音声ブラウザご使用の方向け: ナビメニューを飛ばして本文へ ナビメニューへ

「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年12月号

当事者からの意見

自閉症児者の立場から
自閉症児者の立場から

石井哲夫

今日、自閉症という障害は、発達障害の認知を進めてきた意味で、折りにふれて社会の注目を惹くようになってきている。それは従来の身体障害、知的障害、精神障害の三障害による分類によって進められてきた教育、福祉等の政策、制度においては、自閉症児者はそのいずれの障害概念にも十分に適用されにくく、しかも外部から見て分かりにくい障害であることから、社会生活において極めて不利な状況に置かれているものであったからと言えよう。自閉症児者が、脳機能の障害からもたらされる人間関係の言葉や情緒等に関わる交流(コミュニケーション)の心理機能的障害、そして社会生活において常識的なものの見方、感じ方ができにくいという社会機能的障害、さらには、周辺の一体への迷惑や嫌悪感や不快感を招くこの障害を正しく好意的に理解され、対処されていないという状況におかれているのである。

このような自閉症児者を判定する機関としての児童相談所、知的障害者更生相談所において、知能テストを中心とした判定では不十分と言えよう。

現状では、自閉症児者に個別的な配慮がされてきているものの、制度として依拠される考え方が明確でないために、自閉症児者の障害の重さを判定、診断できなかったのである。従って知的障害児者を中心とした療育手帳の判定は、療育上の判断がむずかしく、全体として日常生活能力の客観的な判定を受けられず、逆に記憶力、構成力、順序性、知識などで知能測定上の得点を得ていることによって、療育手帳や障害者年金がもらえないという状況をもたらしてしまい、このことは障害者の中でも致命的な差別を受けていることになると考えられるのである。

また支援費制度における審査にしても、自閉症の人たちが不利になる点は、たとえば知的障害者更生施設(入所)の障害程度区分判定チェックを参照すると、行動障害関係が次のセからチの4項目である。

セ.強いこだわり、多動、パニック等の不安定な行動への対応
ソ.睡眠障害並びに食事及び排せつに係わる不適応行動への対応
タ.自傷並びに他人及び物に対する粗暴な行為への対応
チ.自閉症等による対人関係に関する問題への対応

この4項目のみで、行動障害の多様な困難な状態像が捉えられるものではなく、ましてや、その厳しい行動障害の一つ評価のウエイトが他のADL項目と同様のウエイトで扱われている。これは過小評価されていると言わざるを得ない。行動障害とADLを比較すれば行動障害は常時の監護や介護が必要であり、ADLは場面ごとの支援となる。

最後に、現状では、審査、認定する市町村職員の自閉症についての知識が乏しいことを痛感するので、本人たちとよく接しているものの意見を聞いたうえで障害認定を適切に行うよう要望しておきたい。

(いしいてつお 日本自閉症協会会長)