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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年2月号

宮崎市における負担軽減策

宮崎市

宮崎市の概要

本市は、九州の南東部、宮崎県のほぼ中央に位置する太平洋(日向灘)に面した県都であります。

平成10年4月に中核市へ移行し、18年1月1日には近隣三町と合併し、人口約37万人、面積約600平方キロメートルを有する南九州の政治、経済、文化の拠点となっています。

また、年平均気温17度に加え、特に、秋から春にかけての晴天が多いため、園芸や畜産などの農業が盛んで、プロ野球巨人軍やソフトバンクのキャンプ、男女プロゴルフのビッグトーナメント、プロサッカーや学生・社会人による各種キャンプなどのメッカとしても注目されております。

福祉においては、現在3期目の津村重光市長が、平成6年2月の就任当初から「九州一の健康福祉都市」づくりを基本目標に掲げ、以来保健・医療・福祉の一体化により連携強化を図りながら、積極的な取り組みを行ってきました。

また、平成12年12月には、すべての市民が尊重され、地域でともに支え合い、健やかに生きがいを持って暮らせる社会の実現を目指し、「宮崎市福祉のまちづくり条例」を制定し、“市民協働による福祉のまちづくり”を推進しているところであります。

本市の障害者の状況ですが、平成18年4月1日現在の手帳所持者数は、身障14,853人(うち1・2級7,212人)、療育2,105人(うちA1,065人)、精神1,014人(うち1級77人)となっています。

負担軽減策検討の経緯

平成15年4月に始まった支援費制度により措置から契約に変わり、障害者自らが必要なサービスを利用し、生きがいを持って自立した生活が徐々に実現できるようになってきたのではないかと思いますが、早くも3年で障害者自立支援法に移行することになったわけであります。

精神障害者を含む三障害の一元化や国負担の明確化、就労支援の強化など、評価される面も多いわけですが、所得に応じた負担から原則1割の定率負担となり、やはり利用者にとっては厳しい見直しとなったようであります。

本市においても、昨年2月以降さまざまな団体等から負担軽減に対する要望が届くようになりました。

具体的な制度内容がなかなか見えなかったこともあり、本市では4月の制度開始にとにかく間に合わせるのに精一杯というのが当時の状況であり、利用者負担の問題は、4月以降の実績を見て判断していく、というのが実際のところでありました。

そして、支援法が施行され、負担軽減を行う自治体が紹介されるようになり、本市としても障害者団体や議会の要請を踏まえ、他都市の状況や利用実態等を調査・分析するなどして、負担軽減策の必要性、考え方、具体的な内容について、検討を行ったわけであります。

その際、本市の場合は、市役所だけではなく、障害者団体の役員や事業所の職員、コーディネーター等、外部のメンバーを含むワーキンググループで検討・協議したことが少し特徴的な点ではないかと思います。

また、検討の過程で18施設に対し、利用者及び施設へのアンケートを行うとともに、グループを5班に分けて直接訪問し、施設職員や利用者・保護者の代表と意見交換も行いました。

なお、グループは負担軽減策のためだけではなく、今年度中に策定する障害福祉計画と地域生活支援事業のあり方を検討するために設置したものです。

そして、最終的に各種団体の長や事業者代表、学識経験者等で構成する障害者施策推進協議会(公開開催)の意見も聴いたうえで軽減策を決定しました。

図 宮崎市独自の負担軽減策のイメージ拡大図・テキスト
○『高額障害者福祉サービス費』…同一世帯内に介護サービス利用者と障害福祉サービス利用者がいる場合、または、一人で複数の障害福祉サービスを利用する場合、負担上限月額を合算して適用し、超過分を償還払いする。

負担軽減策における考え方

本市の基本的な考え方は、「法施行に伴う制度移行を緩やかに行うための経過措置」であります。また、障害者の置かれている社会的状況も踏まえ、「金銭給付から介護給付等のサービス提供システムへのシフト」も大きな目的としております。

そこで、1.法の趣旨を尊重し対象は在宅者に限る、2.段階的に国の制度に移行する、3.より多くの利用者を対象とする、という方針に致しました。

まず、1については、照会した他の自治体もすべて在宅者に限った軽減策であったと思います。2については、当初は実施期間を3年間とする方向で検討しておりましたが、財政当局との協議等の中で2年間となりました。

この実施期間は障害者施策推進協議会でも大きな論議となり、結局、そのあり方を1年後に再度協議するということで了承をいただきました。

3については、負担上限月額を2分の1にする自治体もありますが、その方法による試算では対象者が1割に過ぎないため、すべての利用者が軽減対象となるよう実際の利用者負担額の一部を助成する方法に致しました。

〔低所得2〕(負担上限額24,600円)の場合の例
図 〔低所得2〕(負担上限額24,600円)の場合の例拡大図・テキスト

具体的な負担軽減策の内容

以上のような検討の結果、本市では昨年の9月に要綱を制定し、次のような負担軽減策を行っております。

(1)居宅系の障害福祉サービスについて、実際の利用者負担額のうち、平成18年10月から19年2月利用分は2分の1、19年3月から20年2月利用分は、3分の1を助成する。

(2)地域生活支援事業のうち、外出介護、日中一時支援、経過的デイサービス等の給付事業(原則1割負担)及び障害児通園事業も(1)の対象とする(日常生活用具は除く)。

(3)同一世帯において介護保険サービスとの重複利用や複数の障害福祉サービス利用の場合の上限の合算管理(超過分は高額障害福祉サービス費支給)について、(2)の事業(通園を除く)及び補装具も含めて適用する(超過分は市負担)。

4月の利用実績に基づく試算では、対象者約710人、助成額約4500万円と見込んでいます。

なお、本市の軽減策は近隣町をはじめ県内のいくつかの市町にも波及しており、また、県外からも何件か問い合わせをいただいたところであります。

今後の課題

本市では、介護給付費等の支払いは利用2か月後の月末であり、新体系が本格実施となった10月利用分を昨年末に支払ったところです。その詳細データは現在集計中ですが、軽減策のあり方について1年後に再度協議いたしますので、今後の実績推移を十分に把握・分析していかなければならないと思っております。

また、ご存知のとおり昨年11月末に国の新たな支援策が明らかになり、経過措置が講じられるようであります。利用者や事業者にとっては良い話だと思いますので、今後の動向を見守りたいと思っています。

いずれにしましても、国や地方の厳しい財政状況を背景に今後の社会保障制度の見直しが大きな課題となる中、障害者施策においては、真のノーマライゼーションの実現を目指し、将来にわたって持続可能な制度の確立、サービスの利用環境の整備や負担のあり方等について、十分な論議が必要であると思います。

また、国県はもとより利用者に最も身近な市町村においてもいろいろと知恵を絞りながら、障害者に対する効果的な支援策を積極的に講じていかなければならないと考えております。

(宮崎市福祉部障害福祉課)