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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年2月号

ワールドナウ

障害分野でのスマトラ沖大地震に関する情報

中西由起子

年末の休暇を控えた穏やかな日本を想像だにしなかった大規模なアジアの津波のニュースが襲った。阪神・淡路大震災を思い出した。障害者は助かったのか。だれに問い合わせても、DPIアジア太平洋事務局からメールを出しても、当初は何も分からなかった。

今年になってようやくいろいろなところから、ポツポツと情報が届くようになった。とりあえずこれを執筆している1月中旬までの段階での国別の状況をまとめてみる。

スリランカ―障害に関する情報がいち早く入ったのがスリランカからであった。

【1月1日/AP通信】ゴール市の障害者施設サンボディでは建物の半分以上が流され、収容されていた102人の聴覚・視覚障害児、高齢障害者のうち41人のみが生存。

【3日/障害団体共同戦線】コロンボでの行事に参加途中のタンガラ盲聾学校のバスが被災し、障害児12人と教師2人が亡くなった。サビヤ財団が運営する学習障害児の施設3か所は無事であったが、子どもたちに食事を提供してくれた篤志家が被災した結果、給食の提供ができなくなった。救援団体は直接被害に会った人のみを対象としている。

【3日/ペラデニヤ大学ウィラコディ教授】クリスマス会に向かったタンガラ盲聾学校のバスには20人が乗っていたが、視覚障害児12人、教師1人、助手1人が亡くなった。スリランカ盲人協議会が把握した被害を受けた障害者個々人を対象とした募金活動への協力を依頼。

【11日/パドマニ・メンディス女史】13日にコロンボにて被災障害者支援のためのNGOの会議が開催される。

【13日/障害団体共同戦線】車いす、三輪車、白杖、眼鏡、歩行器などの自助具が不足。それらは障害者が働く工房で製作されているので、外国からもらうより、障害者の雇用を助ける意味でも寄付を募り必要な人に渡したい。

「障害者への津波の影響」と題したNGO会議を開催。VSO、JICA、ILO、TAFREN(北部再構築タスクフォース)、モティベーション、障害団体共同戦線、SHIA、HI、カンボジア・トラスト等が出席。会議は継続される。

インドネシア―被害が最も大きいのではないかと思っているが、情報量は少ない。

【12月29日/DPIインドネシア】ジャカルタ市内2か所にアチェの状況に人々の関心を向けるための「危機センター」を開設した。

【1月10日/DPIインドネシア】アチェにいるDPIインドネシアのコーディネーターが行方不明。「津波会議」に参加する際に花と垂れ幕を用意して、参加者に障害をもつ被災者への注意を喚起した。全国の会員から集めた車いすや白杖などの福祉機器をアチェに送付。これをアチェに開設予定の「再建センター」の活動につなげる。

【1月10日/DPIインドネシアが世界銀行のアンケートに答えて】新たに障害者となった人たちのリハビリテーションと精神的支援のための「再建センター」建設のための募金活動を開始。アチェのコーディネーターが死亡し、本部から人を派遣することになった。

タイ―いち早く救援活動が始まったが、(12月29日ネイション紙)ウボンラタナ皇女の子息(フミポン国王の孫)で自閉症をもつポーン・ジェンソンが、カオラックでジェットスキー中に津波にさらわれて死亡。

【1月12日/DPIタイ】被災障害者支援計画を作成し、政府へ要望書を送付。

【1月15日/バンコク・ポスト紙】保健省の発表では、津波の被害を受けた6県の障害を生じた8457人の約10%に身体、精神障害があると報じた。患者の大半は漁師、村人、子どもであり、波、樹木、瓦礫で手や足に深い傷を負い、切断手術を受けねばならなかった。パングガ、プーケット、ナコンシタマラト、スラタニの病院にはまだ500人が入院している。保健省は1000万バーツ(約3000万円)の予算を義手、義足、車いす、歩行器等の購入に当てる。

シリントーン国立医療リハビリテーション・センターのパタリヤ所長によると、パングガやプーケットの病院では、患者用に常備されていた車いすが負傷した外国人旅行者に帰国の際に提供されたため、一台もなくなってしまった。そのため同センターでは、補装具の寄付を呼びかけている。

【1月18日/バンコク・ポスト紙】保健省は労働社会開発人間保障省と協力し、新たに障害者となった人たちの長期リハビリテーションプログラムとして理学療法、職業訓練、ローンを提供する。

インド―被害状況が不明の段階からNGOが募金を始めた。

【1月6日/サドバウナ救済復興農村開発トラスト】グジャラートでの大地震での障害者救援活動の経験をもつ盲人協会BPAと一緒に、タミール・ナドゥ等の地域で松葉杖、車いす、コルセット、並びに資金提供の予定。ウォース・トラスト、香港盲人協会、国際視覚障害者協議会、全国盲人協会ケララ支部が協力。

【1月12日/全国障害者雇用促進センター、NCPEDP】政府は4000以上の部隊を国内はもとよりインドネシア、スリランカ、モルディブへも派遣した。しかし大半の救援活動はNGOによって実施され、お役所仕事の弊害により貢献度は低い。援助物質の配給にあたっての混乱により、他者と競争せざるをえない立場に置かれた障害者はおそらく最も悲惨な被害を受けている。NCPEDPはキャンペーンを立ち上げ、津波障害救援基金を設置した。被災地のNGOと共に、「パートナ・コア・グループ」も設置した。

【1月17日/ケララ・ニュース紙】NCPEDPではチェンナイのNGO、ビディア・サガールと共同で津波の被害状況調査のためのコア・グループを発足させ、最も被害が大きいといわれているアンダマンとニコバール島に障害者運動家2人を派遣する。

【1月18日/NCPEDP】「津波悲劇後の余波における障害問題に向けたキャンペーン」と題する中間報告を発表した。家族や所有物を失った人たちの話は取り上げられても、障害者となった人たち、被害を受ける以前から障害をもっている人たちについてはほとんど取り上げられないとしている。救援機関や開発団体は弱者に支援が届くようにと活動しているが、障害は忘れ去られている。障害者に救援物資は届いているのか、難民キャンプで生活できるのか懸念している。

NCPEDPはDPIインドと共に、コア・グループを設置した。被害を受けた地域から全国障害者ネットワーク、ビディア・サガール、ポンディチェリー身体障害者協会などが参加している。啓発グループとしてキャンペーンを行うと同時に、首相に今後の長期計画に障害を含めるよう要請する手紙を送った。ビディア・サガールの報告によると、タミール・ナドゥ州のナガパティナンでは3713人が、ケララ州のカンヤクマリでは3643人が重度の傷害を負ったかまたは障害者となった。これにタミール・ナドゥ州の2地域を加えて、調査の結果9398人が身体障害者に、5682人が精神障害者になると予測される。

緊急の行動として、1.救援に当たる団体に活動計画に障害を入れることを保証させる、2.心理リハビリテーションと精神保健の重要性を訴える、3.既存の農村対象プログラムでの、障害者の生活のための具体的時限計画を作る、4.既存の環境をインクルーシブとするよう主張する。

マレーシア―自国で救援を行える体制があるので、被害は比較的少なく目立たない。

【1月12日/DPIマレーシア】調査の結果、2人の子どもがいる42歳の男性身体障害者の被災のみが報告された。中国系障害者協会とビューティフル・ゲイトは星州津波基金に寄付をし、星州日報に彼が寄付を受け取れるよう措置を講じるよう依頼した。

【1月13日/ザ・スター紙】プサット・マジュドゥリのYMCA聾センターに集う青年たちが文化の夕べを主催し、クアラルンプールのYMCAでは聴覚障害者の劇団「きらめく手」の公演による被災者のための資金集めを行った。

紙面の都合で、HIなどの国際NGO、AAR等の国内NGOでの障害者を対象とした募金活動、DPI日本会議の車いす寄贈プログラム等には触れられなかった。詳しくはそれぞれの団体に問い合わせてほしい。

(なかにしゆきこ アジア・ディスアビリティ・インスティテート)