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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2005年12月号

障害者自立支援法の成立と今後の障害保健福祉施策

障害者自立支援法に対する附帯決議について
(平成17年10月13日 参・厚生労働委員会)

政府は、次の事項について、適切な措置を講ずるべきである。

1 附則第三条第一項に規定する障害者の範囲の検討については、障害者などの福祉に関する他の法律の施行状況を踏まえ、発達障害・難病などを含め、サービスを必要とするすべての障害者が適切に利用できる普遍的な仕組みにするよう検討を行うこと。また、現在、個別の法律で規定されている障害者の定義を整合性のあるものに見直すこと。

2 附則第三条第三項に規定する検討については、就労の支援を含め、障害者の生活の安定を図ることを目的とし、社会保障に関する制度全般についての一体的な見直しと併せて、障害者の所得の確保に係る施策の在り方の検討を速やかに開始し、3年以内にその結論を得ること。

3 障害福祉サービス及び自立支援医療の利用者負担の上限を決める際の所得の認定に当たっては、障害者の自立の観点から、税制及び医療保険において親・子・兄弟の被扶養者でない場合、生計を一にする世帯の所得ではなく、障害者本人及び配偶者の所得に基づくことも選択可能な仕組みとすること。また、今回設けられる障害福祉サービス及び自立支援医療の負担軽減の措置が必要な者に確実に適用されるよう、障害者及び障害児の保護者に周知徹底すること。

4 障害福祉サービスの利用者に対しては、社会福祉法人による利用者負担減免制度の導入等により、きめ細かな低所得者対策を講ずること。また、この場合においては、実施主体に過重な負担とならないよう、適切な措置を検討すること。

5 自立支援医療については、これまでの更生医療、育成医療及び精神通院医療の趣旨を継承した公費負担医療制度としての位置付けを明確にすること。また、医療上の必要性から継続的に相当額の医療費負担が発生することを理由に、月ごとの利用者負担の上限を設ける者の範囲については、速やかに検討を進め、施行前において適切に対応するとともに、施行後も必要な見直しを図ること。さらに、自立支援医療の「重度かつ継続」の範囲の検討に当たっては、関係患者団体の意見にも配慮すること。

6 自立支援医療のうち育成医療については、国会答弁を踏まえて、適切な水準を制度化すること。

7 介護給付における障害程度区分について介護サービスの必要度が適切に反映されるよう、障害の特性を考慮した基準を設定するとともに、主治医の意見書を踏まえるなど審査の在り方についての適正な措置を講ずること。また、支給決定に係る基準や手続きについては、生活機能や支援の状況、本人の就労意欲等利用者の主体性を重視したものとなるよう必要に応じて適宜見直しを行い、関係団体とも十分協議した上で策定すること。さらに、障害程度区分認定を行わないこととなる障害児については、障害児に対する福祉サービスが障害児の成長過程において生活機能を向上させる重要な意義を持つものであることにかんがみ、市町村が適切なサービスを提供できるように体制を整備するとともに、障害程度の評価手法の開発を速やかに進め、勘案事項についても必要な措置を講ずること。

8 市町村審査会の委員については、障害者の実情に通じた者が選ばれるようにすること。特に、障害保健福祉の経験を広く有する者であって、地域生活に相当の実績を持ち、中立かつ公正な立場で審査が行える者であれば、障害者を委員に加えることが望ましいことを市町村に周知すること。また、市町村審査会の求めに応じ、サービス利用申請者が意見を述べることができることを市町村に周知すること。

9 介護給付や訓練等給付の支給決定については、障害者の実情をよりよく反映したものとなるよう、市町村職員による面接調査の結果や福祉サービスの利用に関する意向を十分踏まえることを市町村に周知するとともに、決定に不服がある場合には都道府県知事に申立てを行い、自ら意見を述べる機会が与えられていることを障害者及び障害児の保護者に十分周知すること。

10 基本指針の策定に当たっては、現行のサービス水準の低下を招くことなく、障害者が居住する地域において円滑にサービスを利用できるよう、サービス提供体制の整備を図ることを障害福祉計画に盛り込むこと、計画の策定の際に、障害当事者等の関係者の意見を聴く機会を設けることについて明記すること。また、移動支援事業、コミュニケーション支援事業、相談支援事業、地域活動支援センター事業などについては、障害者の社会参加と自立生活を維持、向上することを目的として、障害福祉計画の中に地域の実情に応じてこれらサービスの計画期間における数値目標を記載することについて明記すること。さらに、これら障害福祉計画に定めた事項が確実に実施できるよう予算を十分に確保すること。

11 ALS、進行性筋ジストロフィー等の長時間サービスを必要とする重度障害者については、受け入れる事業者が少ない現状にもかんがみ、その居住する地域において必要なサービス提供が遅滞なく行われるよう、社会資源の基盤整備などの措置を早急に講ずること。また、現行のサービス水準の低下を招くことのないよう重度障害者等包括支援や重度訪問介護の対象者の範囲については、重度の障害のある者のサービスの利用実態やニーズ等を把握した上で設定することとし、そのサービス内容や国庫負担基準については、適切な水準となるよう措置すること。

12 重症心身障害児施設の入所者に対する福祉サービスについては、現行のサービス水準を後退させることなく、継続して受けられるよう配慮すること。

13 介護給付等において特別な栄養管理を必要とする場合には、サービス提供に係る報酬面での配慮の必要性について十分検討すること。

14 居住支援サービスの実施に当たっては、重度障害者であっても入居可能なサービス水準を確保するとともに、利用者が希望していないにもかかわらず障害程度別に入居の振り分けが行われることがないような仕組みの構築や、グループホームの事業者の責任においてホームヘルパーの利用を可能とすることなど必要な措置を講ずること。

15 障害者の雇用の促進に当たっては、障害者雇用促進法に盛り込まれている内容等を踏まえ、障害者雇用の場の創出・拡大に一層努めるとともに、雇用促進のための就労支援サービスと福祉サイドの生活支援サービス等が相互にかつ適切に利用できるためのマネジメント体制の充実を図ること。また、就労移行支援については、障害の特性を踏まえた就労訓練期間等が設定されるよう必要な措置を講ずること。

16 障害者の地域生活の充実及びその働く能力を十分に発揮できるような社会の実現に向け、非雇用型の就労継続支援の実施に当たっては、目標工賃水準の設定や官公需の発注促進など、工賃収入の改善のための取組のより一層の推進を図ること。

17 良質なサービスを提供する小規模作業所については、新たな障害福祉サービス体系において、その柔軟な機能が発揮できるよう位置付けるとともに、新たな施設体系への移行がスムーズに行えるよう必要な措置を講ずること。

18 障害者の自立と社会参加に欠かせないサービスである移動支援については、地域生活支援事業の実施状況を踏まえ、必要な措置を講ずるための検討を行うこと。

19 医療法に基づく医療計画とあいまって、精神病院におけるいわゆる7.2万人の社会的入院の解消を図るとともに、それらの者の地域における生活が円滑に行われるよう必要な措置を講ずること。また、精神保健福祉法に基づく医療保護入院の適切な運用について、精神医療審査会の機能の在り方、保護者の制度の在り方等、同法に係る課題について引き続き検討を行い、その結果に基づいて所要の措置を速やかに講ずること。

20 障害者が地域社会で必要な支援を活用しつつ自立した生活を送ることができるようにするため、障害を理由とする差別を禁止するための取組、障害者の虐待防止のための取組及び成年後見制度その他障害者の権利擁護のための取組については、実施状況を踏まえてより実効的なものとなるよう検討し、必要な見直しを行うこと。

21 地域生活支援事業に盛り込まれたコミュニケーション支援事業を充実する観点から、国及び地方公共団体において手話通訳者の育成と人的確保に取り組むとともに、聴覚障害者情報提供施設の設置の推進や点字図書館の機能の充実を図ること。また、視聴覚障害者の通信ネットワークを利用した情報コミュニケーション支援を進めるため、日常生活用具給付事業の対象の見直しの検討など必要な方策を講じ、視聴覚障害者の社会参加を促進すること。

22 市町村の相談支援事業が適切に実施されるようにするため、在宅介護支援センターなど、高齢者に係る相談支援を行う事業者を含め、専門性と中立・公平性が確保されている相談支援事業者に対し、委託が可能であることを市町村に周知すること。

23 本法の施行状況の定期的な検証に資するため、施行後の状況及び附則規定に係る検討の状況について、本委員会の求めに応じ、国会に報告を行うこと。

右決議する。