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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年2月号

1000字提言

緊急時に安心して頼れるサービスを

原田みち子

地域で生活する身体障害者や知的障害者のほとんどが家族と同居し、家族の支援で生活している。その家族に緊急事態が起こったとき、障害者はどうすればいいのだろうか。

利用できるサービスに、「ショートステイ」がある。施設が受け皿ということなのだが、これがなかなか緊急時に使えないのである。

まず絶対数が足りない。日中活動がある平日の利用希望者は少ないが、日中活動のない週末に利用希望が集中するため、希望が通りにくい現状があり、週末の緊急時には空きがないのである。

またある程度長い時間を過ごすのだから、地域の馴染みのある場所がいいのだが、地域の受け皿が少ないことから、空きを探して片っ端から電話をかけることになる。どんな人がいるどんな雰囲気の所かも分からずに探すというのは、利用者にとっては大きな負担である。

さらに利用者が施設を選べずに、施設が利用者を選ぶという現実がある。手のかかる利用者は敬遠される傾向がある。特に医療行為を必要とする利用者の受け皿がほとんどない。病状が安定していれば、入院の対象にもならないので、行く先がないのである。強度行動障害をもつ利用者もなかなか受け入れてもらえない。こちらは逆に、病気でなくても精神科の病院に入院せざるを得ないことがある。

施設側からすれば、ショートステイに対応するための人員配置があるわけではないのだから、入所利用者だけで手一杯なのである。反対にショートステイ利用者からすれば、居候のような肩身の狭さがある。老人と違い、障害者の現場では、まだまだ競争原理が働かないようである。

施設を利用しない場合、レスパイトサービスである生活サポート事業の利用が考えられる。こちらは24時間365日対応をうたっているので、利用可能と思われる。対応は一対一が基本なので、利用者中心のサービスが受けられる。しかし1時間あたり700円の利用者負担があり、長時間(宿泊等)の利用には経済的な負担が重い。

そこで提案したい。生活サポートのステーションをショートステイと同じように(公費と利用者負担額について)利用できるシステムが作れないだろうか。あるいは緊急時ショートステイを断らない委託施設を設置すべきではないか。地域で安心して暮らすために必要なことと思うのである。

(はらだみちこ 高崎・安中圏域障害者相談支援センター相談員)