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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年3月号

ユニバーサルデザインの広場

みんなに使いやすいキッチン

柴田多恵

私は2歳でポリオになり、46年間、左足を引きずって歩いています。「不自由でしょ」と言われれば、そうなのですが、これが当たり前というか、こんなものなのだと思ってきました。そして、障害を背負ったゆえの生きづらさも、「まあ、しゃあないか」とすべてを受け入れ、「あきらめ上手」になって生きてきたと感じています。

昨年、私は初めて国際福祉機器展を見学しました。広い会場に数々の便利な福祉機器。ぐるっと会場を見て回りながら、最初に強く思ったことは、「あきらめるのはやめよう」でした。私たちの不自由さを解消したり緩和したりしてくれる道具が、たくさんあったからです。

私は主婦ですから、キッチンの展示に、すぐ目がいきました。座って炊事のできる椅子があり、その椅子を流しの下に収納できるというキッチンがありました。でも、その椅子はとても重いのです。これでは、座ったままコンロのところに移動して調理というわけにはいかないでしょう。座って炊事をしたくなる程度の人の脚力では、横に移動するのは大変だからです。ある一場面での工夫…「点」の改善はできていても、ちょっと場面を変えての工夫…「線」での改善はできていないと思いました。

次に目が留まったのは、ロポックス社のリハビリキッチン。ハンドルひとつで、流しやコンロを使いやすい高さに調節できるキッチンでした。この会場の中で、私はこれが、一番すばらしいものだと感じました。「すべての人のためのデザイン」であったからです。まさにユニバーサルデザイン!!

たとえば、そこが、車いすの人が住んでいる家の台所だとします。今日は何かのお祝いごと。車いすの人が腕を振るいます。訪ねてきた友人には健常者もいます。彼らも何か一品作ることに。ハンドルをぐるぐる回して、使いやすい高さにして…。どんなに楽しいことでしょう。

また、そのキッチンはレンジとシンクの厚さが120ミリでした。座って炊事する人にとって、上肢に無理な角度がかからないための工夫です。この薄さは、立位で炊事する人にとっては何の不便もありません。炊事しにくい人のためのこの配慮。やさしさがより一層感じられるキッチンでした。

製品を使う人、開発する人、商品化して販売する人…三位一体となっての製品作りが行われたら、どんなに効率がいいことでしょう。そうなってもらうために、私たちは、どんなことが不便で、どう改善してもらいたいか、声を上げなくてはと思います。決してあきらめないで。

(しばたたえ 神戸ポリオネットワーク代表)