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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年4月号

わがまちの障害者計画

三鷹市長 清原慶子(きよはらけいこ)氏に聞く
「市民参加」から「協働」へ 三鷹市の協働型行政と障害者施策

聞き手:薗部英夫(そのべひでお)
(全国障害者問題研究会事務局長、本誌編集同人)


東京都三鷹市 基礎データ

◆面積:16,50平方キロメートル
◆人口:173,205人(平成17年1月1日現在)
◆障がい者の状況(平成16年4月1現在)
身体障害者手帳保有者     3,503人
(知的障がい)愛の手帳保有者   646人
精神障害者保健福祉手帳保有者   612人(推定)
※手帳交付については、スティグマ問題やメリット面のこともあり、手帳交付数=障がい者数とはならない。
◆三鷹市の概況:
三鷹市は東京都23区に隣接して、多摩地域の入り口にあたる。中央線や京王井の頭線により地理的・交通面条件の整った郊外住宅都市。その上に緑と水辺の環境を整備した都市づくりを推進。まちづくり条例に基づき、土地利用総合計画を策定。(株)まちづくり三鷹を通じ活性化を図る。また、三鷹の森ジブリ美術館のあるまちとしても有名。
◆問い合わせ:
三鷹市健康福祉部地域福祉課
〒181-8555 三鷹市野崎1-1-1
TEL 0422-45-1151(代) FAX 0422-47-9577

▼三鷹市は「住みたいまち」調査でいつもトップに選ばれています。まず最初に三鷹市の特色や魅力についてお聞かせください。

まだ三鷹市にはたくさんの町会、自治会が残っています。市政55周年を迎えましたが、古い町会では50周年を迎えるものもあります。そして青年団が地域に三つ、10代、20代の若い人たちが地域のお祭りや行事に積極的に参加してくださっています。

加えて、コミュニティ住区と呼んでいますが、中学校区を一つの目安として、七つのコミュニティセンターを市民のみなさんと共に考え、運営する住民協議会に市が助成金を交付して32年間運営してきています。七つのコミュニティ住区、それぞれ地理的条件や人の暮らし方も違いまして、たいへん個性的です。また、ワークショップを通して身近な公園の設計に提案ができるなど、市民参加のきっかけがたくさん用意されていて、新しく転居されてきた方でもまちづくりにかかわるきっかけのある市です。

WTA(世界テレポート連合)という非政府組織が、毎年、情報都市づくりをしている世界のトップ7を選んでいます。三鷹市は2005年のトップ7の一つに選ばれました。それは、市が選ばれたということではないんです。今回の受賞は、地域での市民の方のがんばりが評価されてのことです。具体的には、55歳以上の会員で構成されているシニアSOHOを普及させたことや、三鷹市の子育てのページを子育て当事者のNPOに委託したり、学校インターネットの普及に力を入れた、ということが評価されました。

▼「市民参加」をモットーとした市民と行政のパートナーシップのさきがけといわれる三鷹市ですね。

三鷹市が第一次基本計画を作るとき、私は、20代前半で、学生代表委員として活動していました。直近では、第3次の基本計画を白紙から市民が提案をする「三鷹市民プラン21」の代表3人のうちの一人を務めました。三鷹市はいまや市民参加から対等に役割と責任を果たす協働の段階に移行しつつあると思います。

もう一つは、職員参加で、自分が所属する部門の政策だけについてかかわるのではなく、たとえば、市の計画づくりやアクションプランを作るときには、素案を職員にも公開して、職場を離れて意見を出すことも認めています。市民参加、職員参加、専門家参加がトータルにあるのが、三鷹市の特色と言えます。

▼住民自治とネットワーク論がご専門の清原市長ですが、障がいのある人たちの地域生活支援の面ではいかがですか。

障がいをもつ当事者(団体)と協働して行っている事業としては、次のものなどがあります。障がい者地域自立生活支援センター「ぽっぷ」は、障がい当事者の人が代表を務めるNPO法人です。手話講習会は、三鷹市の聴覚障害者協会に委託して、市と一緒にやってもらっています。

また、社団法人三鷹市シルバー人材センターにお願いして、「ふれあいサポート」という新しいサービスをはじめました。実は三鷹市はこの2月からごみの分別の種類を増やしました。介護者のいない要介護度が高い人や重度障がい者にとってごみを分別して出すというのは、結構たいへんなことなんですね。ごみを出すサポートも必要ですが、安否確認も一緒にやってもらおうと、ごみ出しと見守りサポートをはじめました。

平成17年度から、精神障がい者の方の自立支援推進事業をはじめます。これは在宅者の自立生活支援や長期に社会的入院をされている方の地域移行支援が目的です。この事業の支援者として、精神障がい当事者や経験者、あるいはご家族の方などサポート経験のある方にお願いするものです。

障がいのある人たちに参画してもらうと、障がい種別によって得意、不得意というものが出てきますが、そこは適切な評価・検証と支援をしながら、バージョンアップしていくのは、市の責務だと思います。市もしっかりと自己評価しますけれど、市民の人たちにも自己評価・自己点検をしっかりしていただくというやりとりは強く求めています。

▼改正された障害者基本法や障害者自立支援法案でも基本計画の策定が義務づけになりました。三鷹市では今後どのように取り組まれますか。

平成15年10月に策定した「バリアフリーのまちづくりの基本構想」づくりにも障がい当事者の方にかかわっていただきました。たとえば、一つの例として、市役所の3階にオストメイト対応の「だれでもトイレ」をつくったのですが、オストメイトの会の会長さんに実際に見て、使っていただきました。駅前の重点地区も視覚障がいの方や車いすの方に実際に歩いてもらって、その方の意見を基本構想委員会で話していただいて方針を決めてきました。

しかし、ただ参加していただくのではなく、他の人に対して発言や提案をし、出会っていただくという仕掛けを作らないといけないなと思っています。

現在、障がい者福祉の分野では新しい動きがどんどん出てきていますが、担当課長には、こまめに障がい者団体の人たちに会ってもらっています。少人数だからはじめて言えるということもあるんですね。行政としては、そういった方々の声を施策に反映させていかなくてはならないと思っています。

障がい者団体は障がい種別ごとにありますが、三鷹市には障がい種別の団体のほかに三つの横割り組織があります。やはり、何かに挑戦するには横割りでないとできないんですね。

▼三鷹市役所の案内には「障がい者」と表示されています。障害の「害」の字については、当事者からはマイナスイメージがあるので嫌だという声があります。一方、「障害」はマイナスでも人間としての「障害者」はプラスだという議論もある。障害の「がい」の字をひらがなにした経緯をお聞かせください。

私は前職の大学教員の時代から、幸いにも、障がいのある方とお会いする機会がたくさんありました。その中で感じていたのは、語源はともあれ、障がい者という言葉は私たちの暮らしの中で定着しているわけですから、その言葉をなくそうとは思いませんし、言い換えをする必要もないと思っていました。ただ、当用漢字の流れの中で、「障害者」の害の字が、災害の害になっているのは、不適切であると長い間思っていましたので、早い段階で改めたいと思っていました。とりあえず国の制度や一般的に流布されている制度を有効に活用していくのも大事だし、障がい者の皆さんにも多様な認識がありますから、「害」の字はひらがな表示をするということで市議会に提案をさせていただきました。関係の条例など、五百数十か所を変えなければなりません。総務委員会に提案したところ、全会一致で可決しました。

それからもう一つ、お知らせしたいことがあります。市議会の厚生委員会に、障害者自立支援法案の制定に関する意見書を提出してくださいという請願が出されました。この請願の趣旨は、法案の審議に当たっては、特に障がいのある人と、その家族等の実態を尊重し、区市町村の意見を十分反映してください。それから扶養義務制度を見直して、特に応益負担・定率負担の検討に当たっては所得保障の充実を図ってください。そして施設体系の再編、並びに小規模作業所の事業参入に当たっては重度障がい者施策並びに障がい者雇用制度を抜本的に拡充するとともに国の財政責任を明確にしてくださいという内容のものです。これが、厚生委員会で満場一致で採択されました。私も、障害者自立支援法案の制定に関しては、市として意見を申し述べたいと思っていましたので、これで市長と市議会が一致して、当事者を大事にするとともに、市町村の立場も大事にし、国の責任を適正にとっていただきたいという趣旨を伝えることができると思いました。これはビッグニュースだと私は思っています。

▼三鷹市は、障がい者福祉の分野でも「参加」から「参画」へと、市民と行政のパートナーシップの関係が深められていて、頼もしく思います。本日はお忙しいところ、ありがとうございました。