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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年2月号

障害こと始め

障碍

新門登

「障碍者」の「碍」について、広く世間一般には「障害者」の害が使われていますが、「害」と「碍」は共に「がい」と読みます。読みは同じでも「妨げ」と「害」では、受ける印象もかなり異なり、「害」は「公害」「薬害」「害虫」「災害」「有害」等、悪いイメージに使われています。

本来、「障害」という字は「障礙」と表され、「妨げる」という意味の「礙」が略字の「碍」になり、常用漢字の制限で音読みが共通の「害」と表記されるようになったそうです。また「害」という字は、物事を「傷つける」という意味もあり、「障害」が他者に害を及ぼすとでも言いたかったのでしょうか。このような、乱暴な書き換えが何者かによって行われ、それが今でも何の疑問もなく使われてきているのです。

私たち自立生活センター・イルカでは、任意団体の頃に「碍」の字を使い始め、説明としては電柱の電気を遮断している瀬戸物の碍子の「碍」ということで『障碍者は社会的障壁(碍=環境・制度・心の壁)があるために、地域で市民と平等の生活を送れないでいる』という意味での「碍」を使ってきました。

しかし、個人的な見解としてポジティブに考えを変えてみると、碍子は電気を遮断するという意味と、ショートを防ぐ絶縁体という役割もありますので、『障碍者は、地域の中でいろいろな妨げに気づき、人々が安心して生活できるような存在でありたい』と伝えるようにしています。

障碍者は、重度になればなるほど多くの「妨げ」をもっていますが、決して他人を「害して」はいないからです。

最後に、障碍者団体や福祉関係の集会で、耳にすることですが、『障碍者の皆さん…』とあいさつを行う人がよくいます。ところが、一般の集まり等では『健常者の皆さん…』なんてあいさつしている人がいないのはなぜなんだろうと、疑問に思うのは私だけでしょうか?

(しんもんのぼる 沖縄県自立生活センター・イルカ代表)