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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年1月号

自治体の取り組み事例

サービス調整会議と地域での取り組み

滋賀県健康福祉部障害者自立支援課

滋賀県では、昭和56年1月に策定した「滋賀県社会福祉計画」において、社会福祉施策を地域に根ざして推進していくための方策として「福祉圏構想」を掲げました。

これは、市町村単位では解決が困難な課題に取り組んでいくため、当時の県事務所(総合的機能をもつ県の地方機関)管轄単位で県下を7つのブロックに分け、行政や福祉関係団体、県民等が連携し、それぞれの課題に対して広域的に取り組むという考えです。

また、障害者のライフステージに応じた適切なサービスを提供するためには、それぞれの地域の社会資源の状況等に応じた、総合的な障害者サービス提供体制の確立が求められていました。

そこで、本県では平成5年6月に策定した「障害者対策新長期構想」において、障害者地域総合ケアシステムの構築を打ち出し、障害者に対する個別処遇を、福祉、保健、医療、教育等の関係者により検討を行う福祉サービス調整チームを市町村において整備し、福祉圏域の専門機関等と密接に連携した障害者地域総合ケアシステムの構築をめざすこととしました。

このような状況の下で、障害児(者)に関する福祉、保健、医療等の各種サービスを総合的に調整し推進することを目的に、平成7年4月に甲賀福祉圏域にサービス調整会議が設置されました。

さらに、「障害者対策新長期構想」の実施計画として平成9年6月に「淡海障害者プラン」を策定し、地域ケアサービスの実施拠点と地域ケアシステムの具体的推進方策を明記しました。

具体的には、三障害の障害者生活支援センターを福祉圏域ごとに整備する方針を打ち出すとともに、市町村におけるサービス調整チームの機能の強化や、福祉圏域を単位とするサービス調整会議の全県的な整備を図り、関係機関のサービス調整機能の強化に努めることとしました。

その後、平成13年から各福祉圏域のサービス調整会議および生活支援センターに対する巡回支援を、地域ケアシステム推進事業として滋賀県社会福祉事業団に委託し、サービス調整会議の立ち上げや円滑な運営に対する働きかけを行い、現在は7福祉圏域すべてにサービス調整会議が設置されています。

その構成員は行政職員、福祉サービス提供者、教育関係者、障害者生活支援センターの相談員等、家族およびボランティア等であり、利用者のニーズを中心に据えたチームアプローチによる支援策が検討されていることが特徴です。

また、サービス調整会議は、目的、内容および構成員等の違いから個別サービス調整会議と定例サービス調整会議に分かれています。

個別サービス調整会議とは、個別の利用者のニーズの整理、アセスメント、支援体制の確認およびサービス調整を実施する会議であり、その特徴は時間、場所、参加者等を柔軟に設定していることです。

この会議の積み重ねにより、利用者の課題に対応する支援体制づくりに多様な対応や支援を検討することができ、また、それぞれの役割が明確になるとともに、これまで関わりの薄かった関係者に個々の生活支援を通じて、地域生活支援への参画意識が芽生えてきます。

次に、定例サービス調整会議とは地域のすべての関係者が情報と課題の共有、地域資源の点検とサービスの創出を検討する会議であり、主として相談支援者(知的、身体および精神の相談員、雇用支援ワーカー、生活支援ワーカーならびに地域福祉権利擁護専門員等)の活動報告を中心に定例的に行われるものです。

この会議は、行政担当者にとって福祉情報の入手、支援体制の組み立て方の学習および地域資源の状況確認が行え、実践的研修の場となるとともに、福祉関係者から行政への新たなサービス創出の提案の場ともなっています。

このように取り組まれてきたサービス調整会議も、大きな転換期にあります。それは、障害者自立支援法の施行に伴う相談支援事業の再編が予定されているためですが、これはサービス調整会議が次のステップに進むためのよい契機となるのではと考えられます。

これまで相談支援事業については、その実施主体が障害種別により市町村と都道府県に分散していました。

また、市町村合併により総合的機能を持つ県の地方機関による市町村間の調整機能が弱まる中、サービス調整会議の実施にかかる事務局的機能についても、県、市町村および障害者生活支援センター等、どの機関が担うべきなのか議論されるようになっていました。

そうした中、障害者自立支援法では三障害に対応した一般的な相談支援については市町村に一元化されるとともに、市町村において必ず実施しなければならない事業として法定化されました。

これにより、サービス調整会議については、市町村行政や相談支援事業者をその主役とする方向が明確になるとともに、市町村にいい意味の責任感がでてくるのではと期待しています。

併せて、市町村または圏域ごとに設置される指定相談支援事業者を中心とする地域自立支援協議会(仮称)は、これまでのサービス調整会議の機能を発展的に受け継ぐものと考えています。

また、これまでのサービス調整会議の主役であった相談支援者は各法人に属していましたが、その活動の中立・公平性の担保が重要な課題となっていました。

その点、障害者自立支援法においては、相談支援事業者の中立・公平性を担保する仕組み(相談支援事業の運営評価等)が検討され、サービス調整の円滑な実施が見込まれます。

このように、障害者に対する相談支援を含めたサービス調整は市町村の事業となりますが、専門的、広域的相談支援事業については都道府県事業となります。

本県においても、県障害者自立支援協議会を設置するとともに、各福祉圏域内の実態把握および評価を通じて、地域自立支援協議会の立ち上げにかかる後方支援を行います。

また、各福祉圏域間の調整等を行う人材の確保や、相談支援事業従事者の養成を図るとともに、発達障害者支援センター運営事業等の専門的・広域的対応が必要な事業を実施することにより、障害者ケアマネジメント体制の推進を図りたいと考えています。