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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年2月号

民間からの評価

だれが描くのか? グランドデザイン

李国本修慈

「今後の障害保健福祉施策について(改革のグランドデザイン案)」、その内容が明らかになっていく中で、この「デザイン」は、「一体だれが描いていくのか」といった思いが日々増していくところである。

三障害の一元化、財源の義務的経費化など、評価できる点はあるのだが、定率という名の応益負担や、移動支援の事業化など、障害が重い、支援度が高いと言われる方々の地域生活の実現は、現状から後退するものではないかと危惧するところである。

我々は主に重度重複障害児・者といわれる方々への生活支援活動を行ってきたのだが、支援者の視点から、彼ら(医療的ケアを要する方々)の生活を支援するには、その社会資源の多様化の促進に加え、人材(支援者)育成を進めるシステムづくりも欠かせないものである。

今回このグランドデザイン案に関しては、「給付の抑制」・「自己負担の徴収」が、その目的と思われる「安定した財源確保(もしくは担保)」の手段になっているように思える。

そして、いまだ明らかになっていない、重要な部分である(はずの)居宅支援サービスの単価は、十分な考察をもって決定されることを望むところである。

たとえば、地域に暮らす「気管切開」「吸引」「経管栄養」「人工呼吸器」等の生活援助(医療的ケア)を要する方々にとって、現行の支援費制度が掲げる「対等」かつ「利用者主体」に基づいたサービス選択を考える際、多くの方々が法律・制度の壁、そして人材の壁に直面してしまうといった実態がある。

具体的には、「医師法」等による前記支援サービスの提供が困難となっている実情、我々のように訪問看護ステーションと一体化したサービス提供を行ううえにおいても、その「人材養成(育成)」には、多大な労力(研修及び障害故の個別性=特異性等との親和性確保にかかる時間及び費用)を要するものである。

こういった事例は、何も医療的ケアを要する方々のみでなく、自閉症や行動障害と言われる方々及びそういった方々を支援している事業者にとっても当てはまることである。

明らかに拙速な政策決定過程に対し、当事者への説明も十分ではなく、さらにそれを支える支援者の意見も活かされないというような障害者自立支援給付法(仮称)では、それが目的とする「安心して暮らすことのできる地域社会の実現」は困難極まりないという他はない。

(りくにもとしゅうじ NPO法人地域生活を考えよーかい)