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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年6月号

1000字提言

視覚障害者の就労(3)

中村幹夫

今年2月、二つの法案が国会に上程された。

新介護保険法案では、介護予防システムの構築、施設の食住費の自費負担、障害者福祉制度との統合を視野に入れた対象拡大の付則規定等を盛り込んでいる。

障害者自立支援法案は、介護保険との統合前の地ならしとして、応益1割負担、施設での食住費の自費負担、作業所での利用料徴収等を盛り込んでいる。不十分な所得保障の下での応益負担は、障害者の生活破壊を招き、工賃よりも高い作業所利用料が就労意欲をそぐのは明らかだ。障害者は「受難者」であって、生きるためのサービスを受けるだけで、直ちに「受益者」と見なされるべきではない。「障害」という鎖から解き放たれるための手立てであり、スタート台をそろえるための「踏み台」なのだ。

現在の支援費制度では、

  1. 定期的通学、通勤
  2. 宿泊を伴う場合
  3. 経済活動を伴う場合
  4. その他、社会通念上不適当と思われる事項

については、ガイドヘルパーを利用できない。

自立支援法案では、これが地域生活支援事業に位置付けられる結果、事業者選択の制約、緊急・柔軟対応の難しさ、利用上限時数の地域格差を生ずる恐れが指摘されている。あくまでも、本人の実情・ニーズに即した個別給付とし、制限要件を緩和すべきである。

本法案は、5月に衆議院で、6月に参議院で審議される。障害程度区分の1次判定のモデル事業も、5~7月に政令指定都市を含む全国61市で実施されている。調査は介護保険の調査項目に20項目追加された約100項目で行われている。ぜひ、当事者、関係者の切実な意見が制度設計に反映されてほしいものだ。

障害者の通勤を援助する制度としては、障害者雇用納付金制度に基づく「重度障害者等通勤対策助成金」があるが、その適用条件のハードルは高い。視覚障害者の一般就労を支えるためには、具体的通勤保証が急務である。

ヒューマン・アシスタント制度も、10年間の時限適用、在宅就労の適用除外など、問題は多い。10年間経ったからといって、「障害」が改善し、「アシスタント」が不要になるはずはないのである。

私は、その日その日のニュースの掲載URLを「医療・福祉ニュースコンテンツ」として、約500人に配信している。詳細は、(http://groups.yahoo.co.jp/group/news-contents)をご覧いただきたい。問題解決には障害者自身による情報発信が欠かせないと思うからである。

最後に連載を終えるに当たり、本誌「月刊ノーマライゼーション」が目次のみならず、2002年3月号(通巻248号)以前のように、その全文がホームページに掲載されることを切望するものである。

(なかむらみきお (株)新世紀ケアサービス、介護支援専門員)