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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2004年12月号

列島縦断ネットワーキング

京都 京都の観光ガイドは「手話メイト」(仮称)にお任せ!

坂井田美代子

手話メイト(仮称)の立ち上げ

先日、ちょっとした会議が開かれました。

集まったのは、地域の情報バリアフリーを担うひとづくりのための手話学習「基礎課程」修了者の代表、全国から訪れる手話・聴覚障害者を手話でガイドすることをめざすための手話ガイド養成修了者の代表、そして全国手話研修センターを勝手に応援するぞという趣旨で結成された「全国手話研修センター 勝手に応援団」の代表、そして研修センター担当職員の四者です。研修センターの応援部隊「手話メイト」(仮称)の立ち上げのための会議です。

基礎課程で学ぶ人たちは、商店街やセンター近隣の嵯峨・嵐山・広沢地区に在住または在勤の人たちです。開催案内時に社会福祉協議会にお願いし、回覧板で一軒一軒もれなくお知らせをしました。

研修センター訪問者のために

この地域は観光の名所、電車が着くたびに人がどっと流れ出してきます。特に観光シーズンには大勢の観光客が訪れます。もちろんその中には手話研修に、バリアフリー施設の見学に、そして観光にとセンターを訪れる聴覚障害・手話関係者も含まれています。

研修センターを訪れる人たちは、この4月から10月で関係者8000人(総数7万5000人)を超えています。そんな人たちに気持ちよく、コミュニケーションの不自由なく、ひとときを嵯峨嵐山でゆったりと過ごしてほしい、会話を楽しみながらおみやげも買えるとよい、分からないことを気軽に尋ねることができればよい、観光スポットの説明も分かれば楽しい。だったら嵯峨嵐山をコミュニケーションに困らないまち、だれにもやさしいまち、全国のモデルになるような情報バリアフリーが整ったまちにしていけばよい、そんなことを願って、まちの中にコミュニケーションの手助けをしてくれる人たちを増やすために、手話講座を開催しました。

講座で学んだ人たちは聞こえない人たちとふれあう中で、センターのロビーで、全国から来る聞こえない人とぎこちない手話であいさつをするだけでも、ホッとしてくれるのではないか、センターに来てよかったと思ってくれるのではないか、季節ごとの観光スポットを教えてあげることはどうか等々、積極的に、具体的に自分にできるなにかを探し始めていました。

研修センターでは全国の方たちに、学んで・食べて・観光していただくために、「ゆとりと潤いのある研修と・おいしい食事と美しい環境」を提供しています。研修を終え、参加者は地図を頼りに嵯峨野のまちに出て行かれます。そんな様子から、手話で観光案内ができたら楽しいだろう、せっかく京都に来たのだから京都の手話も覚えたい、そんな声も聞かれました。

手話ガイド養成講座

出された意見はすぐ実行に!(これがセンターの良さでもあるのですが)研修の後に「手話で観光ガイド」の企画を試みてみました。案内役は地元の聞こえない人たちです。これが聞こえない人たちにも、手話を学ぶ人たちにも大好評でした。

そんなことがきっかけで、手話ガイドを養成し、訪れる人たちにもっと楽しんでもらうことにしたのです。参加者の半数は基礎講座を修了した人たちでした。受講者39名のうち聞こえない方は7名でした。

手話ガイド養成講座は、9月~10月にかけて8回(うち現場実習を2回)行いました。観光ガイド経験者から観光ガイドの基礎知識や心得、嵯峨・嵐山・広沢地区の歴史や史跡を学びました。地域の聞こえない講師からは嵯峨・嵐山・広沢地区の行事・寺社及び地域の手話を学びました。基本的な学習の次は、実地研修のための観光コースの作成です。そして実地での案内の練習です。研修をさせていただく神社・寺院は趣旨を理解し、快く協力をしてくださいました。受講者に表現できないところや難しい固有名詞などは文字で表すなどの工夫をしました。

手話ガイド養成講座は無事終わりましたが、受講生からは、「全国各地から、嵯峨嵐山を訪れるみなさんを、きちんとご案内できるのだろうか」と不安な気持ちを抱えながらも、もっと京都を知らなくては、手話ももっともっと勉強しなくては、時間別ガイドコースを作らなくては、案内のマニュアルも必要ね、寺社・地域の手話表現も統一しなくては、勉強しなくては、等々、これからの活動に希望も募らせています。

手話ガイド養成講座で作成したグループのガイド作成コース
図

期待される活動をめざして

12月には早速、手話ガイドの要請がありました。活動の方法等まだ何も決まっていませんが、とりあえずチャレンジです。どんなことを期待されているのか、打ち合わせを十分にすることにしました。一つひとつの積み上げや経験が、具体的な活動内容を作り上げていくことに、またこれが全国のみなさんの期待に答えていくものになっていくことでしょう。

手話メイトは、それぞれの講座で学んだことや一人ひとりが持っている知識や技術、手話のレベルなどを活かし、研修センターを応援していく組織です。バリアフリー施設の案内、観光地の案内、手話祭りやセミナーの実行委員や要員、修学旅行生の手話体験学習の手話指導、地域への手話・聴覚障害者の啓発、観光客へのコミュニケーションの手助けなど、それぞれの条件や力を活かして、いろんなことができる、いろんなことをしたい、そんな組織作りをめざしています。詳細はこれからです。「手話で観光ガイドをします」と、看板を上げるには、申し込み方法・派遣・費用・事故対策等々、ルールを作っていくことが必要です。そして当面は、全国からの要望に答えながら、みんながやりたいこと、研修センターとしてやってほしいことをすりあわせ、内容を詰めていくことにしました。

この取り組みの中で、確実に人が育ち、地域が育ってきたように思います。

(さかいだみよこ 全国手話研修センター)