる)を作っていこうという方向性が示されました。

○「誰にもやさしい」まちづくり研究会(9月21日)

新たな地域社会の構築に向けた地域福祉のソフト面と道路、住宅、公園、公共施設等ハード面を融合させた新しい地域社会づくりへ検討を進めていくことになりました。

○「新たな地域福祉像」実現のための事業と財源のあり方研究会(9月15日)

公的財源と民間財源の両方を検討することとし、当面は地域福祉のための県の補助金や関連基金の活用について新しい観点から見直していくことで合意が得られました。

現在、プロジェクト・ブレーメンの六つの作業部会では、視野を地域社会全体に広げ、見据えるべきだという動きが生まれてきています。「新しい地域社会」とは、小学校区や中学校区といった比較的小さい地域の中に、住まいの場、サービスの場、交流の場、就労の場、生きがいの場等が小規模で数多く分散して存在する社会です。そして子ども、若者、夫婦、単身者、高齢者、障害者等だれでも自らの希望する地域で、みんなが協力しあいながら生活できる社会です。地域住民一人ひとりが夢と希望を持ち、社会全体が活力にあふれた社会です。地域住民が自らの地域社会を創っていく主役となる社会です。

今、千葉県では、県民一人ひとりが福祉を良くしていこうという地域の「うねり」が生まれています。これからは実行の時です。この「うねり」を大切に、自らの生活が変わるといった実感、千葉に住む幸せと誇りを得ることができる「新しい地域社会」づくり、日本社会の輝く灯台となる「新しい地域社会」づくりを県民と行政が一体となって進めていきたいと考えています。

(わたなべあきこ 千葉県健康福祉指導課)

(注)「プロジェクト・ブレーメン」とは、ロバ、イヌ、ネコ、オンドリが、それぞれ自分たちの特徴を活かして、協力しながら泥棒を退治し、楽しい音楽を奏でながら仲良く1つの家で暮らしたというグリム童話の「ブレーメンの音楽隊」からヒントを得たものです。

●千葉県地域福祉支援計画
http://www.pref.chiba.jp/syozoku/c_kenfuku/keikaku/sienkeikaku1.html

●プロジェクト・ブレーメン
http://www.pref.chiba.jp/syozoku/c_syafuku/kenkyu/0722chougi.html

●プロジェクト・ブレーメン作業部会・研究会日程について
http://www.pref.chiba.jp/syozoku/c_syafuku/kenkyu/nittei.html


Project Bremen

「新たな地域福祉像」の実現に向けた10の実践(プロジェクト・ブレーメン)

○第1の実践 ‥地域生活(住まいの場)の確保
○第2の実践 ‥地域生活に必要なサービスの創出
○第3の実践 ‥逆転の発想による就業の場の確保と地域再生
○第4の実践 ‥困ったときの地域生活支援・相談・権利擁護体制の確立
○第5の実践 ‥地域生活に携わる人材の育成システムの抜本的見直しと開発
○第6の実践 ‥地域生活に必要なサービスの評価システムの抜本的再構築
○第7の実践 ‥地域生活が可能なまちづくりの推進
○第8の実践 ‥地域生活支援の事業と財源のあり方の検討と再構築
○第9の実践 ‥先駆的・モデル的市町村との協働
○第10の実践 ‥地域生活づくり宣言

(例示)

第1の実践 ‥地域生活(住まいの場)の確保

公的費用と自己負担を組み合わせ、利用者の希望に応じ、支援の要否にかかわらず、多世代・多分野の方々が生活できる21世紀における新たな地域生活の場「ブレーメンのお家」の開発について、民間と行政が協働で取り組みます。
→様々な方がつどう住まいの場(ブレーメンのお家)研究会

第2の実践 ‥地域生活に必要なサービスの創出

第3の実践 ‥逆転の発想による就業の場の確保と地域再生

介護保険制度や支援費制度等の既存の公的サービスのすきまや不足分に対応する有償サービスの全県的展開(県内800~1000事業所を目標)を図ります。その際、これらの地域に必要なサービス(有償)事業を障害者や高齢者、若者が起業(ベンチャー)することを支援し、地域生活ニーズへの対応が、同時に就業の場の確保と地域再生につながるといった「逆転の発想」によるシステムづくりを進めます。
→「あなたに合わせた支援」を星の数ほど研究会

(注)「星の数ほど」とは、「あなたに合わせた支援」(パーソナル・アシスタンス)を実施する事業体を千葉県内の小域福祉圏(小学校区又は中学校区)ごとに、星の数ほど展開していきたいという願いを込めて使っているものです。

第4の実践 ‥困ったときの地域生活支援・相談・権利擁護体制の確立

1.地域においてサービスを提供する者と必要とする者のコーディネート、2.地域生活を進めていく上での相談、3.問題があった場合等に対応する権利擁護の3つの機能を担う中核地域生活支援センターについて、平成16年度中に県内14箇所の展開を図ります。


六つの作業部会・研究会

  • 様々な方がつどう住まいの場(ブレーメンのお家)研究会(第1の実践)
  • 「あなたに合わせた支援」を星の数ほど研究会(第2・第3の実践)
  • 「明日の地域福祉を創る」人材育成作業部会(第5の実践)
  • 「誰でもわかる」福祉サービス評価システム作業部会(第6の実践)
  • 「誰にもやさしい」まちづくり研究会(第7の実践)
  • 「新たな地域福祉像」実現のための事業と財源のあり方研究会(第8の実践)