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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年1月号

重点連載 障害者自立支援法と自治体施策

可児市における障がい者の就労支援事業について

可児市

1 障害者自立支援法の施行を受けて

平成18年4月1日から障害者自立支援法が施行され、障がい福祉サービスの利用者の負担について、利用したサービスの量等に応じた公平な負担を求める考え方のもとでこれまでの応能負担から定率負担(サービスに通常要する額の原則1割負担)への制度へ変更されました。

こうした障がいのある方への利用者負担制度の実施とともに障害者自立支援法では、今後の障がい福祉に関して、いくつかの指針が掲げられています。障がいの種別にかかわらず、一元的にサービスを提供し、支援するシステムへ移行することや、地域の限られた社会資源を活用できるように規制緩和を進めること並びに公平なサービス利用のための手続きや基準の透明化、明確化、そして障がいのある方がもっと働ける社会への実現に向けて、雇用、教育、福祉の各分野が連携して福祉的な就労から一般就労への移行を推進し、ハローワークと福祉施設との連絡調整を強化させることが市町村の責務とされています。

2 可児市の福祉的就労の現状について

可児市においては、平成18年6月1日現在、福祉的な就労の場において通所により作業訓練を受けている障がいのある方は、市内外合わせて9施設、57人となっており、近年、福祉的就労の場から一般就労へ進むことはとても困難な状況となっていました。

このような状況の中で、当市においては、市が設置し、指定管理者として可児市社会福祉協議会が運営・管理している「ふれあいの里可児作業所」と、社会福祉法人 可茂会が運営する「可茂学園」の二つの知的障害者通所授産施設・更生施設があります。いずれの施設も同様に厳しい就労移行状況となっており、施設設置者の市としても何らかの施策を講じる必要性を感じていたところでした。

3 可児市の通所授産・更生施設利用者に対する就労支援事業

こうした現状を踏まえ、当市においては障がいのある方の地域生活支援の一環として、福祉的就労の場において、一般就労に向けて作業訓練を受けている方へ、どのような支援策が実現可能であるか、模索していたところ、障害者自立支援法の施行に伴う利用者負担額の見直しにより、障がいのある方の就労意欲を阻害する要因が発生しました。

そこで、通所授産・更生施設を利用する障がいのある方の利用者負担額や通所施設への利用状況などを精査した結果、利用者負担額が工賃を上回る実態が明らかになり、また通所施設への利用を取りやめる方も出てきました。また、市議会において通所施設の利用者に対する自己負担の軽減措置を求める要請があり、さらに、通所施設の保護者会からも利用料助成に関する要望書が提出されました。

こうした経緯から、利用者負担について検討を行った結果、通所施設の利用に対して、利用者負担額を求めることは障がいのある方の自立を支援する法の趣旨からも適当ではないと考えるにいたり、平成18年10月から当市の独自施策として、通所施設の利用者負担額の全額助成制度を実施することとしました。

4 地域生活支援事業の利用者負担額の軽減制度等

当市では、その他、地域生活支援事業における利用者負担額の軽減措置を設けています。その概要は次のとおりです。

(利用者負担額を無料としているもの)

  • 相談支援事業
  • コミュニケーション事業
  • 地域活動支援センター

(個別給付と合算して月額上限負担額を設定しているもの)

  • 移動支援事業
  • 訪問入浴サービス事業
  • 日中一時支援事業
  • 生活サポート事業
  • 経過的デイサービス事業

(個別に月額上限負担額を設定しているもの)

  • 日常生活用具等給付事業

また、可児市養護訓練センター(児童デイサービス)の利用者負担額についても、無料としています。

5 今後に向けて

本市では、障がいのある方の就労環境が整うまでの経過的措置として、利用者負担額を全額助成する就労支援制度を創設しました。今後とも、地域社会における障がい者の自立を支え、福祉的な就労の場における就労支援を強化するとともに入所生活から地域生活への移行を促進する施策を推進し、当事者、福祉施設、ハローワーク、相談支援事業者、市の関係部署等の連携を一層深め、地域社会で暮らす障がいのある方の自立に向けた就労支援システムを確立したいと考えています。

(岐阜県可児市健康福祉部福祉課)