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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年11月号

1000字提言

リハエンジニア 人に調和したキカイづくり

北野義明

リハエンジニア(リハビリテーション工学技師)ってご存じでしょうか?

障害のある方がより豊かに生活できるように、工学技術の観点から支援するエンジニアで、各地のリハビリテーションセンターを中心に、車いすやコミュニケーション機器といったさまざまな道具(福祉用具)や住環境、まちづくり等の各分野で、適合相談から改良検討、研究開発にわたって活動しています。

機械エンジニアを志して勉学に励んだ(?)学生時代、人と機械の関わりに興味を持ち、「人が機械に合わせるのではなく、人に合わせた機械。すなわち、人と機械が調和できるような、人にやさしい機械を実現したい」という思いを抱きました。そして、「そんな機械を最も切実に必要としているのは障害のある方ではないか?調和は最もデリケートだと思うが、その機械によって生活そして人生を一変させる可能性がある。そんな機械の実現をライフワークにしたい」と考えていたところ、運良く地元のリハビリテーションセンター開設の話があり、リハエンジニアとして就職が実現しました。

それから10年以上経過した今、障害のある方に調和した機械や道具づくりをめざして日々取り組んでいます。悪戦苦闘の毎日で、ベストな対応ができているかどうか分かりませんが、調和したキカイ(機械)を提供することが、生活をそして人生をより豊かにするキカイ(機会)になることがあり、そんな時、最高の喜びを感じます。たとえば、メーカー既製の電動車いすでは運転できなかったために自立移動をあきらめていた少年やご家族、先生方と対話しながら検討をすすめ、身体に応じた座位保持装置と電動ユニットを組み合わせる構造フレームを開発し、適合した電動車いすを作り上げると、少年は家や学校を意欲的に動き回り、電動の力を利用して引き戸の開閉までできるようになって、自律的な生活を楽しめるようになりました。そんな活き活きとした姿を見て、ご両親が「この子にこんなことができるなんて」と涙ながらに話されたことが思い出されます。

リハエンジニアは皆、こんな熱い思いを持つとともに、工学技術という新しいモノを生み出す可能性を秘めています。「こんなことしたいなあ」とか「こんなふうにできたらいいなあ」と夢の実現に困った時、リハエンジニアに声をかけてみてください。夢に向けて何か一歩踏み出せる可能性があります。そしてそのためには、障害のある方や周囲の方と対話し、少しでも理解を深め、ともに納得しながらキカイづくりを進めることが重要だと思います。障害のある方やご家族、支援なされている方、そして熱い思いを持ったメーカーの方、一緒に夢を実現させましょう!

(きたのよしあき 石川県リハビリテーションセンターバリアフリー推進工房)