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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年8月号

夢が実現、10年後の私

現実と夢

茅原康弘

私は重度の障害のある者です。脳性マヒで緊張が強くて、言葉を話すことができません。普段のコミュニケーションはトーキングエイドと、指で文字を書いて会話をしています。仕事は自立生活センター・昭島で働いています。そこでは、障害のある人の自立生活プログラムを考えたり、これから一人暮らしを考えている人たちに対して、自分が一人暮らしをしていた時の体験などをアドバイスしています。

夢のコミュニケーション機器

私の家族は、妻と息子の3人です。息子は今年の4月に小学校に入学しました。やはり子どもが大きくなるにつれて、コミュニケーションがなかなか難しいと感じています。最近は身振り手振りで子どもも私が言いたいことは分かるようになってきましたが、勉強をしなさいとか、学校でどんなことをやったかなどの話になると、妻や介助者を通して代わりに子どもに言ってもらいます。

息子は成長していくにつれて徐々に親の言うことも聞かなくなるし、自分の思いとは反することも多くなってくるでしょう。反抗期になると言うこともますます聞かなくなるのが、これからの課題でもあります。

親として、自分の考えていることを直接息子に伝えたいし、毎日のちょっとしたできごとを気軽に話したいと思っています。そこで、心の中で考えていることを読み取ってしゃべる機械があればと思っています。思ったことをすぐに伝えたいし、その時々の気持ちに合わせ、うれしい時や悲しい時、怒った時の声を表せるものがあるといいなと思います。

この機械は音量も調整できて、静かなところで声を出しにくい状況では、ディスプレイに文字表示できる方法に変換できれば、どこでも気兼ねなく話が伝わるし、さらに思ったことが英語に自動変換できれば、もっとすごいですね。海外旅行だって会話の心配もなくいけそうです。

自分で車を運転したい!

それともう一つは、自分で車の運転をできるようになりたいのです。障害者が運転できる車はすでにありますが、私は体の緊張が強く、大きな音がするとびっくりして体が反応してしまうので、「ハンドルを握って運転」というのは難しいです。運転免許を取るのには障害のない人より時間がかかりますし、車を障害に合わせて仕様を変更するとお金も余計にかかります。

そこで私は、特に車の改造をしないで乗れるようなものを運転したいと思います。現実的には難しいと思いますが、車いすごと乗れて、車の操作は行き先を入力するとナビゲーションシステムが自動運転をし、交差点での停車や発進などは、自分の意志を受信できる装置が搭載してあって自動運転する車があったらいいですね。

トライ・チャレンジ・エンジョイ精神で

最近は、どこに行くのでも多目的トイレや駅にエレベーターが増えてきて、便利になりました。路線バスにもノンステップバスが増えて、利用しやすくなってきたので、車いすでも出かけやすくなってきました。家にいるとどうしても閉じ込もりがちになりますし、障害者がどんどん外出をしなければ、街も変わってはいきません。体調にもよるのですが、私はこれからもどんどん出かけて行こうと思っています。

今は自分がやりたいことができる時代でもありますので、いろんなことをやって行きたいと思っています。現在、私は障害者プロレスをやっていて今年で10年になります。これからもいろんなところに興行に行って、全国に障害者プロレスを広めていきたいし、世界中を回りたいと思っています。

最近、福祉制度が厳しくなってきましたが、せっかくの人生なのだから、いろんなことにトライ、チャレンジ、エンジョイしていきたいと思います。

10年後は、大学受験を控えた息子と将来のことを語り合い、自分の運転する車で家族で日本一周の旅をすることが私の夢です。

(かやはらやすひろ 自立生活センター・昭島)