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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年12月号

列島縦断ネットワーキング

北海道 「地域生活北海道フォーラム2004」―障害をもつ人の新しい働き方

香西和則

はじめに

さる9月11日(土)、地域生活北海道フォーラム実行委員会主催による障害者の就労促進のための研修事業会「地域生活北海道フォーラム2004」を釧路市生涯学習センターで実施いたしました。

このフォーラムは釧路市内の障害をもつ人と家族、ボランティアが実行委員となり、昨年に続き2回目の開催になります。当日は、関係者をはじめ市内で企業を経営されている方や市民の方など約100人の参加があり、活発な質問や意見が出されました。

多くの障害をもつ人々は、授産施設や小規模作業所などでの福祉的就労を望んではいません。就労意欲に満ちた多くの障害をもつ人々はやむをえず授産施設や小規模作業所などで働かざるを得ない状況か、在宅で無為な時間を過ごしている人が多いのが現状ではないでしょうか。障害をもつ人は普通の社会の中で、普通の会社で、障害のない人と一緒に働くことを望んでいます。このささやかな願いを叶えるためにも、障害者雇用を考える機会をつくることが必要と考え、このフォーラムを企画しました。

釧路市の雇用状況

北海道では、特に釧路・根室を中心とする道東地域は、長引く経済不況と基幹産業である太平洋炭坑の閉山、製紙工場の縮小、乳価および漁価の低迷に悩んでいます。それに伴い、特に障害をもつ人の雇用状況は悪化を極めています。釧路管内における民間企業の障害者の雇用状況は、障害者法定雇用率1.8%が適用される民間企業の雇用状況をみると、障害者を1人以上雇用すべき企業(常用労働者56人以上の企業)84社において、雇用されている障害者は148人で、実雇用率は1.49%となり、昨年度(平成14年度)を0.13ポイント下回り、法定雇用率でも0.31ポイント下回っています(「釧路職業安定所」資料より)。

フォーラムの内容

基調講演には、富田正志氏(日本経済団体連合会障害者雇用相談室障害者雇用アドバイザー)に御来釧いただき、「企業から見た障がい者雇用」と題して、企業サイドから見た障害者雇用の意義および社会的役割、企業が障害者雇用を進めるにあたってのポイントなどをお話いただきました。続いて、地元釧路市内でホテルを経営されている佐藤富士子氏(株式会社千友館代表取締役)がご自身の経験から事例報告を行いました。パネルディスカッションでは、佐竹直子氏(ボランティアネットワーク・チャレンジ隊代表)に司会をお願いし、パネラーに富田正志氏、佐藤富士子氏、波多野耕氏(地域生活支援ネットワークサロン理事)、筆者の4人で「障害者雇用を促進するためのヒント」をテーマに討議しました。

以下、簡単に要旨を報告します。

【基調講演】
「企業から見た障がい者雇用―障がいってマイナスなのか?」

富田氏は機械メーカーに勤めていた経験を元に、ユーモアを交えながら障がい者雇用の意義についてお話いただきました。

近年、説明責任、安全性など企業に求める社会の目が厳しくなり、障害者雇用も同様に企業の社会的責任として評価の対象となってきている。障害をもつ人自身も施設や作業所などでの福祉的就労ではなく、一般就労を望んでいるのではないか。「障害者の雇用の促進等に関する法律」が改正されてきているが、現実には大企業の73%は法定雇用率が未達成であり、株主代表訴訟や未達成企業の社名公開などの対象となっている。厚生労働省からの指導監督による受け身の雇用状況対策から能動的雇用促進展開へ意識を変えるべき時代である。教師も親も養護学校卒業間際になって就職を考えるのではなく、日頃から家でお手伝いをさせるなどして、仕事とは何かを教えるべきであり、また養護学校では多くの職場実習をさせ、職業に対するイメージや仕事に対する挑戦や意欲を育てるべきである。最後は「with out them/for them/to them/with them/we」という象徴的言葉で締めくくられた。

一人でも多くの障害をもつ人が働ける社会を実現するために、私たちは何をすべきかを考えさせられる講演でした。

【事例報告】
「企業の戦力として」

当ホテルに釧路市内の福祉施設から、はなちゃん(仮名)が職員と一緒にわが社に来たのは6年前のことである。無口でこちらの質問には一切答えなかったことが印象に残っている。この時、私の胸中に「この人を一人前の職業人に育てよう」という気持ちが芽生えた。先輩職員のMさんに預け、つきっきりで仕事を教えてもらい、現在では庭の掃除、洗濯、洗い物などを元気にこなしている。障害のない人より時間はかかるが、一人前に育てようとする気持ちさえあれば、企業の戦力に育ってくれる。障害をもつ人の努力も必要だが、それにもまして企業の熱意も大事である。一人でも多くの障害をもつ人が活躍できることを願っている。

【パネルディスカッション】
「障害者雇用を促進するためのヒント」

まず筆者が「雇用を促進するためには、企業と行政の協力が必要である。そのためには熊本県や宮城県などで実施されている「障害者雇用優良企業優先入札制度」の導入を考えたい」と発言したのに続いて、波多野氏より「特別養護老人ホームでの清掃業務、法人内の給食センターでの実習などを組み合わせ、一人でも多くの一般就労をめざしている。また、途中で辞めても戻る場所があると安心して就労できる体制がのぞまれる」との意見がだされました。富田氏からは「特定子会社制度を利用することで、障害をもつ人も誇りをもち仕事ができるのではないか」と提言がありました。フロアからは「養護学校の先生は子どもの卒業後の進路で授産施設か小規模作業所への入所を就労と考えているようであるが、間違いではないか」という障害児をもつ母親の意見がありました。また、企業の人からは「危険な機械などがあり、指示の難しさを感じる」など、活発な意見交換がありました。

おわりに

次期「障害者の雇用に促進等に関する法律」の改正(平成19年)では、精神障害者の法定雇用の算定が検討されています。一人でも多くの障害をもつ人の社会参加を促し、所得を保障するために、就労の機会を求める息の長い運動を続けなければならないと考えています。

(こうざいかずのり 釧路在宅障害者の会代表)