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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年1月号

列島縦断ネットワーキング【東京】

社会福祉に関する助成
―わが国民間助成財団の現状―

堀内生太郎

障害福祉向上運動の新しい息吹

関係者待望の日本障害フォーラム(JDF)が設立されて1年を過ぎた。その活動でもっとも注目されるのが、国連の特別委員会で進められている障害者の権利条約締結に向けてのロビー活動である。JDFが国連の公認NGOとなり、国連の特別委員会や作業部会に参加することが可能となった。日本代表として障害者の立場から積極的に発言している。

この活動を支援しているのが、キリン福祉財団、損保ジャパン記念財団、トヨタ財団、三菱財団、ヤマト福祉財団の5財団の共同助成である。この共同助成は、JDF準備会の段階の2004年度から始まり、一応3年間の継続助成を行うことで合意されている。民間助成財団の共同助成はこれまでほとんどなく、助成財団界でも画期的な出来事と受け止められている。JDFの設立はわが国の障害福祉を進めるうえで、歴史的な意義を持つと認識しているからだ。

助成財団とは

「助成財団」とは、自然科学や社会科学に対する研究や福祉を含む民間活動に資金助成するほか、奨学金の支給や表彰などを行う財団法人(社会福祉法人を含む)のことを指す。わが国には年間500万円以上を助成する助成財団がおよそ1000団体あり、年間500億円前後を助成している。しかし自然科学の研究助成や育英奨学事業が多く、社会福祉の分野に助成する財団はあまり多くない。

大型財団の誕生

日本経済が発展し、企業が助成財団を設立するようになったのは1960年代の後半からで、1966年に清水建設のオーナー五家で社会福祉法人清水基金を設立、1969年には三菱グループ創業100周年記念で、財団法人三菱財団が設立されている。

三菱財団の助成の中で社会福祉の占める割合は3割以下である。これは社会福祉活動助成が寄付者優遇税制である特定公益増進法人の対象になっておらず、研究助成を主たる助成対象とせざるを得ないからである。民間資金を共同募金や社会福祉法人に集約するという戦後福祉の考え方が、これまでの福祉行政に根強く残っており、それが今日の税制に反映されている。戦後60年、公益法人制度の抜本的改革によって、この考え方が是正されようとしている。

1974年に設立された社会福祉法人丸紅基金は、長引く金利低下の影響にもめげず、商社丸紅の従業員、関連会社等からの寄付金を得て、設立以来30年間、毎年1億円の助成を実現してきた。このような関係者の努力は他に例を見ず、わが国企業の社会貢献活動の中でも特筆大書されるべき活動であるといえよう。

丸紅基金と同じ時期に設立されたのが、国際的にも有名なトヨタ財団である。プログラムオフィサーという助成専門家を置き、社会福祉に関する研究や事業に対して幅広い助成を行ってきた。

1975年頃から障害者福祉への対応がクローズアップされてきた。小規模作業所が誕生し、障害者の義務教育がスタートしたのもこの時期である。1981年の国際障害者年の前後には障害者福祉を対象とする助成財団の設立が盛んになってきた。この時期に設立された福祉関係の有力な助成財団は別表の通り。障害者団体の方々にとっては、馴染みのある財団ばかりではなかろうか。

年次別助成財団設立一覧表

1972年 みずほ教育福祉財団
1974年 大同生命厚生事業団
1975年 車両競技公益資金記念財団
三井住友海上福祉財団
1977年 損保ジャパン記念財団
1979年 日本生命財団
1980年 みずほ福祉助成財団
1981年 キリン福祉財団
1984年 太陽生命ひまわり厚生財団
日本社会福祉弘済会
1985年 大阪ガスグループ福祉財団

1990年代のバブル崩壊後は、助成財団の新設が事実上ストップした。その中でボランティア活動支援に特化した大和証券福祉財団が1994年に、翌1995年にはヤマト福祉財団が誕生している。故小倉昌男氏が私財を投じて設立したヤマト福祉財団は、障害者福祉活動の助成以外に小規模作業所の職員を対象にパワーアップセミナーを開催し、また障害者が働く場として、スワンベーカリーのチェーン展開を図っている。

低金利による助成金の減少傾向に反比例して、助成金応募者は増加している。各財団とも、甲乙つけがたい優秀な案件の競争が展開している、と理解してほしい。

助成財団や助成金に関する情報は、各地のNPOセンター等のホームページに記載されているが、その基礎資料となるのが助成財団センターのホームページ(www.jfc.or.jp)である。また助成財団センターで毎年発行している「NPO・市民活動のための助成金応募ガイド」(センター直販:定価2000円税込、B5判、送料別)は、申請手続きの解説なども掲載されており、助成金を求める人々のバイブルとなっている。

新しい募金・助成団体の誕生

公益法人制度改革で今後、助成財団も大きく変わろうとしている。わが国では大阪に一つしかないコミュニティ財団が今後全国各地に設立され、これまでの共同募金に変わる新しい募金団体(助成財団)として発展する時代が到来するのではなかろうか。

(ほりうちせいたろう 財団法人助成財団センター専務理事)

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