「ノーマライゼーション　障害者の福祉」　2005年7月号

報告　災害を体験して

新潟県中越地震：自立生活センター新潟の取り組み

遁所直樹
圓山里子

昨年（２００４年）１０月２３日に新潟県中越地震が発生しました。被災県に拠点を置く自立生活センターとして行った取り組みを時期別に振り返ってみたいと思います。

まず、地震発生直後から１１月下旬頃までは、さまざまな問い合わせへの対応と自分たちは何をするのかを模索しつつ動いていました。１１月中旬以降は支援体制を整え、実際に活動を開始しました。そして、年が変わって今年の１月以降、活動と平行して、どのように今後の取り組みにつなげていくかの検討を始めました。

支援活動は、自立生活センター新潟（以下、ＣＩＬ新潟）だけでは到底できず、さまざまな方々や団体と協力し、お互いにできることに取り組むことで実現しました。

ＣＩＬ新潟が活動拠点としている新潟市は、震源地から離れているため、地震による被害もなく、ＣＩＬ新潟の利用者で一人暮らしの皆さんの安否もすぐに確認できました。

地震発生直後―問い合わせが殺到

地震発生後の週明けからＣＩＬ新潟には、全国の皆さんからさまざまな問い合わせや支援の申し出が殺到しはじめました。しかし、ＣＩＬ新潟としては諸般の事情によりすぐに現地入りする状況を作れず、離れている被災地の状況がつかめなかったのですが、地震の翌日から被災地を回り始めたＣＩＬ新潟の嘱託医などの方々が把握してきた状況から情報収集し、新潟市でもできる対応をとってきました。

問い合わせに対しては、ＣＩＬ新潟のホームページに掲示板を急きょ設置し、情報発信及び情報の共有ができるようにしました。この掲示板から、ボランティアステーションをはじめとして多くの方々に募金をいただきました。レスパイトサービスの「ねのねっと結屋」には、募金の窓口を引き受けていただきました（その後、ＣＩＬ新潟の口座を開設）。

目の前の対応に追われながら、ＣＩＬ新潟として、どのように、また、何に重点をおいて活動をするのか、模索する日々が続きました。地震から約１か月の１１月２２日に関係者が集まり、今後の対応について話し合いの場をもちました。その結果、「ねのねっと結屋」は被災者レスパイトを、ＣＩＬ新潟は中越地域（具体的には旧小出町、十日町市）における地域での自立生活支援を重点的に行うことが確認されました。

中越地域への訪問活動

このような経過で始めたのが、中越地域への訪問活動です。地震直後の余震がある程度おさまって、ボランティアの方々が引き上げ始めた頃、「ゆいま～る」（知的障害をもつ子どもの家族会）やＣＩＬ新潟の嘱託医及び当事者スタッフが、重度の障害をもつ仲間を訪問し、最後まで地域で暮らすにはどうしたらよいかについて、問いかけてきました。その時、新潟市のヨソモノが何かを言うよりも、地元で暮らしている障害をもった人が訴えると、周りの人がもっと積極的に聞いてくれるのではないか、という雰囲気を感じました。

中越地域の障害をもった仲間が自ら行動を起こしてほしい、そんな気持ちで、毎月２回のペースで何とか被災地を訪問することができました。電話による安否確認でなく、顔を突きあわせた出会いを繰り返していくうちに、ある若者が中越で自立生活センターを立ち上げたいと言うようになりました。その際に、事務所という箱モノの確保よりも、ＣＩＬ新潟が今回訪問してきた人たちに一人ひとり会って話し合っていくことを優先させたい、と要望しました。訪問活動は、従来から各地でやってきた取り組みです。しかし、中越地域では、実に初めての試みなのです。

新たな活動の展開

以上のような活動を、今後、どのように継続していくのかを検討した結果、「ねのねっと結屋」が被災者レスパイトを行っていた場所をＣＩＬ新潟が引き継ぎ、「トライはうす」として再出発しました。「トライはうす」はオープンスペースとして、そして、自立生活体験室として活用し、さらに今後の新たな活動の展開を視野に入れ、動き始めています。

また、引き続き被災地・中越地域での自立生活センター設立への支援を行っています。新潟市を中心に社会資源を増やし、強制された自立でなく、最後まで地域でみんなと暮らしたいと願っているＣＩＬ新潟の今後の活動としては、中越で居場所を作ろうとしている仲間への支援が中心となっていきます。でも、主体はあくまで中越地域の当事者たちです。

今回の震災で痛感したのは、地域における日頃のつながりや、日常的な活動の重要性でした。そして、さまざまな関わり方がある中で、もう一度、当事者団体としての原点に返って、地域の実情に即しつつ、一緒に活動に取り組んでいきたいと考えています。

（とんどころなおき・まるやまさとこ　自立生活センター新潟）