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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年3月号

ユニバーサルデザインの広場

ITにみられるUDの姿

武者圭

ITの進展により、高齢者や障害者もさまざまな情報を送受信できるようになってきました。しかし、それと同時に感じるのは、ユニバーサルデザイン(UD)にほど遠い対処療法としてのバリアフリーが蔓延していることです。たとえば、私が鉄道を使って、初めての場所へ行くことを考えてみましょう。私は視覚障害者(全盲)ですので、乗換駅や目的地の事前情報をインターネットや電話で調べるのが普通です。

「らくらくおでかけネット」1)は公共機関と鉄道事業社によって公開されており、鉄道のバリアフリー情報を提供している最も有名なサイトだと思います。しかし、そのバリアフリー情報は車いす利用に特化しており、しかも普通では考えられないような経路がしばしば提示されます。そのため、私は経路探索などは一般的なサイト2)を使い、バリアフリー情報はボランティア活動によって運営されている「アクセシビリティガイド」3)を中心に使用しています。

「普通の視覚障害者」ならば、一般的な経路情報と「アクセシビリティガイド」で十分かもしれません。私の場合は視覚障害のほかに、軽度慢性呼吸不全や骨生育不全による軽い歩行不自由があります。一見すると白杖を使って普通に歩いているように見えるかもしれませんが、上り坂や上り階段が苦手ですし、平地でも100m以上歩き続けたり、点字ブロックのような凸凹の上を歩いたりすることができません。「アクセシビリティガイド」には視覚障害者用の情報だけでなく、車いす利用者のための情報も掲載されています。従って、「らくらくおでかけネット」は必然的に使わなくなってしまうわけです。

このように、ITによる状況を見ただけでも、バリアフリー情報は障害別に提供されています。障害別に扱う方法は、「バリアフリー」という観点では非常に合理的と思われます。しかし、複数の障害を併せ持つようになっていく高齢者や重複障害者にとっては使い勝手の悪いものになる危険が高くなります。こうした問題は、ITや情報提供の方法にとどまるものではありません。設備だけでなく製品開発・サービス提供にも関わり、今後に予想される超高齢社会ではさらに重要度が増すと思われます。

障害の状況は個人差が大きいから個別対応こそ最善、という主張をときどき耳にします。しかし、UDを考慮すれば障害別になったための使い難さが少なくなり、バリアフリーでは対処できなかった部分も配慮され、強いては個別対応の手間が緩和されると考えています。

(むしゃけい サウンドスケープデザイナー・UDコンサルタント・UDNJ事務局)

1)らくらくおでかけネット:http://www.ecomo-rakuraku.jp/rakuraku/index/

2)駅探:乗り換え案内:http://www8.ekitan.com/norikae/Norikae1Servlet?AN=0

3)アクセシビリティガイド:http://www.a-guide.org/ACG/