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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年3月号

ユニバーサルデザインの広場

だれもが快適な公共交通機関の移動を

花田貴博

私は19年前から車いすを使うようになりました。そして8年半前に施設を出て自立生活を始め、電動車いすに乗り、一人で外出するようになりました。障害は重くなっていましたが、行動範囲が飛躍的に広がりました。その反面、社会にあるバリアを感じるようになり、バリアフリーの活動を自立生活センターのスタッフとして8年間行ってきました。数年前にユニバーサルデザインという言葉を初めて聞きました。自分の中ではバリアフリーの概念が強く、初めはユニバーサルデザインとバリアフリーは同じようなイメージでした。

今の自分なりの解釈では、車いす使用者でも利用できる形がバリアフリーであり、それをさらにすべての人が使いやすい形に近づけることがユニバーサルデザインであると思います。バリアフリーとユニバーサルデザインは同意義ではありませんが、どちらも大切な視点だと思います。

公共交通機関のユニバーサルデザインについて、私の体験を通じて現状と希望について触れたいと思います。

鉄道についてですが、札幌の地下鉄はまだ7駅にエレベーターがついていません。JRは、大きな街の駅ではバリアフリー化が進んできていますが、車両の乗車口は何も改良がされていません。北海道の車両には、たいてい2段の段差があります。理由は雪が多いためのようです。乗車には市販のスロープを使用します。以前に比べて設置されている駅が増えているようで評価できますが、快適とは言い難いです。車内は座席を倒して車いす席をつくれる車両もありますが、幅が狭く収まりがつかないので、落ち着きません。理想的な形は車両の座席を半分に減らし、十分なスペースを確保して車いす使用者が最低4人は乗車できる車両があることです。

航空機は年に数回利用しますが、鉄道よりもバリアを感じます。私は人工呼吸器を使用しているため、搭乗の前に必ず医師の診断書を提出しなければなりません。また必ず車いすから座席に乗り移る必要があり、私自身と人工呼吸器の移動があり苦痛です。座位のとれない人の場合は簡易ベッドを設置しますが、運賃が3倍になります。これが一番の問題です。車いすのまま搭乗できる機体や必要なときだけ使用できる壁収納式の簡易ベッドなどが必要とされています。簡易ベッドは急病人が出たときも使用できます。これこそがユニバーサルデザインだと思います。

総じて日本の公共交通機関のユニバーサルデザインは、意識すらされていない感があります。どうしてもお金や合理性が中心に考えられてしまいます。今後は障害をもつ人ともたない人が共に暮らしやすい社会にするためにユニバーサルデザインを社会全体で考えていく時だと思います。

(はなだたかひろ ベンチレーター使用者ネットワーク)