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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年11月号

列島縦断ネットワーキング

大阪 「あなたのランプの灯火をいま少し高く掲げて下さい。」
~障害者雇用フォーラム in 大阪と地下鉄美術館の取り組みについて

森悟子

9月は「障害者雇用支援月間」です。各地で障害者雇用を啓発するセミナーやイベントが開催されていますが、ここ大阪では「2005障害者雇用フォーラムin大阪」と「地下鉄美術館」の取り組みを行いました。どのような取り組みなのかご紹介させていただきます。

障害者雇用フォーラム in 大阪について

まず、2005障害者雇用フォーラム in 大阪(以下「フォーラム」)についてですが、「フォーラム」実施にあたっては私共、大阪障害者雇用支援ネットワークの発展経過と深い係わりがあります。

大阪障害者雇用支援ネットワークは障害のある方の就労を支援する団体で1996年に発足、2001年にはNPO法人化しました。連合大阪、関西経営者協会、障害者雇用事業所、就労支援機関、労働行政などが集まってできた団体です。

この「フォーラム」については、連合大阪が大阪に本社を置く労働組合に対して1994年に行った障害者雇用に関する実態調査がきっかけとなっています。調査の結果、組合として障害者雇用に関する取り組みが進んでいない現状が明らかになったのですが、障害者雇用推進のためには、障害者が働く現場を知る機会を作ったり、お互いの情報交換を図る必要があるのではないかということで、啓発活動の一環として1994年9月に「障害者雇用フォーラム」を労使ともに参加するセミナーとして連合大阪主催で開催いたしました。

「フォーラム」の開催等を経て障害者雇用に関する意識の醸成やそれを支える土壌づくりが生まれ、1995年の連合大阪会長就任挨拶の際に「大阪を障害者雇用日本一のまちに」の声かけのもと、1996年には大阪障害者雇用支援ネットワークとしての団体が結成されるようになりました。

「フォーラム」はその後も、毎年9月の障害者雇用支援月間に併せて開催していますが、特徴のひとつとしては大阪障害者雇用支援ネットワークだけでなく連合大阪、関西経営者協会、大阪府も主催団体として参画し、実施運営を行っているところにあります。昨年度は内閣府も主催団体として障害者の社会参加の機会を考えることを目的に「フォーラム」を開催いたしました。

今年は、9月9日(金)に開催いたしましたので、その内容を簡単にご紹介します。

午前中は大阪府内にある障害者雇用事業所の見学会を企画し、10社見学いたしましたが、当初の予定人数を上回る参加者がありました。今回は大阪府内でも新しく特例子会社が設立されているところもあり、さまざまな職種で活躍されている知的障害者の方や身体障害者の方の様子を見学することができました。

午後からは、大阪府ハートフル企業顕彰制度(府内で障害者雇用に関する取り組みをしている事業所をさまざまな角度から評価し、広く市民に周知する事業)の表彰式と座談会を開催しました。座談会は当ネットワーク代表理事の関宏之氏をコーディネーターとし、ダウン症のお兄様がいらっしゃる落語家の露の団六氏、障害のある子どもを持っておられるYKK六甲株式会社の江口敬一氏、奈良市手をつなぐ育成会の小西英玄氏にご登壇いただきました。

弟としての立場、父としての立場から、障害のある人とともに暮らすこと、生きていくこと、そこから得るものがどのようなことなのかについて、時には笑いも交じえながらお話いただきました。

障害のある子どもを初めて持ったことへのショック、それを乗り越えて親として何ができるのかに気付き、子どものためだけでなく同じ地域で暮らす障害のある人に対して何ができるのかと考えるようになるまでの親としての思い、また、自分が生まれたときから当たり前に障害者がいる環境の中で、障害者としてではなく兄弟として接してきた思い、一方的に子どもや兄を支えるだけでなく、子どもから兄からも自分が支えられていることに気付いたことなどについてお話いただくことができました。

当たり前に過ごすことがどのようなことなのかを、会場の皆様に感じ取っていただいた貴重な機会となったかと思います。

地下鉄美術館について

次に、地下鉄美術館についてご紹介します。

地下鉄美術館を本格的に実施したのは今年が初めてなのですが、「フォーラム」同様、障害への理解や社会参加や雇用の推進を目的に障害者雇用支援月間のPRとして、ヘレンケラーさんの写真や、府内の養護学校の生徒さんに描いていただいた絵画、働く障害者の写真をポスターにして、大阪市営地下鉄御堂筋線の1車両編成を借り切って、9月4日(日)~17日(土)の2週間展示いたしました。

ポスターを展示している列車の運行時刻は日によって異なりましたが、多いときには10往復以上することもありました。

ポスターの写真となった障害のある方も親と一緒に運行列車に何度か乗ったり、それと知らずに乗って、子どもの写真が展示されているのにびっくりして、こちらに問い合わせされてきた親御さんもいらっしゃいました。

また、ヘレンケラーさんの写真については2種類作成し、片側の吊り広告はすべて同じ内容のもので統一いたしました。ずらっと同じポスターが並んでいるのは圧巻で、御堂筋線の車両は混雑することが多いのですが、じっと見入っている方も大勢いらっしゃいました。

ところで、なぜヘレンケラーさんと障害者雇用支援月間と関連があるのか疑問をもたれる方がいらっしゃるかもしれませんが、ヘレンケラーさんは3度来日され、2度目の来日の際に「身体障害者福祉法」の制定に尽力するとともに、障害のある人が職業人として社会参加すべきことを説かれました。ちょうどその時期が9月だったことから、毎年9月を障害がある人の雇用促進を考える月間とすることにしたという経緯があります。

ヘレンケラーさんの言葉に「あなたのランプの灯火をいま少し高く掲げて下さい。障害がある人の行く手を照らすために」があります。今回の取り組みがより多くの方々に障害のある方の雇用について考えていただける、ひとつの灯火となればと考えております。

(もりさとこ 特定非営利活動法人大阪障害者雇用支援ネットワーク事務局)