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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年1月号

列島縦断ネットワーキング【東京】

日本発達障害ネットワーク(JDDネット)の発足

山岡修

1 日本発達障害ネットワーク(JDDネット)とは

2005年12月3日、「発達障害者支援法」が国会で成立してからちょうど1年のこの日に、日本発達障害ネットワークが発足した。

JDDネットは、従来制度の谷間に置かれ支援の対象となっていなかった、あるいは適切な支援を受けられなかった、自閉症、アスペルガー症候群その他の広汎性発達障害、学習障害、注意欠陥多動性障害等の発達障害のある人およびその家族に対する支援を行うとともに、発達障害に関する社会一般の理解向上を図り、福祉の増進に寄与することをめざしている。

また、JDDネットは、アスペ・エルデの会、えじそんくらぶ、エッジ、全国LD親の会、日本自閉症協会の発達障害関係の当事者団体が発起団体となったが、発達障害関係の全国団体・地方団体や発達障害関係の学会・研究会、職能団体なども含めた、全く新しいスタイルの幅広いネットワークであり、障害の種別、学会・学派、職種、立場や主張、地域等の壁を越え、当事者支援を主眼に置いたネットワークである。

2 日本発達障害ネットワーク(JDDネット)発足の経緯

自閉症、アスペルガー症候群等、LD、ADHD等は個々の障害種ごとに特性があるが、互いに重複、移行、連続性があり、また国や自治体に求める教育・福祉等の制度の大枠では共通点が多く、発達障害として一連のグループとして捉えることができる。

一方、わが国ではDSM―4が採用された1990年代後半以降診断名が細分化され、親の会等の支援団体も分裂していき、しかもバラバラに活動している状況が続いていた。このような状況を踏まえ、5年くらい前に当事者団体等で勉強会を始め、共同で要望書を提出したりする活動に発展し、それが特別支援教育の進展や発達障害者支援法の成立に繋がる動きになっていった。

また、特別支援教育や発達障害者支援を国が事業化する段階で、教育・福祉・医療・労働等の連携・ネットワークの重要性が指摘され、最近は各県が設置する協議会の大半に親の会やNPO法人が参加するようになってきている。親の会や当事者団体も、要望する一方ではなく、支援が必要な根拠を示したり、必要な提言・協力を行ったりするなどの参画を求められる時代になってきており、ここ数年で親の会等の当事者団体と行政の関係が大きく変化してきているのである。

このような時代の変化を受けて、当事者団体だけでなく学会や職能団体も参加できる、全国団体だけでなく地域で活動する小さな団体も参加できる、発達障害に関係するすべての団体が参加できるようなネットワークを作りたい。これがJDDネットの基本的な考え方であった。

3 日本発達障害ネットワーク(JDDネット)の概要

12月3日、成蹊大学で設立協議員総会を開催し、会則の制定、役員の選任、活動方針案等を採択した。当日、第1回理事会を開催し、正会員(全国団体)として日本LD学会、日本自閉症スペクトラム学会、日本臨床心理士会、全国ことばを育む親の会の4団体、エリア会員(地方団体)として、NPO法人おひさまクラブ等28団体の加盟が承認され、設立当初の参加団体は、発起団体も含め37団体となった。また、日本児童青年精神医学会、日本作業療法士協会等から理事をご推薦いただくことができた。

これにより、当事者団体・学会・職能団体によるネットワーク、教育・医療・労働・福祉を網羅するネットワーク、全国団体・エリア団体を超えたネットワークというすべての条件を最低限備えたネットワークとしてスタートすることができた。

当面の活動としては、都道府県単位のエリア活動の組成、会報の発行等による会員団体相互の交流・情報交換、特別支援教育や発達障害者支援への取り組み状況調査、発達障害に関する理解啓発活動、他の研究機関や参加団体と協力した発達障害児者の実態調査、実態把握のためのスクリーニング・ツールなどの検討、人材育成のためのセミナーなどの実施などを計画している。

4 設立記念フォーラムの開催

設立総会の当日、成蹊大学で「日本発達障害ネットワーク設立記念フォーラム」を開催した。フォーラムでは、「発達障害をめぐる理解と課題」をテーマに、基本概念を栗田廣氏、医療、連携の課題を田中康雄氏、教育・心理の課題を上野一彦氏による講演を3演題、文部科学省と厚生労働省による「発達障害への国の施策の現状と今後の方向」に関する行政解説を行った。また分科会として、教育、生活支援、就労、母子保健をテーマとしたシンポジウムを4演題を行った。発達障害の各分野の一線で活躍する講演者や出演者がそろったことから、当日は約650人の参加者があり、各会場とも立ち見が出るほどの盛況で、熱気に溢れた充実したフォーラムとなった。

5 JDDネットが目指すもの

特別支援教育の推進や発達障害者支援法の施行により、発達障害者に対する取り組みや理解は格段と進展してきたが、まだまだ未完成である。発達障害のある子どもたちは、「何を考えているか分からない」と見られてしまうこともあるが、言葉が出なくても、表情が乏しくても、実は繊細でいろいろな才能を持った子どもたちなのである。また、「やる気がない」と誤解されることもあるが、本当はこの子どもたちは、「僕も勉強ができるようになりたい」「私も褒められたい」「仕事ができるようになりたい」「一人暮らしをしてみたい」「結婚したい」という気持ちや夢を持っているのである。発達障害のある当事者と家族が夢を持ち、充実した社会生活を送れるようになることを、そしてそれに関わるすべての関係者の発展に繋がることを目指し取り組んでいく方針である。

6 JDDネットへの入会のお勧め

JDDネットは、当事者団体、学会、研究会、職能団体等、発達障害に関係する非営利の団体であれば加盟ができる新しいスタイルのネットワークである。また全国団体だけでなく地域で活動する小さな団体も全国団体等の支部でなければ、直接JDDネットに参加することが可能であり、多くの団体に入会いただければ幸いである。

JDDネットは全国的な活動だけではなく、各地域での加盟団体の交流・連携・情報交換などの活動に力を入れていく方針であり、JDDネット青森、JDDネット東京等の都道府県単位のネットワーク作りを進める予定である。

入会方法、その他詳細については、JDDネットのHP(http://jddnet.jp/)をご覧いただきたい。

(やまおかしゅう 日本発達障害ネットワーク代表)