「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年12月号
当事者からの意見
てんかんの立場から
当面する改善と将来の課題
下川悦治
1995年の精神保健福祉法改正時に導入された、てんかんを含む精神障害者の手帳制度には、いくつかの問題を含んでいる。
(1)医師の診断書に左右される
診断書を提出することで判定されるが、医師によりかなりバラツキがあり、当事者に不満がある。
(2)2年ごとの更新
症状が変化するということで、有期認定(障害年金も)とされているが、症状が改善されたからすぐに生活上のハンディキャップがなくなるわけではない。当面、5年単位にすべきである。
(3)知的障害が判定内容に含まれている
手帳の対象に知的障害を含まないとしながら「ひんぱんに繰り返す発作又は知能障害その他の精神神経症状」としている。
(4)療育手帳では重複障害としての認定を
支援費制度導入時に、てんかんを合併症でなく、重複障害として認めるように要望し、重複障害としての文書が出されている。支援費制度導入時にてんかんを重複していると契約してもらえないという不安が広まるなど、てんかんを重複している人の困難さについても判定基準として確立すべきである。
(5)雇用推進のために等級増が不可欠
雇用率適用に際しては手帳所持者を対象にする予定である。現行では手帳対象とならない、軽度のてんかんを含む精神障害者が私の作業所にもいるが、雇用を最も期待される人が排除されるという矛盾が出てくる。
以上に述べたように、手帳制度そのものにさまざまな問題がある。てんかんそのものが精神保健福祉行政に含まれていることが、今は問題ではないと考えている。「谷間の障害者」を作り出す障害種別の福祉法そのものが問題である。障害種別・等級でなく、必要なサービスを提供する仕組みに転換すべきと考える。
(しもかわえつじ 社団法人日本てんかん協会副会長)