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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年2月号

八都県市首脳会議と障害者自立支援法の取り組み

さいたま市

1 八都県市首脳会議のあらまし

八都県市首脳会議は、埼玉県、千葉県、東京都及び神奈川県の知事並びに横浜市、川崎市、千葉市及びさいたま市の市長で構成され、八都県市の首長が長期的展望のもとに共有する膨大な地域活力を生かし、人間生活の総合的条件の向上を図るため共同して広域的課題に積極的に取り組むことを目的として、昭和54年7月に設立されました(当時は六都県市首脳会議として発足)。首脳会議の下には、担当部局長で構成する委員会等を設置するとともに、その下に担当課長や実務担当者で構成する幹事会、部会等を設置し、首脳会議の運営や広域的課題に関しての具体的な調査・検討・協議等を行っています。また、首脳会議において協議し、集中して検討を行うことと決定した項目については、首都圏連合協議会で検討を行っています。

2 さいたま市の提案

昨年秋(11月15日)に開催された第50回八都県市首脳会議において、さいたま市長は、八都県市で「障害者自立支援法に関する調査・研究」を行うことを提案し、賛同をいただきました。

この法律は、これまでの障害種別にかかわらずサービス利用の仕組みが一元化されたことをはじめ、福祉施設から一般就労への移行を進める事業に重点を置いたことなどの改革がなされた一方で、利用者負担については、これまでの応能負担から、利用したサービスの量に応じて負担する仕組みとなりました。

利用者負担については、低所得者に対するさまざまな軽減策が講じられてはいますが、特に、これまでの支援費制度において、食費等を含めて利用者負担がゼロであった方々の負担感は大変大きく、障害者団体等はその見直しを強く要望していました。本市が行った独自の調査でも、法施行後のサービス利用は全体的に減少し、その影響を受け、市内施設の収入も減収となっていました。また、利用者アンケートでは、全体の8割の方が法施行により負担が増え、家計への影響があると回答しながら、実際にサービスの量を減らした方は3割で、6割の方は、サービスの量はあまり変わらないとの回答でした。家計への影響が大きくても、生活するために、サービスを利用せざるを得ない方々が、多くいるということが伺えました。

提案した時点では、東京都、横浜市、川崎市など、八都県市の中でも、すでに独自の利用者負担の軽減策を講じている自治体がありましたが、本市においても、昨年の9月定例会において、障害者自立支援法関連の条例改正に対し、「法の趣旨を踏まえ、本市独自の激変緩和策を講じること」という付帯決議が採択されたことを受けて、対応のための措置を検討していました(12月定例市議会において激変緩和策を措置済)。法に基づくサービスの利用者負担は、本来は、全国統一的な基準で行われるべきものではありますが、制度の急激な変更によって、サービスの利用の抑制や、そのことによりサービスの基盤である施設の運営が不安定になることが生じては、法の趣旨が生かされないことにもなりかねません。

このように、法施行後まもない時期であるにもかかわらず、地方自治体に、この法律の課題への対応が迫られていました(提案した時点では、国の動きはみられなかった)。また、障害者の所得保障については、法律では就労支援を強化する方向性は示されていましたが、現段階において、その具体的な施策は明らかにされていません。障害者がサービスを選択し、費用を負担するためには、就労支援を含む所得の確保が何より必要です。

そこで、八都県市において、この法律に基づくサービス利用等の現状や課題を共有し、施行後3年を目途に予定されている国の見直しに際し、より障害者の実情を踏まえたものとなるような効果的な仕組みや運用についての提案活動が実施できるよう、早期に共同で調査・研究を開始していくことを提案しました。

3 今後の取り組み

課題の整理につきましては、現在、研究を始めて取り組んでいますが、提案時には、次の二点を「視点」としてあげました。

一つは「障害者の生活実態に合った、適切なサービス利用ができる仕組みの検討」です。利用者が、サービスに見合うある程度の対価を負担することは、サービスの質の向上を図るためには必要であり、また、利用者負担のあり方も、他の制度と同様の考えとすることはだれにもわかりやすく、多くの市民に理解されやすいとも考えます。しかし、障害者の生活実態により即した負担のあり方とすることが必要であります。

二つ目の視点は「障害者の生活の安定のため、就労支援と所得確保の方策の検討」です。できるだけ多くの障害者が就労し、できるだけ多くの収入が得られるような具体的な方策や、具体的な所得確保の方策の検討が必要です。法律の附則には、この障害者自立支援法や他の障害福祉に関する法律の施行状況等を勘案した見直し、また、障害者の所得の確保に関する施策のあり方について検討し、見直すことが規定されています。

この二つの視点から、八都県市でまとまって、どこに問題があり、どのような対応で改善できるのかなどを国に提案・要望することは、国の見直しに影響力を及ぼすことが期待できるため、国の動向を注視しながら取り組んでまいります。