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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年11月号

提言

医療と福祉を各々の視点から拡充すべき

全国精神障害者家族会連合会

■はじめに

平成11年の法改正では、本会は保護者制度の全廃、医療と福祉を分けた法体系の確立、当事者の権利擁護に立った条文化などを柱に提言をしました。今回も、前回と同様の視点となってしまいますが、精神障害者の人格と個性を尊重する視点を重視して提言をします。

■福祉サービスの充実を!

前回の法改正で、市町村が一部サービスの主体となりましたが、現行法のままでは精神障害者に対するサービスが、他の障害者や高齢者に比べて較差が変わらないことは明らかです。そこで、福祉サービスが充実することを期して、次の5点を提言します。

  1. 精神保健福祉相談員を市町村にも配置する。
  2. 相談指導等全般を市町村にも広げ、訪問指導が積極的にできるようにする。
  3. 市町村が医療施設の適切な利用についても助言ができるようにする。
  4. ケアマネジメント体制を確立する。
  5. 障害者本人および家族による相談援助事業を制度化する。

■精神障害者の権利を保護する

(新)障害者基本法の理念に基づき、本法を「精神障害者を主体とした」条項に書き換えるとともに、その権利を確保増進するために次の4点を提言します。

  1. 精神障害者の差別禁止条項を盛り込む。
  2. 「任意入院者は開放病棟で処遇する」原則を明文化する。
  3. 精神科医療機関の情報公開原則を規定する。
  4. 精神障害者の権利擁護機関を設置する。

■医療・保健制度の拡充を!

1.精神科救急体制を整備する。

現行法では移送制度の規定がありますが、本会が廃止を求めている医療保護入院制度が前提となっており、その制度も実際のニーズに応じて機能しているとは言えません。救急時の医療機関への搬送が、主に家族の責任・負担となっている現状があり、国の責任による救急体制のシステム構築が急務です。

2.訪問看護や往診等の訪問型医療を推進し、その対象に引きこもりの状態が持続する精神障害者を含める。

「引きこもりの状態が続き、通院医療の継続が困難な精神障害者」や「特に社会適応に重度な障害を有するために、適切な通院医療が困難な精神障害者」に対する訪問型医療が必要です。また、32条は「通院医療及び訪問型医療」と拡充する必要があります。

■保護者制度の撤廃を!

1.保護者制度(規定)を完全撤廃する。

保護者制度が「すべての精神障害者に」、「無期限に」保護者を必要と規定していることは、明らかに精神障害者の尊厳に対する差別であるとして、前回の法改正時に完全撤廃を求めました。しかし、結果的には保護者の義務の一部が除外されただけで、依然として保護者制度は精神障害者の一生を通じて必要とされ、高齢化する保護者に精神的・経済的に過度の負担を強いています。

また、この制度が精神障害者の自立と社会参加をさらに遅らせており、世界と時代の流れに逆行することは明らかであり、改めて完全撤廃を求めます。

2.入院制度を見直し、受診援護の制度を設ける。

精神疾患が疑われるが、本人には病感・病識がなく、受診・受療・服薬等を拒否する状態になる場合があります。「早期治療・回復」が原則であるにもかかわらず、受診拒否をする人を治療に結びつけるための制度は現存しません。保護者制度(規定)の撤廃を機に、医療への結びつきが困難なケースについて、必ずしも入院を前提としない「受診の導入」制度と、入院治療が必要と判断される場合の「医療導入入院」制度の実現を提言します。

■法令上の疾患名を「統合失調症」とする

平成14年に、日本精神神経学会において「精神分裂病」を「統合失調症」に変更することが決定し、現在ではこの病名が各方面においても十分浸透するに至りました。厚生労働省においても、同年に都道府県等に「統合失調症」のみなし使用を認める通知が出されました。しかし、準拠する法律上の表現変更はいまだに実施されておらず、本会では今回の法改正において、必ずや病名変更が反映されることを、改めて提言します。

■おわりに

現在、障害種別等を越えた包括的な福祉法の実現が各地で叫ばれていますが、本会では、特に遅れている精神障害者施策のサービス水準向上をまずはめざし、今後も各方面に働きかけを行ってまいります。

(田所裕二(たどころゆうじ) 財団法人全国精神障害者家族会連合会事務局長補佐)