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「ノーマライゼーション 障害者の福祉」 2007年2月号

列島縦断ネットワーキング【神奈川】

「障害学生修学支援ネットワーク」による相談事業の開始について

独立行政法人 日本学生支援機構特別支援課

はじめに

平成17年度に独立行政法人日本学生支援機構/JASSO(以下、JASSO)が実施した「大学・短期大学・高等専門学校における障害学生の修学支援に関する実態調査」(約1200校に調査、回収率90.5%)によると、障害のある学生が在籍していないと回答した大学、短期大学、高等専門学校(以下、大学等)は、全体の約4割を占めていることがわかりました。このことは、その中の多くの大学等では、障害のある学生の受け入れ・支援に関するノウハウを持っていないことを表していると考えます。

また、JASSOが大学等に対して実施したヒアリング調査では、すでに多くの障害のある学生が在籍している大学等においても、各校が個別に支援策を整備している場合が多く、各大学等間での情報とノウハウの共有化が進んでいない傾向にあることがわかりました。

こうした状況を踏まえ、JASSOでは、全国の大学等を対象とした「障害学生修学支援ネットワーク」の構築に着手し、平成18年10月より、大学等における障害のある学生の修学支援に携わっている教職員の方を対象とした相談事業を開始しました。

「障害学生修学支援ネットワーク」とは

「障害学生修学支援ネットワーク」とは、全国の大学や関係機関が障害のある学生の修学支援に関するネットワークを作り、さまざまな連携を図ることで大学等の障害のある学生の修学支援の充実を目指すものです。

まずは、全国を11の地域ブロックに区分し、各地域ブロックにおいて障害のある学生の修学支援について先進的な取り組みを行っている大学等を「拠点校」として位置付けます。また、各拠点校をサポートする機関として、障害者施策・教育に関わる専門的な研究機関などを「協力機関」として位置付けます。平成18年度は宮城教育大学、筑波大学、日本福祉大学、同志社大学、広島大学、福岡教育大学が拠点校として、また、国立特殊教育総合研究所、筑波技術大学が協力機関として活動を開始しました。JASSOは、相談情報の収集、課題の整理、情報共有のしくみづくりなどを通じて、各拠点校、協力機関等の支援を行います。

今後、「障害学生修学支援ネットワーク」では、相談事業をはじめとして、将来的には大学等の教職員に対する研修事業や、単独の大学等だけでは対応が困難な研究を促進する研究促進事業の実施も想定しております。

「障害学生修学支援ネットワーク」イメージ
図 「障害学生修学支援ネットワーク」イメージ拡大図・テキスト

「障害学生修学支援ネットワーク」による相談事業の概要

「障害のある学生の入試の対応ってどうするの?」「どのような設備を整えればいいの?」「障害のある学生への支援をどのようにすればいいかわからないし、聞ける人もいない…」。このように悩んでいる大学等の担当者は多いのではないでしょうか? そのような担当者の不安や疑問に応えるのが「障害学生修学支援ネットワーク」による相談事業です。

「相談事業」は、ネットワーク事業における最初の事業として、平成18年10月より開始しました。これは、障害のある学生の修学支援に関する悩みを持つ大学等に対し、前述の拠点校がその相談に応じるものです(相談ができる方は大学等の教職員としております)。前述のように、障害のある学生が未在籍である大学等が全体の約4割を占めていることから、本相談事業を通じて、そうした大学等の不安に応えることで修学支援の充実が図られ、併せて障害のある学生の受け入れが促進されることを目指しております。

相談を開始して

昨年10月にスタートして約3か月が経過しましたが、全国各地の大学等の教職員の方から拠点校にさまざまな相談が寄せられています。そして、それらの相談を解決へ導くための方法を共に模索し始めています。今後は、寄せられた相談内容を整理し、多くの大学等で参考となる部分については、必要な加工を施したうえでその回答をFAQ(よくある質問とその回答)のような形で情報提供していく予定です。このことにより、より多くの大学等が障害のある学生の修学支援に関心をお持ちいただき、できる限りスムーズに、障害のある学生を受け入れることができるようになればと考えております。

なお、JASSOでは相談事業をスタートさせるにあたって、相談事業を側面から補完する各種ツールを公表しています。「障害学生修学支援メニュー」「はじめて障害学生を受け入れるにあたって」「障害学生修学支援のためのFAQ」の3つです。詳しくは、後述のJASSOのホームページをご覧ください。

今後の課題

今後はより多くの大学・機関にこのネットワーク事業にご参加いただき、相談事業を充実させ、それぞれが相互支援を図り、単独の大学等だけでは対応できない課題を解決していくとともに、そこから見えるニーズに対して、必要な事業化を図り、障害のある学生の修学支援の充実につなげていければと考えております。その結果、障害のある学生が自身の学力に即して、自分の望む地域、教育分野などの大学等に入学できる環境を作り上げていくことにつながればと考えております。また同時に、その先にある就職支援についても視野に入れて、官民各機関とも協力しながら力を注いでいきたいと考えております。

障害のある学生の支援は、現時点ではすべての大学等の共通したテーマにはなり得ていない状況にあるかもしれませんが、今後、障害のある学生に対する支援策が充実・普及し、そのことが学生全体に対する学校全体のサービスの充実や質の向上、さらには教育活動の改善につながっていくことで共通のテーマとなり、大学等におけるユニバーサル・アクセスが実現されればと考えます。また、障害のある学生に対する修学環境の整備が進むことで、障害のある学生の受け入れが促進され、障害者自身の進学意欲の向上につなげることができれば、より望ましいことと考えます。

JASSOが行っている障害学生修学支援の取り組みに関しましては、

http://www.jasso.go.jp/tokubetsu_shien/index.htmlをご覧ください。