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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年11月号

フォーラム2005

JDFの結成意義とこの1年間

藤井克徳

日本障害フォーラム(以下、JDF)が結成されてちょうど1年が経過しました。この機会に、改めてJDFがどのような経緯で結成され、その目的や性格はどういうものなのか、この1年間の活動や事業として何があげられるのか、これらについてごく簡単に紹介します。

1 日本の障害分野を代表する連携体の結成

昨年(2004年)10月31日、1年余の準備を経て「JDF結成の集い」が開かれました(全社協ホールにて)。

直接的な準備は1年余でしたが、団体を越えての連携組織の結成は、待望久しいものがありました。さかのぼること約四半世紀、国際障害者年(1981年)当時からの懸案でした。有り体に言えば、「機が熟さなかったのでは」、こんなふうに言えるのかもしれません。「アジア太平洋障害者の十年」最終年記念事業(札幌フォーラム、大阪フォーラム)などを通して、次第に団体間の連携や信頼関係がつくられていきました。また、国連における障害者権利条約特別委員会への傍聴団派遣なども、発足の機運を高めていくうえで重要な役割を担うものでした。

結成してまだ1年という段階ですが、結成そのものは、明らかにわが国における障害分野史に残ることになるのではないでしょうか。なお、結成当日は、午前中にJDFの構成団体代表者らによって発足セレモニーが行われ、午後にはこれを記念しての「障害者権利条約特別セミナー」が、夕刻には記念レセプションが開かれました。

さて、JDF結成の目的ですが、大別して二点をあげることができます。その第一は、国内における影響力の発揮です。未曾有の財政危機下での障害者政策の展望は決して楽観できるものではなく、かつてなく連携の強度と質が問われています。立法面にしろ、行政面にしろ、個別団体の働きかけだけでは本質的な成果が得られにくく、存在感や影響力を発揮していくためには、まとまっての行動が不可欠となっていました。第二は、国際活動面で力を高めていくことです。障害分野での国際NGOは欧米や中南米を中心に活発なものがあります。これらと伍していくためには、わが国としてのまとまりが肝要です。まとまったことによる成果はすでに現れ始め、JDFの発足をもって障害者権利条約特別委員会へのNGO登録が承認されました(2004年12月)。

目的と並んで重要なのがJDFの性格についてです。これについては、結成時に決議された「設立趣意書」において、「私ども発起11団体(後述)は、フォーラムを組織する各団体の意見や行動を尊重しつつ、上記の共通の事業を推進するために責任と役割を果たし、わが国の障害をもつ人を真に代表する新たな連携組織を目指します。以下略」と記されました。ここで大切なのは、個々の団体の「意見や行動を尊重しつつ」とし、固有性や自由性を確認し合ったことです。

2 当面は4つのテーマを基本に

準備過程で論議となった点の一つが、活動や事業の内容についてでした。折角の連携組織の誕生であり、その効果を最も有効なものとしていくための活動として何があげられるか、一方で構成団体の共通テーマに成り得る活動は何か、これらをポイントに当面の活動の柱を探究してきました。

論議の結果、1.国連・障害者の権利条約の推進に関すること、2.第2次「アジア太平洋障害者の十年」の推進及び「アジア太平洋障害フォーラム(APDF)」に関すること、3.わが国の障害者施策の推進に関すること、4.障害をもつ人の差別禁止と権利に係る国内法制度の実現に関すること、以上の四点を活動や事業の主柱とすることとしました。すなわち、国際テーマが2つ、国内テーマが2つということになりました。これら4つのテーマについては、テーマごとに専門委員会を設置し、担当団体を配しすでに具体的な動きに入っています。とくに、国連・障害者権利条約や第2次「アジア太平洋障害者の十年」については、JDF結成以前から個々の団体ごとに関わりを持っていましたが、改めてJDFとして組織的に対応していくことになりました。

発会時点での構成団体ならびにオブザーバー団体は、次のとおりです。まず構成団体ですが、社会福祉法人日本身体障害者団体連合会、社会福祉法人日本盲人会連合、財団法人全日本ろうあ連盟、日本障害者協議会、特定非営利活動法人DPI日本会議、社会福祉法人全日本手をつなぐ育成会、財団法人全国精神障害者家族会連合会、社会福祉法人全国社会福祉協議会、財団法人日本障害者リハビリテーション協会、の9団体です。オブザーバー団体は、全国「精神病」者集団、社会福祉法人全国盲ろう者協会、の2団体です。その後、構成団体に社団法人全国脊髄損傷者連合会、社団法人全日本難聴者・中途失聴者団体連合会が加わり、現時点での構成団体・オブザーバー団体は計13団体と成っています。なお、初代の代表は兒玉明氏(日身連会長)でしたが、現在は同じく日身連会長の小川榮一氏が代表となっています。

また、活動を進めていくうえでの組織形態について設立趣意書では、「今後は「日本障害フォーラム」としての大きな枠組みの中で、障害当事者団体、家族等支援団体、事業団体及び専門職団体等ごとに分野別の部会を設け、それぞれ固有の課題について協議を進めることとしております。略」、とありますが、現段階ではこうした組織形態には至っていません。

なお、当面の主な課題として、次の三点が掲げられています。第一は、組織基盤に関わる事柄で、具体的には1.定款の作成、2.財政基盤の確立などです。第二は、専門委員会活動を軌道に乗せていくことです。動き始めている国際テーマに加えて、国内テーマをいかに取り組んでいくかです。第三は、JDFの存在と役割を広く社会にアピールしていくことです。個々の課題や事業で成功体験をいかに重ねていくことができるか、このことがとくにこの時期大切になるのではないでしょうか。事務局については、当面、日本障害者リハビリテーション協会に設置することとしました。

3 礎づくりの1年間を振り返って

JDFのこの1年間は、文字通り礎づくりに主眼を置いてきたと言っていいのではないでしょうか。まだまだ目立った実績と言うわけにはいきませんが、とりあえず力点を置いてきた活動として次の諸点をあげることができます。

その第一は、国際活動面で組織立った対応を形づくりつつあるということです。具体的には、1.国連における障害者権利条約の採択促進、2.第2次「アジア太平洋障害者の十年」の推進で、それぞれに応じて2つの専門委員会が中心となって対応してきました。とくに、障害者権利条約に関連しては、従来を踏襲しての国連・特別委員会への傍聴団(ロビー活動含む)の派遣や外務省を窓口とする政府との調整・懇談、リーフレットの発行などを行ってきました。また、国会内に「障害者権利条約議員連盟」が発足しましたが(2005年2月22日)、これにあたっても関係議員へのアプローチを含め積極的に関与しました。

第二に、組織の基盤づくりに力を注いできたことがあげられます。JDFの羅針盤に当たる定款の作成や財政基盤をいかに安定させるか、この点に重点を置いてきました。当初の考えでは、年度内の定款作成を予定していましたが、活動の実績や専門委員会の動きなどを見極めながら、もう少し時間を要してもいいのではないかということになりました。当面は、結成時にまとめた「設置規定」に基づいて活動していくことになります。財政面については、会費(1団体年間50万円)と民間助成金団体による助成が主要な財源となっていますが、とくに助成金団体の支援額のアップが期待されています。

JDFは、去る10月21日に1周年記念セミナー「JDF―これまでの活動と今後の展望」を中野サンプラザで開催いたしました。セミナー1「教育」、セミナー2「雇用」、鈴木譽里子外務省人権人道課首席事務官による特別報告があり、関係者約200人が参加しました。

最後に、船出したばかりのJDFにあって、関係者が交わる機会をいかにつくるかも重要なポイントでした。この点で、幹事会(各団体の常務理事クラスで構成)の月に一度の開催は、重要な意味を持つものでした。意思疎通が大切なこの時期、代表者間のつながりを強めていくことと同時に、引き続き幹事会の役割は大きく、その強化が求められます。

(ふじいかつのり 日本障害フォーラム幹事会議長)