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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2006年8月号

列島縦断ネットワーキング【兵庫】

広がる視覚障害者サッカー

細川健一郎

視覚障害者サッカーとは?

視覚障害者サッカーはフットサル(1チーム5人、20m×40mのピッチ、W3m×H2mのゴールを使ったミニサッカー)をもとに、視覚障害者でも実施できるようルールを変更したものです。

視覚障害者サッカーには光覚(光を感じることができる)以下の視力を対象としたクラス(以下、B1クラス)と、手動弁(眼の前で手を動かすのがわかる)以上の視力を対象としたクラス(以下、B2/B3クラス)の二つがあります。言い換えればB1クラスは全盲プレーヤーが競技するためのものであり、B2/B3クラスは弱視プレーヤーが競技するためのものです。

B1クラスのフィールドプレーヤー4人はアイマスクをしてプレーしなければなりません。ゴールキーパー一人は弱視者(ボールが視覚的に確認できる者)、または晴眼者が実施します。

競技方法はフットサルを基本として、1.ボールに音源を入れる、2.相手ゴールの後ろにゴール位置などを指示するコーラーを配置する、3.サイドライン上に高さ1m程度のフェンスを置き、ボールがピッチ外へ出るのを防ぐ、4.ゴールキーパーの動ける範囲を制限する、などの変更を行い、視覚障害者でも楽しめるようにしています。

B2/B3クラスについては、キーパーの動ける範囲がペナルティーエリア内に制限されているという点を除けば、ほぼフットサルのルールと同じです。

世界における視覚障害者サッカー

視覚障害者によるサッカーは古くから世界各地で独自のルールのもと、楽しまれていたと考えられますが、世界の共通したルールとして、IBSA(International Blind Sports Association:国際視覚障害者スポーツ協会 以下、IBSA)が定めているものの原型は1980年頃にスペインで始まりました。IBSAでルールが定められた後、ヨーロッパや南米などにそのルールが広がり、1998年にはブラジルで第1回視覚障害者サッカー世界選手権大会が行われ、その後、2年ごとに開催されています。また、パラリンピックでは2004年のアテネから正式種目として実施されるようになりました。

アジアでIBSAルールによる視覚障害者サッカーが行われたのは、1995年韓国が始まりと言われています。韓国ではサッカーが国民的なスポーツとして支持されていることから、瞬く間に視覚障害者の人気スポーツとして韓国全土に広がりました。ソウル市内には視覚障害者専用サッカー場も設置されています。

現在は日本、韓国、ベトナム、中国などのアジア諸国を含め世界30以上の国で楽しまれる世界的なスポーツになっています。

日本における視覚障害者サッカー

日本では1990年頃、県立千葉盲学校でサッカーチーム「ペガサス」が結成され、独自ルールのもと、活動が行われていましたが、児童・生徒数の減少などで、2000年には活動が停止していました。

2001年9月に日本から韓国に7人の視察団が渡り、IBSAルールに則った視覚障害者サッカーの情報収集と韓国視覚障害者サッカーチームとの交流を実施しました。そして、同年11月に大阪で視覚障害者サッカー体験講習会が開催され、日本での本格的な普及と選手の育成が始まりました。

2002年10月、日本視覚障害者サッカー協会(以下、JBFA)が発足、現在は国内の普及や選手強化の中心的な役割を担っています。

2003年3月に、第1回視覚障害者サッカー日本選手権がB1クラス対象に行われ、4チームが参加しました。第3回大会では、B1クラスに加えて新たにB2/B3クラスも行われ、B1クラス8チーム、B2/B3クラス3チームが参加しました。以降、国内の普及が進むにつれ参加チームも徐々に増え、2005年の同大会には、B1クラス9チーム(東京3チーム、千葉、埼玉、茨城、京都、大阪、福岡各1チーム)、B2/B3クラス4チーム(東京2チーム、埼玉、兵庫各1チーム)による熱い戦いが繰りひろげられました。

日本チームの新たなる挑戦

2005年8月、ベトナムホーチミン市において第1回アジア視覚障害者サッカー選手権大会(B1クラス対象)が開催され、日本チームは初代アジアチャンピオンの座に輝きました。結果、2006年11月にアルゼンチンで行われる視覚障害者サッカー世界選手権大会の出場権を手に入れました。同大会は世界から選抜された8か国により競技が行われ、「もう一つのワールドカップ」とも言えるものです。

アジアチャンピオンという夢が実現した今、次の目標を初めて参加する世界選手権大会と定め、選手は日々、練習に励んでいます。日本代表チームがスペイン、ブラジル、アルゼンチンなど世界の強豪国とどれだけ戦うことができるか、日本チームの新しい挑戦が始まっています。

競技の魅力

視覚障害者サッカーの魅力の一つはピッチを自由に動き回ることにあります。特に、B1クラスに該当する視覚障害者が、20m×40mのような広いピッチを自らの判断で自由に動くことができるスポーツは、この競技以外にはほとんどありません。

また、イマジネーションが競技力には欠かせないものであり、プレーヤーにとってはもう一つの大きな魅力です。B1クラスのプレーヤーは、アイマスクをした状態で常に位置を変える自チームや相手チームのプレーヤーのポジションを考え、声掛けをし、ドリブル、パス、そしてシュートをします。これにはピッチにおける自分のポジション、他のプレーヤーとゴールの位置を頭にイメージすることが必要です。この競技の難しさですが、楽しさの一つでもあります。

これらが多くの視覚障害者を魅了し、世界的にみれば、最も多くのプレーヤーがいる視覚障害者ボールゲームになった理由でしょう。

みなさんも、一度、この競技をご覧になってください。その迫力のある力強いプレーに魅了されるはずです。詳細はJBFAホームページを参考にしてください。

(ほそかわけんいちろう 日本視覚障害者サッカー協会事務局)

●日本視覚障害者サッカー協会(JBFA)
http://www.b-soccer.jp/