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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年9月号

自治体などの取り組み

路面電車「MOMO」の挑戦

岡山電気軌道株式会社

会社の概要

弊社は明治45年5月に開業し、現在日本で一番営業キロの短い東山(ひがしやま)線・清輝橋(せいきばし)線の2路線4.7キロを運行する民間企業です。市内中心部を運行エリアとして、東山線沿線には日本三名園のひとつ後楽園があり、年間約370万人の方々にご利用いただいております。

MOMO導入経緯

平成12年2月、岡山市街づくり交通計画調査検討委員会()が路面電車の延伸、環状化を提言され、そして市民団体のRACDA(路面電車と都市の未来を考える会:会長 岡将男)さんらも、21世紀の都市形成には路面電車が必要不可欠な乗り物であるとの位置付けから、その実現に向けて活発に推進活動をされていました。それを受けて、岡山市においても論議がなされ、路面電車が仮想走行した交通実験が実施されたりという状況下、運行事業体である弊社は、

  1. 路面電車のイメージを一新したLRV(Light Rail Vehicle)を導入し
  2. 岡山の街に活力を与え
  3. 市民にこの優れた21世紀の公共交通機関にふさわしい乗り物を体感してほしい

との思いから、超低床路面電車導入の意思決定をしました(導入決定発表平成12年6月5日)。

車両製造にあたり、デザインを岡山出身の車両デザイナー水戸岡鋭治氏(JR九州、新幹線つばめ等デザイン多数)にお願いし、ふるさとのためにと無料で引き受けてくださいました。21世紀にあらゆる人々が求めている快適にご利用いただけるユニバーサルデザイン(当時、岡山では一般的な言葉になっていませんでした)の公共空間として「ノンステップ、車椅子搭載可能(車椅子スペース前後扉付近に2か所)」な「MOMO」を誕生させてくださいました。

運行開始
平成14年(2002年)7月5日
導入費用
2億4千万円[内、公共交通移動円滑化設備整備費(14年度予算)として国、県、市(市負担額の中に市民からの募金500万円を含む)から1億1千万円の補助を受け導入]。

電停バリアフリー化について

「交通バリアフリー法」において、高齢者、身体障害者などの移動に際しての身体的負担を軽くし、移動の利便性や安全性の向上を図ることの必要性が位置付けられました。それにより道路管理者が電停を道路の一部として整備することができるようになり、岡山市でもMOMO導入に際し、国土交通省岡山国道工事事務所(当時)と岡山県に交渉を行いました。身障者団体をはじめ市民の方々にも署名をいただき、陳情を行い、MOMOの特性であるあらゆる人々に快適にご利用いただくためには電停のバリアフリー化は欠かせないと粘り強く説得にあたり、何とか運行開始前に整備していただけることになりました。

◆整備内容(全15停留場のうち平面電停等を除く12か所が対象)

傾斜路(スロープ)
乗降場と横断歩道との高低差を解消するため5%勾配のスロープを設置
電停の嵩上げ
乗降場とMOMO(地上より床面まで高さ30センチ)の乗降口床面とを平らに整備(電停の高さ15センチから26センチへ嵩上げ)

今後の展望

次世代型路面電車システムとしてLRVを活用したLRTシステム(ライト・レール・トランジット:人と公共交通機関が共存する街=トランジットモール)が地球環境保護や、バリアフリー面からも注目を浴びており、国土交通省も本年度LRTの整備を支援する総合的、一体的な補助事業を創設しました。国内では約60都市で導入が検討される状況に来ています。しかしながら、車両購入費が2億円前後と高額なため、まだまだ鉄軌道業者には大きな負担となります。

岡山でもMOMO導入から4年、増車を望む声が消えることはありません。地域住民、自治体、行政が協力して、あらゆる人々が快適に生活できる街づくりをめざして、LRV「MOMO」の利便性を体感している岡山が他都市に遅れることなく、1日でも早いMOMO2号の導入を実現できるよう模索する毎日が続いているのが現実です。

岡山市街づくり交通計画調査検討委員会(平成9年設立、国、県、県警、市、市民団体、交通運輸事業者等が参加)