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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年6月号

1000字提言

「障害者就業・生活支援」に関する基礎調査
―支援者の自負・自律・地域主権意識―

関宏之

筆者は、「能力開発施設/雇用支援センター/就業・生活支援センター」など民間の就業支援機関が集まって就業支援のノウハウや研究開拓、あるいは、政策提言を行うことを目的として1994年に結成された「全国就業支援ネットワーク」に属しています。本調査は、当ネットワークが、各都道府県の福祉・労働部局や職業訓練・就業支援機関に依頼して支援の実態をお聞かせ願ったもので、139か所から回答が寄せられ、冊子としてまとめました。当ネットワークの今年度の「定例研究会」では、この結果について次のような認識に基づいて「わが国の就業支援のあり方」について3日間にわたって議論します。

  1. 「施設(的)」という空間や時間の設定は「排除」の産物である
  2. 「就労支援」は障害者福祉従事者の固有の業務であり、施設延命策の隠れ蓑ではない
  3. 障害(impairment)を原因とする能力低下を雇用や賃金体系の基準にしないという規範の確立とその実現を目指した支援制度や所得保障の構想
  4. 順法・説明責任・情報公開といった事業体(われわれも含めて)の社会的責任
  5. 企業に加え、地域おこしと連動した雇用主体(コミュニティービジネスなど)の創設
  6. 市町村単位の就労支援策として住民にとって「顔の見える」制度設計
  7. 福祉関連予算が枯渇するなかで、各省庁の制度活用(農林・経済・国土関連など)機運や地域における特色のある政策立案(構造改革特区など)や政策提言
  8. 「就労支援」は、地域や地域住民という専門家の参画によって成立する/企業・行政・労働団体を除いた福祉人集団による「ネットワーク」は有効な機能を果たせない

福祉・労働・教育関係制度の改訂時期にあり、政策に反映させることへの努力や現行の制度の拡充が望まれています。願わくば、本報告書が「一人歩き」をし、「人は働くもんだ!」という「当たり前」の実現に向けて関心が高まり、さらなる実践が深まることを期待するものです。アンケートへのご回答や就業支援に係るご意見をいただいた諸機関・諸氏にこの紙面をお借りして改めて御礼を申し上げます。

(せきひろゆき 大阪市職業リハビリテーションセンター所長/特定非営利活動法人大阪障害者雇用支援ネットワーク代表理事)