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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年9月号

提言 視覚障害者から

利用しやすい、だから利用したいと思える施設を求めて

青柳まゆみ

先日、開業直前の駅を見学する機会がありました。この鉄道会社は、バリアフリー施設の導入を広くアピールしています。実際、視覚障害者にとってはありがたい、きめ細かな配慮があちこちに見られ、とても使いやすそうな印象を受けました。既設駅についても、音声案内や点字表示が増えていたりして、法制定の影響を感じることが度々あります。しかし、課題も残されています。以下に、今後に寄せる期待をまとめてみました。

配慮から来る新たな不便さ

近年、新幹線や地下鉄のホームで可動式の安全柵が普及しつつあります。これは安全の確保という意味では有効であり、視覚障害者のホーム転落事故の軽減にも大きく貢献しうるものです。ところが、今回見学した駅もそうですが、従来ホームのふちに一直線に敷かれていた警告ブロックが無くなり、乗車口にだけ小ぢんまりとブロックが置かれるケースが増えています。以前、混雑した新幹線のホームで、自分が乗りたい車両へ移動するのに大変苦労した経験があります。安全柵の脇に荷物を置いたり、柵に寄りかかっている人が多すぎて、柵に沿って歩くことが全くできなかったためです。ある意味で確実な「視覚障害者誘導用ブロック」として機能してきた従来の点字ブロックが減っていくとしたら、それに代わる何らかの対策を考える必要があるのではないでしょうか。

見かけだけでなく真の利便性を

音声案内や触地図、車両の点字表示を見て「せっかく付けたならもう少し工夫すればよかったのに…」と思うことがよくあります。トイレで「壁の青いボタンを押すと水が流れます」という案内を聞いたことがありますが、「青いボタン」と言われても、それは視覚障害者にとっては決して親切な案内ではないのです。バリアフリー化の必要性を認めて予算を確保するまでは事業者の役目ですが、たいていその先は第三者機関に委ねられます。ここで、視覚障害の専門家と客観的な意見を述べられる当事者がいかに適切に関わっていくかが、バリアフリー施設の質を決める最大の鍵であると考えます。

一般利用者や職員への啓発

バリアフリー化が十分に進んでも、周囲の人たちの手助けは不可欠です。ハード面の改善だけではすべての情報を保証することが現実的に難しく、また日や時間帯によって状況は変動するためです。幸い私は、道に迷ったり困ったりするたびに親切な人に助けられます。けれども、席が空いていても教えてもらえなかったり、逆向きのエスカレーターに踏み込もうとしても止めてもらえないなど、まだまだ理解が得られていないと感じることもあります。

「声をかけたら悪い気がする」とか「断られたらどうしよう」などという戸惑いから援助の申し出をためらってしまう人が大勢います。そこで私は、障害理解を目的とした授業や講演の時には必ず、「時間と気持ちに余裕がある時にはぜひ皆さんのほうから声をかけてください」というメッセージを伝えるようにしています。

(あおやぎまゆみ 筑波大学大学院生)